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2005年11月15日 (火)

「LAST」 石田衣良

「LAST」 石田衣良 講談社文庫

気になっていたもののずっと読んでいなくて、これが初石田作品です。最近はすっかりテレビのコメンテイターなどでマスコミの露出度が上がってる作家さんですよね。この方の仕事場を訪問するというテレビを見たことがあって、作家の部屋とは思えないくらいにスタイリッシュでオシャレな部屋だったのがとても印象に残ってます。ご本人も割りとお洒落さんですよね。

この作品は、タイトルにあるように、人生追い込まれた人々の最後のあがきを描いた短編集です。借金の返済に困って自殺or家族を売るの選択を迫られるとか、ホームレスデビューするとか、テレクラでの恐怖体験とか、AVカメラマンの最後の仕事とか割と裏の世界を中心に描かれてる作品集。

扱ってる題材だけを見ると、重松清を連想させずにはいられない短編集なのですが、重松作品とはかなりテイストが違っているように思いました。重松氏は一人称語りのときが多くて割と主観的に物語を進めることが多いのに対して、この本は客観的な描写が目立ったように思います。結果、この作品はかなり冷めたクールな描写が多いように感じました。割とラストがハッピーエンドでない話が多いので、それと併せて、とても冷めた感覚の小説だなと。そういう中にも、さりげない描写の中に力強さや温かさを感じさせるところがあるので、安心感を持って読むことができたのも事実ですが。

あと、重松作品にある、目を背けたいほどのリアルな辛さはこの作品にはなかったですね。重松氏の辛さは、主観的に描くことで、主人公の感情がよりダイレクトにこちらに伝わることで生まれているのかもしれませんね。一方で、この作品の石田氏の書きかたは、とても辛い状況を描いている一方で、そのクールな切り口のおかげでそこまで辛さを感じることがないのかもしれません。

どうやら、これは普段の石田作品とは少し毛色が違うもののようですね。一番読みたかった「4TEEN」が今月末に文庫化するので、石田作品が好きかどうかという評価は他の作品を読んでからまたじっくり考えてみたいと思います。自分は重松作品は文庫化されてるフィクションものはほとんど読んでいるくらいに重松清ファンで、徹底してリアルに描くことで、読み手の心に怖いくらいの緊張感を与える一方で、決して突き放すことはなく、温かく登場人物に接しているというのが重松氏のイメージ。今回の「LAST」だけだと、石田氏のイメージはとてもクールな作家ということになってしまうのですが、果たしてどうなんだろう。この2人、読み比べてみると面白いかもね。

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