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2005年11月 5日 (土)

「塵よりよみがえり」 レイ・ブラッドベリ 

「塵よりよみがえり」 レイ・ブラッドベリ 河出文庫

ブラッドベリファンにはすっかりおなじみの、イリノイ州にある屋敷を舞台にした「一族もの」と呼ばれる一連のシリーズがあります。古くは1945年に構想を始めたというこのシリーズ、ブラッドベリは様々な短編集の中に、このお屋敷を舞台にしてそこに暮らす幽霊や魔物たちを描く短編を発表してきました。この本はその集大成で、50年の間に書き溜めた「一族もの」の作品群に書下ろしの作品を大量に付け加えて、1冊の本としてまとめたものです。

イリノイにあるとある屋敷にはミイラの老婆や魔女などが暮らしている。その屋敷には孤児だった人間の少年が一人だけ魔物たちと一緒に暮らしていて、彼が見聞きしたその屋敷に暮らす魔物たちの一族の物語を連作短編の形で描く作品です。ハロウィンの日に世界中から魔物たちが屋敷に集まるという「集会」というエピソードが中盤あたりに収録されているのですが、この作品が発表されたのが1946年でシリーズ中で一番古いもの。その後も、いくつかの作品が色々な短編集に収録されてて、自分もいくつか読んだことがあるものの、それらは完全に独立した作品でした。その独立した短編の隙間を埋めるように新しい短編を挿入し、さらに、「集会」に至るまでの物語全体の背景設定もしっかりと描くことで、全体が1つの長編になったわけです。それはもう「お見事!」としか言いようのない仕上がり具合。てうか、1946年から現在までずっと現役の作家であり続けて、50年以上の歳月をかけて一つの作品を完成させたという事実からして脱帽です。

人間の少年が魔物たちと交流してるという世界観が昨日の「GOGOモンスター」を彷彿とさせます。こちらは本当に一緒に暮らしてるんですけどね。さらに、魔物たちの雰囲気が「コープス~」とか「ナイトメア~」とかのバートン風の世界観ともかなりよくマッチしてます。映画化してくれないかな~。とても詩的で、視覚的な要素が強い作品でした。

ものすごく面白かったというわけでもないんですけど、なかなか楽しめる1冊でした。ブラッドベリはとにかく「火星年代記」が大好きでして、原書でも数回読んでるし、邦訳に至ってはかなりの回数読み返してる1冊です。内容も大好きなのですが、この本は邦訳のタイトルのセンスがなんともいえず好きなんですよ。「夜の邂逅」とか「優しく雨ぞ降りしきる」とか「百万年ピクニック」とか(まぁ、英語の原題がそうなんですけど・・・)。あ~、こんなこと書いてたらまた読みたくなってきたよ・・・。

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