「つむじ風食堂の夜」 吉田篤弘
「つむじ風食堂の夜」 吉田篤弘 ちくま文庫
クラフト・エヴィング商會の本で文章を担当している吉田篤弘氏の書いた長編小説が文庫で登場しました。クラフト~の魅力は、その素晴らしい発想による数々の創造物であることは確かなのですが、その文章の上手さにもいつも感心しているだけに、吉田氏の書く小説を読むのをとても楽しみにしていました。まぁ、「THINK」とか「クラウドコレクター」とかもある意味で彼の長編小説ということになるんだろうけど。
期待通りにキラキラキラキラと輝く素晴らしい作品でした☆気が向いたときにさらっと読み返して、その世界に浸りたくなるような1冊です。ハードカバーで買っても良かったかもしれないと思わせるくらいに僕のツボを直撃です。
「月舟町」という町を舞台に、「人工降雨機」の研究をしている主人公と、町にある通称「つむじ風食堂」に集う人々との交流を描く作品。短い複数の章でできていて、最初のほうは連作短編のような感じで互いに関係の無いエピソードが紹介されていくのですが、最後に進むにつれて、それらのエピソードを全て回収して、とても上手くまとめている作品です。
やはりこの作者さんは、とてもセンスが良いですね。手品師の父とか、コーヒー屋さんとか、読書を愛する果物屋の青年とか、あまりにもステキな登場人物たちが多数登場して、ひとつひとつのエピソードもこれでもかというくらいに、ほのぼのとしてしているのが良いですね。
そして、一見するとどこにでもありそうな町のお話なのに、よくよく見てみると、やはり、どこにも存在しないような場所やできごとばかり。この近いようで遠い不思議な距離感がたまりません。
二重空間移動装置、僕は買いますよ!たとえその正体が○○○だったとしても、夢があるじゃないですかっ!
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コメント
こんばんは。
先日、オススメいただいたので、吉田篤弘さんの作品を読んでみました。
風変わりな登場人物たちがとても魅力的ですが、
別々のお話の並列なのかと思ったら、
途中から、エピソードを回収して纏まってゆくので、いい意味でビックリ!
押し付けがましさのない、適度な懐かしい甘みと輝き、
だから飽きることなく、いつまでも大好きに違いない…ということで、
こんぺいとうみたいな作品だと思いました。
教えていただいたことに感謝、感謝です。。
また1冊、買って来たので、読んだらそちらにもお邪魔しなおしますね。
投稿: 悠雅 | 2008年8月 6日 (水) 20時41分
>悠雅さん
こちらで勧めた本を読んでいただいて
なんだかとても嬉しいです。
こちらこそ、どうもありがとうございます。
この方の書く文章の
どこか乾いたようなそれでいて温かい感じが
とても気に入っています。
この作品もたまに読み返して
作品の世界にひたりたくなるような魅力がありますよね。
タイトルからしてワクワクさせてくれますし。
投稿: ANDRE | 2008年8月 7日 (木) 15時29分