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2005年11月18日 (金)

「青空感傷ツアー」 柴崎友香

「青空感傷ツアー」 柴崎友香 河出文庫

映画にもなった「きょうのできごと」の作者さんの作品です。「きょうの~」は映画も原作もとても好きな作品なので、こちらにもかなり期待していました。

会社を辞めた26歳の女性が、学生時代の男友達がかつて付き合っていた年下の女の子と再会し、ひょんなことから2人だけで旅に出るというお話。仕事をなくした超メンクイで僻み屋な主人公と、恋人に二股をかけられた誰が見ても美人&スタイルの良いワガママ娘のコンビで、トルコ~高知~石垣と旅をしていき、人生を見つめなおしていくというような内容です。

「きょうの~」は、極めて日常的な生活の1コマを取り上げて、何も起きない「静」の日常を淡々と描写する中にドラマを感じさせるような作品でしたが、こちらは、移動が多いこともあり、全体にかなり動的なイメージの作品です。それでいて、各地での主人公達の日常(というか、関西弁での会話のやりとり)を丁寧に描くので、前作の雰囲気もそのままという感じでした。主人公よりも、サブキャラである、ワガママ美人娘のキャラが際立っていて、そのキャラクターのおかげで、ぐんぐんと物語が引っ張られていきます。一緒にいたら疲れそうだけど、憎むことのできないキャラクターに仕上がっているように思いました。あちこち舞台が移っていって、「え?」と思うような唐突な流れも多少あるんですけど、映画とかにしたら面白いんじゃないかと思う作品です。

「きょうの~」でも感じましたが、この作者さんは、臨場感を楽しむことのできる作家さんだと思います。日常の中の自然で何気ない会話の積み重ねの間に、冴え渡る情景描写をキラリと織り込んで、一見単調な作品になりそうなところを、しっかりと読ませてしまいます。そういう点で、「この人の閾」の保坂和志氏がイチオシの作家にしているのもよく分かります。解説で長嶋有氏も書いていますが、このようないわゆる「何も起きない」小説っていうのは、僕はかなりありだと思っています。小説だから何か大きな事件がなければいけないというわけではないし、むしろ、たとえそのときは気づかなくても小さな日常のわずかな会話の中に人生を変えるようなきっかけがあることもしばしばですよね。

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