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2005年11月 3日 (木)

「GOGOモンスター」 松本大洋 

「GOGOモンスター」 松本大洋 小学館

有名どころで言えば映画にもなった「ピンポン」を描いた作者さんが5年位前に発表した単行本書下ろしの作品。書下ろしということに加えて、400ページ以上の長編で、装丁も良いので値段が高いので(2000円以上します)、読みたいなぁと思いつつも踏みとどまっていたのですが、ついに購入してしまいました。そして、十分過ぎるほどに元がとれる内容の素晴らしさに大満足しました。

舞台はとある小学校。他の人には見えない何かが見える少年と彼のクラスに転校してきた少年との1年間の交流を描きます。少年ユキは、他の人には見えない「もうひとつの世界」を見ることができるがために、他の友人達からは馬鹿にされ、教師からは虚言癖があると思われている。彼の唯一の理解者は、用務員の男で、ユキは男と一緒に花壇の世話をしながら、別の世界のボスである「スーパースター」とそこを脅かそうとする悪の存在について話して聞かせている。一方、転校生マコトは、ユキの不思議な言動に少しずつひかれていき、心を開いていくというお話。これ以上書くと核心に迫っていくので、こんな感じのストーリーです。

どこにでもある普通の教室、学校の廊下、水道などに他の人が感じない「何か」の存在を感じる少年。少年時代にしか感じることのできない「何か」。感受性が強すぎるあまりに、自分のいる世界とは別の世界を作り上げてしまい、その中で必死に本当の自分を探そうとする一人の少年の物語なのだと思います。自分の心の中でつくりあげた虚構の世界と向き合う少年が、そこから自立して、成長していく過程を描いている作品です。転校生マコトとの交流で、外の世界へと飛び出すきっかけをつかみ、そしてまた、主人公は自分が確実にその世界との離別のときをむかえようとしていることを感じながらも、必死になってその世界の存在を確かめようとするんですよね。うんうん、切ないねぇ。そして、ラストもいいねぇ。自分を受け入れてくれる存在がいるってことは素晴らしいことです。

この作品のスゴイところは、主人公が感じる「もうひとつの世界」を直接描かず(描いている部分も一部ありますが)、普通の風景を描写している中で読者にその存在を強く感じさせるという点です。台詞もかなり少なく、一見すると単調な日常描写でしかないような絵の中には確かに「もうひとつの世界」が存在するんです。自分は「別の世界」があったなんて思ったことはないですけど、小学校のときに見ていた景色は明らかに今見ているのとは別の世界だったような気がします。そんなことをふと思い出させて気づかせてくれる1冊です。こういう子供の世界を描く作品って実際の子供が読んだら何が良いのかさっぱり分からないんでしょうね。かつて子供であって、明らかに今とは違う世界に暮らしていた大人のための物語。

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