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2005年12月

2005年12月31日 (土)

2005年色々大賞(やや修正)

年末特別企画2005年色々大賞。

順位つけてそれらしくしてみましたが実際、芸術作品に順位などつけられないので目安程度で。

各作品詳細はレビューを参考にしてください。

2005年心に残った映画(今年公開)

1「ヒトラー 最期の12日間」 
色々と深く考えさせられた映画でした。インパクトは最大だったので、1位に。

2「ネバー・ランド」  
演出やカメラなどとにかく丁寧で美しい作品でした。ジョニー・デップはやっぱり上手いです。

3「コープス・ブライド」  
「ナイトメア」ファンとしては外せない1本でした。ちなみに、昨年も3位がティム・バートンですねぇ。

4「オペラ座の怪人」  
ミュージカル映画ファンなので。ただしこの映画は映画館で見ないと良さ半減以下かも。

5「コーラス」  
「いまを生きる」も好きだし。合唱だし。

次点1「オペレッタ狸御殿」  
想像を絶するミュージカル映画でした。由紀さおりのラップが頭から離れません。

次点2「バタフライ・エフェクト」  
あまりに目まぐるしく変化していくストーリーにただただ圧倒。ありそうでない隠れた名(迷)作では。

他には今月見た「歓びを歌にのせて」や「SAYURI」、あとは「ベルリン僕らの革命」も良かったです。アカデミー賞作品賞の「ミリオンダラーベイビー」は観終わった後にあまりに落ち込んでしまう作品で、個人的には苦手。来年は「レント」、「プロデューサーズ」と2大ミュージカル大作が公開になるのが今から楽しみで仕方ないです。

2005年心に残った映画(前年以前公開)

1「ビヨンド・サイレンス」 
昨年のこの枠の1位は同監督の「点子ちゃんとアントン」でしたねー。言うことなしの名作。

2「深呼吸の必要」  
環境DVDみたいにかけっぱなしにしてても良い位に気持ちの良い映画。

3「サンセット大通り」  
ラストの演技にただただ圧倒されました。素晴らしい女優さんです。

4「エレファント」 
切なく哀しいものはあまりに美しい。この美しさはこれまで見た映画の中でも屈指。

5「ウォルター少年と夏の休日」  
予想していたのと違った映画だったけれど、良い方向に裏切られました。「ビッグフィッシュ」好きな人は是非!

次点1「モダンミリー」  
ジュリ・アンドリュースの隠れた名作ですな。

次点2「イルマーレ」  
あのラストがなければもっともっと順位は高かっただろうね。

本当に相変わらず「単館公開系」が好きな自分。今年は古い作品もいくつか。年末ギリギリに観た「ビヨンド・サイレンス」を1位にしましたが、「深呼吸の必要」はDVDで5回くらい観てしまった作品で、かなり自分のツボでした。ところで、映画のランキング、どちらもドイツ映画が1位ですね。最近、ドイツ映画が結構好きかも。

2005年心に残ったドラマ

1「タイガー&ドラゴン」 
正月のSPドラマのときから抜群に面白かったです☆大人計画は良い。

2「女王の教室」 
今日も再放送見てしまいましたよ・・・。斬新な学園ドラマ。

3「87%」 
力強いドラマでした。出てる役者さんたちがひたすら上手い。

4「電車男」 
作り方が上手いなぁといつも感心してました。

5「該当なし」 
今年は心に残る作品があまりなかったように思います。「金八」「危険なアネキ」「恋の時間」なども候補だったのですが、厳しくしてみました。

現在BSで放送中の「デスパレートな妻たち」は相当はまってます。あと、今年は同じく海外ドラマの「フレイジャー」にもはまりました。

2005年心に残った展覧会

「北斎展」
あれだけの作品数が揃ってるのはもう圧巻。そして肉筆画の美しさ!

2005年心に残った小説(海外) 今年の出版かどうかは問いません。

1「Oracle Night」 P. Auster 
「book of illusion」に次いで近年のオースター作品の中ではずば抜けて楽しみました。複雑な入れ子構造や脚注の使用など、色々と面白い作品。

2「ドリアングレイの肖像」 O・ワイルド 
美しさとは、芸術とは何か。「名作」は名作でした。

3「旅の終わりの音楽」 E・ハンセン
タイタニック号の楽団員たちを描いた傑作フィクション

4「体の贈り物」 R・ブラウン 
死に直面した者達を温かく見守る暖かく優しい連作短編集。

5「パイロットの妻」 A・シュリーブ 
夫の操縦する飛行機が事故に。そのときは妻は?丁寧な心理描写が印象的。

新潮文庫強しという結果ですね。原書で読んだオースター以外の4冊は全て新潮文庫。そしてそのうち2冊はもとが新潮クレストです。このシリーズは白水Uブックスと並んで良作が多い。今年は他にカルヴィーノの「不在の騎士」良かったです。

2005年心に残った小説(日本) 今年の出版かどうかは問いません。

1「真昼のプリニウス」 池澤夏樹 
池澤作品はやはり良い。全作品制覇したい。

2「つむじ風食堂の夜」吉田篤弘 
本当にステキな連作短編。クラフト・エヴィング商会最高です☆

3「この人の閾」 保坂和志 
もう本当にタイトルのままの作品です。むむむと唸りました。

4「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎 
エッシャーのだまし絵小説版

5「4TEEN」 石田衣良
期待通りに面白かったです。

次点「流星ワゴン」 重松清 
客観的に見て重松の代表作と呼んでも良い作品ではないかと。

次点「博士の愛した数式」 小川洋子
文庫化が早くて嬉しかったです☆

次点「愛別猫雑記」 笙野頼子
 抱腹絶倒猫小説。

上記8冊中、4冊が芥川賞作家、2冊が直木賞作家ですね。笙野頼子、伊坂幸太郎は文庫化されたら真っ先に読みたい作家さんです。短編「この人の閾」は本当にオススメ。

2005年心に残った漫画

1「不思議な少年」4巻 山下和美 
とにかく読め!特にこの巻の1話目。

2「団地ともお」 ~6巻 小田扉
今年最大の収穫は小田扉と出会って、手に入る作品を制覇できたこと。どれも最高!

3「神戸在住」7巻 木村紺 
軽い気持ちでは読み返せない巻です。3巻と合わせて、この作品の持つ強さを改めて実感。

4「のらみみ」~3巻&「麦わらドリル」原一雄 
藤子Fの正統な後継者ですね。藤子好きとしては外せません。

5「Death Note」~9巻 大場つぐみ 小畑健
つまらなくなった?と思わせてまた盛り上げるんだから・・・。

次点「神のちからっ子新聞」 さくらももこ 
久々にさくらももこで大笑いさせてもらいました。第2巻も期待してます。

次点「ソラニン」 1巻 浅野いにお 
「素晴らしき世界」の素晴らしさをそのまま引き継いだ長編。雰囲気が良い。

次点「No.吾」 全4巻 松本大洋 
1コマ1コマにこめられた魂が濃い作品です。

ことしも色々読みましたねぇ。「PLUTO」もよかったけれど、やはり今後の展開を見ないと分からないから今年も番外。あとは、文庫で読んだ「遥かなる甲子園」で号泣しました。「鉄子の旅」もよくできた作品です。あと、「GOGOモンスター」は傑作だと思いました年末に出た「ひみつの箱」もオススメ。

2005年心に残ったシングルJポップ

1「キミがいる」 ケミストリー 
ドラマ効果かな。久々にケミで良いと思った。

2「全力少年」 スキマスイッチ 
気分が爽快になれるところが良い。

3「カゼノトオリミチ」 堀田さゆり 
「みんなのうた」でやってました。心に染み入る名曲です。

今年もこれっていうシングルが無かったように思います。

2005年心に残ったアルバムJポップ

1「Home Ground」 掘込高樹 
「キリンジ」兄のソロデビューは期待通りでした。

2「Def Tech」 Def Tech 
これ、僕、発売日には既にチェックしてたんですからね!!売れると読んだものが本当に売れたから嬉しかった。

3「ふれるときこえ」 トルネード竜巻 
メジャーデビュー後、ちょっと期待はずれが続いたのだけれど、今回は納得!!

4「A pieceful time MCU」 MCU 
なんとなく好き。自分は、BOOMとキック~の組み合わせに弱いらしい。

5「該当なし」 
上記のアルバムもギリギリです・・・。

2005年心に残ったアルバム洋楽

1 "The Invitation" Thirteen Senses  
ダントツで1位です。何度聞いたか分かりません。ピアノ弾きとしてはね。これからもずっと聞き続けるでしょう。

2 "Daniel Powter" Daniel Powter  
とにかく聞いていて気持ちが良い。

3 "Push barman to open old wounds" Bell and Sebastian
シングルをアルバムに入れない彼らのシングル集。ベストはあまり上位には入れたくなかったんだけどね。

4 "Composure" Waking Ashland
しつこいですが、自分はピアノ好きなのです。ハモリも良かった。

5 "Lifehouse" Lifehouse
3作目にしてセルフタイトル。そしてそれにふさわしい内容でした。

6"Songs for silver man" Ben Folds
とにかくピアノが良い。ひたすらピアノが良い。こんなロックアルバムはそんなにないですよー。

次点 "Analogue" a~ha  
「take on me」だけだと思っている人は損してますよ。当時とはかなり路線変更して僕好みになってます。

次点 "Back to Bedlam" James Blunt 
日本盤はあまり売れてませんが、UKでは大ヒットでしたね。

次点 "The story goes" Crag David  
歌モノが中心の今作は、ダンス系が好きな人には物足りないかもしれないけど僕は好きでした。

次点 "Mr. A-Z" Jason Mraz  
1stやライブ盤と比べるとどうしても見劣りしますが、好きなアーティストさんです。

次点 "Dynamite" Jamiroquai  
BGMとしてかけてて心地よい作品です。

次点 "In Motion" copeland
なんとも気前の良い国内盤がオススメ

2005年心に残った舞台

「プロデューサーズ」 
とにかく楽しみました。ブロードウェー来日公演は期待通りの面白さ。映画版にも期待。

RSC「夏の夜の夢」、四季「キャッツ」もみました。どれもこれも生舞台は甲乙つけがたいくらいに良いです。

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映画「ナショナル・トレジャー」 

「ナショナル・トレジャー」 2004年 アメリカ

ディズニー製作で続編も決定している全米ではかなりのヒットになったニコラス・ケイジ主演の宝探しアドベンチャー。

主人公はアメリカ独立際にフリーメイソンの会員たちによって隠されたというテンプル騎士団の財宝を捜し求めている男。ついに宝のありかのヒントとなるパイプを南極の氷の下の沈没船で発見するも、パトロンの富豪の裏切りにあい、命からがら脱出する。独立宣言書の裏側に財宝のありかが記されているというヒントをもとに、主人公達と、富豪の男の財宝探しバトルが始まるという物語。

とても教育的な宝探し映画で、アメリカ独立に関わる数々の史跡をめぐりながら、様々な歴史上の人物の名前を登場させて、宝につながるヒントを集めていくという構成になっていました。宝探しというと「インディ・ジョーンズ」シリーズという頂点に立つ傑作があるので、何かしら、新たな魅力をださなければいけないのでしょうが、この映画はあまりにも地味なのです。ハラハラドキドキさせるような展開がほとんどないんですね。舞台が、教会だとか博物館だとかで都市部にある史跡だというのも、派手なアクションができない原因なのかもしれません。そして最後の最後まで教育的な展開なのです。ニコラス・ケイジも割と地味だし。宝探し映画といしては、ちょっとした異色作ですけど、面白いかどうか問われれば、YESとは言いがたいですね。愛国心あるアメリカ人ならもっと楽しめるのかもしれません。

宝探し映画ってたら、やっぱり、「インディ」とか「ロマシング・ストーン」、「ナイルの宝石」なんかが好きだなぁと改めて感じさせてくれる映画。

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2005年12月30日 (金)

映画「ビヨンド・サイレンス」

「ビヨンド・サイレンス」 1996年 ドイツ

「点子ちゃんとアントン」の監督の出世作です。以前からずっと見たくて、テレビでやったのをビデオに録画したものの、なかなか機会がなくて何年かそのままになっていたのをようやく観ました。

聾の両親を持つ少女が主人公がクラリネット奏者を目指すという物語。彼女と両親との関係を、丁寧に、優しく、そして、溢れんばかりの素晴らしい「音」とともに描く作品です。この映画の良いところは、両親が聾であるということが、直接的にテーマになっていることではなくて、どこの家族でも直面するような問題を描いているところです。主人公の父親は、少年時代から「音楽」を理解できないことに対するトラウマがあり、主人公の夢に対して積極的に賛成できずにいるのだけれど、「子供が親の希望する進路を選ばない」なんてのは、特に特別な問題ではないですよね。この映画は音楽家を志す主人公とその家族を描く、青春映画なのです。

この作品は、両親が聾ということで、「音」をとても効果的に使用しているように思いました。日常の中の些細な音を、とても印象的にキラリと挿入したり、無音の場面で孤独感から暖かさまで表現したり、そして、何より、主人公が志す音楽の世界を象徴するクラリネットを用いた美しいBGMの数々が使われており、冒頭から最後まで、これほどに「音」の世界を印象的に描く作品は少ないのではないでしょうか。

「点子ちゃんとアントン」と同じように、全編を通して、とても暖かな作品で、いつまでもその世界に浸っていたいと感じさせるような素晴らしい作品でした。

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映画「ミリオンダラー・ベイビー」

「ミリオンダラーベイビー」 2004年 アメリカ

今年のアカデミー賞で作品賞を受賞した作品です。主演女優、助演男優、監督も受賞し、最も評価が良かった作品ということでしょうか。うーん、そうかな・・・。

ボクシングの老トレーナー、フランクのもとを31歳のボクサー志願の女性が訪ねてくる。貧しく恵まれない環境で育った彼女はウェイトレスをしながら独学でボクシングをしており、当初は女性お断りと拒んでいたフランクも彼女の熱意に負けて弟子入りを許可する。彼の指導のもとでめきめきとその実力を伸ばした彼女はやがてタイトル戦に挑むのだが・・・、そして、フランクが彼女に与えたリングネーム「モ・クシュラ」の意味とは。彼らを見守るボクシングジムの雑用係をするかつてのフランクの相棒を語り手にして描かれる、静かで熱い大人の物語。

この映画、見る前に持っていたイメージと全く違う内容だったので、後半の展開にはかなり驚かされました。僕が思ってた内容は、女性ボクサーとそのトレーナーのサクセスストーリーみたいなもので、女性版ロッキーのようなものだったのだけれど、実際の作品の本当のテーマは、ボクシングのサクセス・ストーリーなどではなく、後半に現われる急展開以降にありました。とても深く考えさせられるテーマを扱っていて、正解などどこにもないような問題を我々に投げかけてくるような作品でした。最終的に作品でえらばれた答えが正しいのかどうかは誰にも判断できないものですが、やっぱりあれはなぁ・・・と思ってしまいます。自分の価値観をとりあえず横において、映画的にあちらの答えの方が良いかどうかと問われても、自分としてはNOなのかなぁ・・・、多分。そのような状況に置かれたらまた違うのかもしれませんが。人生の最頂点がいつかなんて誰にも分からないし、それを判断するのはやはり一番最後の時なのではないでしょうか。

基本的に、ずーーーーーーっとシリアスな映画で、ちょっと場を和ますような息抜き的な場面もほとんどなく展開する映画で、ラストも決して心地よいものではないので、見終わった後はどよ~んとした雰囲気になってしまいました。主演のイーストウッド、モーガン・フリーマン、ヒラリー・スワンクの絶妙な演技は本当にレベルが高くて、ひきこまれてしまいました。サンドバッグを叩く音、ちょっとした手の動き、視線、画面に映るときのオーラだけでひしひしと様々な感情が伝わってくる作品。しかし、あまりにも落ち込んでしまう作品。たとえ、これが最高級のラブストーリーなのだとしても、やはり自分はこういうのは苦手かも。

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2005年12月29日 (木)

「インストール」 綿矢りさ

「インストール」 綿矢りさ 河出文庫

「蹴りたい背中」で芥川賞を受賞して話題になった綿矢りさのデビュー作。

登校拒否になった高校生の少女が主人公。親に内緒で学校を休み、昼間の時間をもてあそんでいた彼女は、ふとしたきっかけで知り合った小学生の少年に誘われて、彼と一緒にとあるバイトを始める。それは、風俗嬢になりすまして、エロチャットを行うというもので・・・。というお話。

最初の数ページがやたらと読みづらくて、いきなり挫折しそうになったものの、途中からは文章にも慣れたのか、ストーリーの軽さもあって、サラサラと読み終えました。最初に感じた読みづらさですが、それは、主人公の独白という形式の物語であるにもかかわらず、主人公が用いる語彙が、作品から受ける主人公のイメージと弱冠離れているように感じたのも理由の1つ。この少女にしては、用いてる語彙があまりに綿矢さん的とでもいいましょうか。きっとこの子はもっと簡単な語彙で独白するんじゃないかというのが僕のイメージでした。物語そのものは、特に印象に残るものでもなくて、「蹴りたい~」のほうが個人的には楽しめましたが、小学生の少年のキャラが印象に残りました。この作品は映画化されていますが、この少年は神木くんのためにあるような役ですよね。

この本には書下ろしの新作が同時収録されていて、そちらは大学生が主人公の物語。どうやら彼女は、自分が置かれている状況をベースにした作品を書く人のようですね。読んで思ったのだけれど、インストール⇒蹴りたい⇒今回の新作と進むにつれて文章が上手くなっているように思います。読ませ方というか。そう思うと、やはり「蹴りたい」の芥川賞は少し早かったのかもしれません。ちなみみに、物語としても今回の新作が一番好き。

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2005年12月27日 (火)

映画「SAYURI」

「SAYURI」 2005年 アメリカ

原作の小説の邦題が「さゆり」だったので、恐らく映画のほうもそのまま邦題を「SAYURI」にしたのだと思いますが、原題の直訳は「ある芸者の回顧録」だということを知っている人は少ないのでは?原作本が数年前に割りと流行ってて、洋書売り場でも頻繁に見かけた作品を、スピルバーグが映画化権を買い取り、途中から監督を「シカゴ」のロブ・マーシャルに交代して映画化した作品です。スピルバーグ製作×ロブ・マーシャル監督なんて夢のような組み合わせですが、出演している女優人もアジアン・ビューティー大集合という感じでした。

幼い頃に京都の置き屋にひきとられた少女、千代。イジワルな置屋の女将や先輩芸者のイジメ(?)に耐える日々を送っていた彼女は、あるときステキな男性と出会い、彼と再び会うことができるようにと、芸者の道を志す。そんな折、都一の芸者が、置屋の女将と賭けをし、彼女を一人前の芸者に育て上げることになる。こうして、千代は「さゆり」という芸者として世に出ることになるが・・・。というお話。かなりテンポが良くて、一気に見せる2時間ちょっとでした。時代設定は戦前~戦中~戦後のようですが、きっとそれは「JAPAN」のであって日本のではないです。

時代考証も台詞が英語なのも、中国人が主役なのも、この映画が描くのが「日本」ではなくて「JAPAN」であることを踏まえれば全く(?)気にかからない作品で、観る前はかなり不安もあったのですが、意外とあっという間の2時間ちょっとでした。そりゃ、何か言おうとすれば、「え、いきなり伏見稲荷?どれだけ移動したの?」とか、「寺の中が呉服屋?」とか、「着物でこの歩き方はあり?」とか、「豆葉とかカボチャ(字幕はおカボだったけど、英語は完全に「パンプキン」)とかって名前の芸者なんているのか?」とか、「ウメ味とサクラ味のカキ氷なんてあるのか?」とかとかとかとかそりゃもう数え切れないくらいに不思議な場面は沢山あるのですが、ここで描かれているのはあくまで西洋人によるファンタジーの世界としての「神秘の国JAPAN」であり、その代表的存在としての「GEISHA」なのです。キャスティングもオール日本人キャストではないことに不満をあげる人もいるだろうけれど、オールアメリカ人キャストのヨーロッパが舞台の映画なんてのも星の数ほどありますからね。

そう割り切ってしまえば、メインの芸者達がチャン・ツィイー、コン・リー、ミシェル・ヨーと日本人ではないキャストで占められているのも許せますし、音楽が妙に中華な感じ(ヨーヨーマのチェロだし)なのもありではないのかと思います。ストーリーは、「大奥」置き屋版みたいなノリのドロドロ物語なのですが、個人的にもの足りなかったのは、「情」という概念がほとんど感じられなかった点と、「静」の演出がほとんどなかった点。「JAPAN」を描いているにしても、「姉妹」の契りを結んだ妹に対する姉が割とあっさりしているところ(特に戦争が始まってから)や、親友の裏切り、育ての親の完全な冷徹さは「日本」ではありえない描かれ方ではないでしょうか。「男女」の間の情はしっかりと描いているのに、「女の世界」=「女のバトル」になっていたように思いました。日本の作品だったら、「お母さん」の役どころは、普段はクールにしているけれど、実はやさしく見守っていたんだよというような設定があったりすると思うのですが、そういうものが皆無で男女の間以外はかなりドライな人間関係だったのが印象的でした。やっぱりアメリカ映画ですね。

もう1点気になったのは「静」の演出がほとんど無い点です。日本のアニメが海外で上映される際に、「無音」の演出がされているシーンにもBGMを付け加えてしまうという話をきいたことがあるのですが、この映画も、常になんらかの音が場面を盛り上げていました。映像も、明暗を上手く使うのは、ロブ・マーシャルが監督した「シカゴ」やミュージカル「キャバレー」などと同じでとても上手いのですが、あくまで「豪華絢爛」な世界の演出に重点が置かれていたように感じました。「芸者」を描くのであれば、もっともっと「静」の部分があったほうが生きてくるのではないかと。芸者の美しさも、割と「動」の部分に求めていたような印象があったけれど、黙っていても何かを感じるオーラのようなものをもっと感じさせて欲しかったですね。お披露目の舞の場面なんかは完全に「シカゴ」だったのだけれど、芸者ってあんな派手な踊りするんですかねぇ。あ、これは「GESIHA」か・・・。

と、気になった部分を書いておいてなんですが、この映画、基本的には割りと面白いです。チャン・ツイィーは「オペレッタ狸御殿」の可愛らしいお姫様の役のほうが似合っていたようにも感じるのだけれど、その存在感は抜群!あと、桃井かおりが相当良いです。「千と千尋」チックな役どころではあったけれど、とても印象に残る演技でした。主人公の少女時代の子は英語の発音がお世辞にも上手いとはいえなくて、ちょっと苦笑いな感じだったのだけれど、なかなかの熱演。あと、いきなり出演の舞の海にもびっくりしました。ハリウッド作品だし、キャスティングはかなり成功だったのではないかと思います。そうなってくると、やっぱり感じるのは、頑張れ!日本人女優!ということですかねぇ。この役だったら蒼井優とか良さそうだけどねぇ。

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2005年12月26日 (月)

「パイロットの妻」 アニータ・シュリーヴ

「パイロットの妻」 アニータ・シュリーヴ 新潮文庫

良作が多いことで知られている新潮クレストのシリーズから文庫化した作品。アメリカの女流作家さんの作品です。「事故を起こした航空機のパイロットの妻」が直面する様々な感情を美しく描いた佳作です。

主人公は旅客機パイロットの妻。ある日、彼女の元に夫の操縦していた飛行機が墜落したという知らせが来るところから物語は始まります。突然の知らせにショックを受ける主人公と思春期の娘、そこにマスコミから飛び込んでくる「事故はパイロットが自殺を図ったのではないか」という噂。あまりに衝撃的な事件に対する、主人公の悲しみや怒り、驚きといった様々な感情が交錯する中で、次第に事故の真相が明らかになっていく・・・。

最初の3分の2くらいをかけて、事故を起こしたパイロットの妻が経験するであろう様々な感情や出来事を丁寧に描き、グイグイと読者をひきつける、静かながらとても力強い作品でした。で、最後のほうは割と急展開で次々と衝撃の事実が発覚していくのですが、この部分は割りと「え?」と思っているうちにあれよあれよと話が展開してしまいあっさりと終わってしまったような印象です。事件の真相まで含めてしまうと、社会派サスペンスのような雰囲気の作品になってしまうのですが、この作品の面白いのはなんといっても前半部分で、この部分に関して言えば、本当に素晴らしい小説でした。

この作品はフィクションですが、列車事故や航空機の事故が起こった際に、真っ先に問題としてあげられるのが、運転手は何をしていたのかということですよね。真相も定かになっていないのに、あれやこれやとマスコミが騒ぎ立てるのはもはや日常茶飯事の光景ですが、彼らにも家族があり、その家族が果たしてどのような気持ちでこういう報道を聞くのかという点はあまり触れられてこなかったように感じます。思えば、事故の再現映像のCGアニメですら、被害者の遺族としては、あまりにも強烈すぎる映像なわけで、マスコミの報道のあり方なんかも考えさせられるような内容でした。主人公達家族に本当の幸せが戻ることはないだろうけれど、それを少しずつでも克服していくことができればと祈るばかり。まぁ、このラストだと、相当きつそうですが・・・。

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2005年12月24日 (土)

TV映画「クリスマスキャロル」

「クリスマスキャロル」 2004年 アメリカ(TV)

94年以降毎年ブロードウェーで上演されているミュージカルを昨年、TVドラマ化した作品。スクルージを演じるのは僕がはまっているアメリカのドラマ「Frasier」で主役をしているケルーシー・グラマー。そして、ミュージカルの作曲をしているのが、ミュージカル「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」やディズニーの「リトル・マーメイド」、「美女と野獣」、「アラジン」などでお馴染みのアラン・メンケン。(←アラン・メンケンの曲目当てで視聴)

ストーリーはかの有名なディケンズのあれです。大富豪のケチな金貸し老人のスクルージがクリスマスの夜に幽霊達によって自分の過去・現在・未来を見せられて改心するという物語。面白いのは、幽霊達を演じるのが、街の場面でスクルージに施しを求めて声をかける貧しい人々が2役でやっているというところでしょうか。あと、ミュージカル作品なので、全編ひたすら歌です。台詞のシーンよりも歌う場面のほうがずっと多い作品で、90分ほどの短い作品ではありますが、コンパクトな中にひたすら音楽がつめこまれていました。

アラン・メンケンは、ディズニー作品を見てみると、92年の「アラジン」のあと、エルトン・ジョンが曲をでがけた「ライオン・キング」をはさんで、95年の「ポカホンタス」でふたたび音楽を担当していますが、このドラマの基になったミュージカルは、94年上演なので、ちょうど、「アラジン」と「ポカホンタス」の間に作られたことになります。この頃、メンケンは「リトル・マーメイド」から「ポカホンタス」まで4作連続でアカデミー賞を受賞して、まさにノリにのっていた時期でして、このミュージカルの音楽が悪いはずがありません。掛け合いの多いオープニングの街の人々の歌は「美女と野獣」のオープニングを彷彿とさせますし、神に祈る曲は「ノートルダムの鐘」を彷彿とさせる構成ですし、アラン・メンケン節があちらこちらに散りばめられていて、なかなか嬉しい作品でした。ただ、音楽シーンの演出が割りと平坦だったイメージがあり、曲は確かに良いのだけれど、弱冠、退屈な仕上がりだったのも確かですが・・・。

TVドラマとは思えないような、かなり凝ったCGや、セット、演出なんですけど、ミュージカル作品としては、少し物足りない感じがあったのは事実。同じTVドラマのミュージカルだったら、ディズニーが作った「アニー」や「シンデレラ」のTV版のほうがずっと完成度が高い気がしました。まぁ、この2作品は監督や製作が「シカゴ」のロブ・マーシャルなので完成度が高いのは当たり前なのですが。

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2005年12月23日 (金)

「博士の愛した数式」 小川洋子

「博士の愛した数式」 小川洋子 新潮文庫

単行本が出たときからずっと気になっていて、そうこうしているうちに、本屋大賞なるものを受賞してしまい、映画化まで決定してしまった作品。文庫になるの早かったなぁ。

事故の後遺症で80分しか記憶が持続しなくなってしまった老数学者の家に家政婦としてやってきた女性が主人公。彼女とその息子と風変わりな数学者との交流を、ほのぼのと描いた佳作です。

小川作品はこれで4冊目。過去に読んだものの印象は、「テーマはかなりピンポイントでツボなのに、どうも苦手」というもの。彼女の作品は設定が特殊なものが多く、それがとても面白いのですが、その面白い設定を理性というよりかは感情的に処理してしまい、矛盾を感じてしまうことがあるのがその原因なのだと思います。雰囲気重視で、語り口は確かに面白いのに、設定に違和感を覚えてしまうのです。今回もまた、「80分しか記憶が持続しない」という設定がとても面白い作品だったのですが、ところどころ「?」とい感じてしまう箇所があり、そこが気になってしまいました。80分しか持続しないにしては、3人の関係の進み方が深すぎなのではと思ってしまうのです。80分立てば、「あなたの誕生日を教えてください」の間柄に戻ってしまうわけで・・・。しかし、この作品にはそんなマイナス面を払拭する全体を包み込むほのぼのとした温かい雰囲気の素晴らしさが感じられる作品でした。文章の暖かさが心地よいです。今まで読んだ小川作品の中では一番好き。

途中、主人公が毎朝目覚めると自分の記憶が失われている博士のことを思う場面があるのですが、この設定だと博士は毎朝どころか80分に一度そういう体験をするわけですから、もっともっと状況は厳しいわけですよね。この物語では限りないまでの優しさに溢れる(とりわけ子供への)博士という人間を描くことで、その切なさをより一層ひきたてているように感じました。そして、その博士に、とびっきりの愛を持って接する父親のいない主人公の息子が泣かせます。こういう雰囲気はやっぱり良いなぁ。映画にするととても生かされるような本だと思うのですが、この内容だったら、ハリウッドで映画化しても成功するんじゃないなかなぁなんて思いました。特に「日本」という風土にとらわれないで、普遍的なものを描いている作品という印象が強かったです。それこそテーマは「数学」ですしね。

この作品では「数学」がかなり重要なキーになっていて、作品のあちらこちらに数学トリビアみたいなものが出てくるのだけれど、どれもこれも、算数の教科書のコラムとかに載ってたりするようなものばかりな気が・・・。もっと一般的な認知度の低いお話が聞きたかったです、博士。小学校のときに、学校の図書館にあった面白算数みたいな10巻本くらいのシリーズをやたらと愛読していたので、そのときのことを思い出して、ちょっと懐かしい気分になれる1冊でした。

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2005年12月22日 (木)

映画「最後の恋のはじめ方」

「最後の恋のはじめ方」 2005年 アメリカ

ウィル・スミス主演で今年の初め頃にちょっと流行ってた映画です。監督さんは「メラニーは行く」や「アンナと王様」、「エバー・アフター」なんかのアンディ・テナント。「メラニー~」と同じと聞けばなんとなく納得のいく映画でした。

恋愛下手の人たちのためにデート・コンサルタントをしている男が主人公。あるとき、彼は会社のクライアントのセレブ女性に恋をした冴えない男からの依頼を受けて、彼の恋が成就するような様々なテクニックを伝授することに。一方で、主人公自身の恋の行方も描かれるのだけれど、人にテクニックを伝授する一方で、自分自身のこととなるとからっきしダメで、なかなか上手くいかない。そんな2組のカップルを中心に展開していくストーリーでした。

この映画、どこが面白いかというと、主人公であるウィル・スミスがメインの部分ではなくて、彼がテクニックを伝授する冴えない男性とセレブとの恋の駆け引きの場面。この場面に関して言えばコメディのセンスが抜群で、さらに冴えない男を演じる役者さんの演技がとても良くて、ラブコメ映画としては最高級の面白さ。一方で、ウィル・スミスは恋愛映画にはあまり向いていないのか、彼がメインのパートはあまりぱっとしてなかったように感じました。ストーリーもややシリアス面を盛り込んだりして、作品全体で見たときにはバランスが取れているのかもしれないけれど、彼がメインの部分は個人的には微妙でした。最初から最後までそつなく作られた作品で、そこそこに楽しめますし、アッシャーとかエイメリーとか人気のあるR&B歌手がBGMを飾ってますし、なんとなく楽しい映画を見たいようなときにはオススメ。

この映画のDVDは特典映像がやたらと充実していて、NGやら、未公開シーン、メイキングなどが1時間ほど収録されていました。本編も2時間弱だったので、収録できる限りのギリギリの容量だったんじゃないかと思うくらいのサービスです。コメディ映画は面白いものを真剣に作りこむというギャップがあるので、メイキングが面白いなぁと思いながら、メイキングまで一気に見てしまいました。やっぱ、あのダンス最高!フルで全部使っても良いくらい。

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2005年12月21日 (水)

映画「バタフライ・エフェクト」

「バタフライ・エフェクト」2004年 アメリカ 

切ないラブストーリーというのがこの作品の売り文句だったと記憶していて、確かにラストはとても切なかったのですが、予想していたものとは全く違う内容の作品でした。予備知識として持っていたのは、「何度も過去に戻ってやり直すラブストーリー」というもので、割と壮大でロマンティックな愛の物語なのかなぁなんて思っていたのですが、この映画、そもそもが恋愛映画じゃなかったです・・・。SFサスペンスちょっとだけ恋愛mixみたいな内容で、どこもロマンティックではないし、むしろ、ハラハラドキドキの時空謎解きサスペンスみたいな作品でした。

タイトルになっている「バタフライエフェクト」というのは、蝶々が羽ばたいたときに生じた小さな風が、やがて大きくなり、地球の裏側で台風を起こすきっかけになるということを表した言葉で、小さな変化が思いもよらないような大きな変化へとつながるというこの映画のテーマを表しています。

<一応いつもどおりに、核心にはふれないようにしてストーリーの一部を簡単に紹介しますが、この映画はこういう前知識がないほうが絶対に楽しめるので、読みたい人は反転させてどうぞ>
主人公は少年時代、突然記憶が飛んでしまうという現象がたびたびあって、序盤はそんな少年時代のエピソードがいくつか語られます。幼馴染の少女の家でその父親と映画を撮影したり、友人と一緒にダイナマイトで遊んだりetc.様々なエピソードが語られ、どれにも共通するのは途中で主人公が記憶を失う部分があることと、それらのエピソードでとても悲惨な事件が起きて、周囲の人々が強いショックを受けたということ。主人公はそのときに何が起きたのかという記憶を失っていたのだけれど、大学生になったあるとき、過去の日記を読んでいたところ、突然、日記に書かれている、事件の起きた瞬間に魂が戻ってしまう。少年時代の仲間達は過去の事件がトラウマとなっていて、決して幸せではない人生を送っており、主人公は初恋の幼馴染の少女を救うために、日記を読んで過去に戻ることで、ターニングポイントとなった事件を変えようとするが・・・。という物語。

前半部分で大量の謎をちりばめておいて、後半部分、ひたすら過去に戻りまくることで、それを一つ一つ丁寧に回収していく脚本はとても面白かったです。戻るたびに未来が変わるのだけれど、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もびっくりなくらいの変わりようで、同じ役を演じつつも、性格から話し方まで全然違うキャラを演じ分けなくてはいけない役者さんたちが大変そうだなぁなんて思って見てました。とにかく次から次へとめまぐるしく展開していって、あっという間の2時間という感じです。思っていた作品とは全然違ったのだけれど、これはこれで、良い意味で期待を裏切られたと思います。

詳しい感想を書こうと思うとネタバレをせざるを得ないので再び反転します。「シックス・センス」みたいなもんですね。見て無い人はとにかく見て!

過去に戻るたびに、変化する現代なのだけれど、主人公は、みんなが幸せになることを求めつつも、割と自分の欲望にも忠実なのが印象的でした。たとえば、主人公の体が不自由になってしまうパターンの未来は、母親がタバコによって肺を悪くする以外、他の仲間達に関して言えば、主人公と彼女がつきあっていない以外はかなり幸せそうでしたよね・・・。まぁ、主人公の体が自分たちのせいで不自由になってしまったという罪悪感を抱き続けなければいけないのかもしれませんが・・・。あの時点で、もうこれで良いじゃん!と思ってしまったんですけど、それでも尚、過去に戻り、あの最悪な結果を招くに至っては、もはや見ていられない状態。で、結局は、彼女と出会わないことを選択するわけでしょ。でもさ、彼女が母親と一緒に暮らすことで幸せになったってのは本当に偶然ではないかと。母と暮らした場合はそれはまた違う何かが起きている可能性も十分あるわけで、そうなると、かなりの賭けですよね・・・。ラスト、すれ違った彼女が実は不幸のどん底だったりして・・・なんて思うのはイジワルな見かたですかね。

ディレクターズカットでは、ラストで自分が生まれなかったことにするようですが(←じつはこれは自分が予想していたラスト)、そうなってくると、この映画のメッセージは、「運命を受け入れろ、それができないのであれば、何も望むな」ということですよね。人生のあるときを変えたいという欲望は誰にもあることだろうけど、それを行うと、結局はどこかでひずみが生じてしまい、繰り返した結果は、すべての振り出しそのものを変えなくてはいけなくなってしまうのだということを、投げかけてくる映画でした。そういう点で、これまでの数あるタイムスリップものの作品が持つ「生ぬるさ」を一蹴するようなシリアスな映画だったと思います。(←一部だけ表示して好奇心を煽ってみた。)

そんなこんなで色々と思うところもある映画なのですが、ラストに限って言えば、「切ないラブストーリー」というコピーが本当にぴったりで、無茶苦茶「切ない」終わり方でした。もう、これでもかってくらいに切ないんですよ、ええ。しかも、そこに流れるoasisの曲がまた良いのさ。しかし、DVDの特典には様々なパターンのエンディングが収録されていて、それは概して「切なさ」をなくすような演出をしているのですが、監督さんのコメント曰く、それではやっぱり意味がないんですよね。切ないからこそ生きてくる映画で、そうなると、未見なのだけれど、ディレクターズカットのラストというもの(こちらは全然違うラストにようです)の描く切なさが一番強烈で監督の意向に沿っているのではないかと思うわけです。

ちなみにこのラスト、「メイド・イン・ヘブン」という恐らく誰も知らないような超マイナー映画を彷彿とさせるものでした。よくあるやつだけど、こういうの結構好き。「メイド・イン~」は、(これまた今回の映画のネタバレに近いので、ごめんなさい)天国で知り合った男女が、お互いの記憶を失ったまま生まれ変わって、ひたすらすれ違いまくりながらも奇跡的な出会いを果すという内容で、なかなか面白い映画。かつてテレビでやっていたのだけれど、ネットで見ても全然情報とかないので、恐らく本当にマイナーな作品。

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2005年12月20日 (火)

映画「歓びを歌にのせて」 

「歓びを歌にのせて」 2004年 スウェーデン

知らない人も多いかと思いますが、北欧はかなり合唱が盛んな地域です。そんな北欧から届いた、合唱映画。スウェーデンの映画なんて、「ロッタちゃん」シリーズとか「やかまし村」とか、「ピッピ」なんかの児童文学関係の映画のイメージしかありません。あと見たことあるのだと「幸せになるためのイタリア語講座」がデンマークとスウェーデンの共作だったくらいでしょうか。とにかくほとんど馴染みの無い国、スウェーデンの映画。出演してる人々は知らない人ばっかりなのだけれど、パンフを見ると、スウェーデンのTVで活躍してる人々のようなので、邦画だったら、こういうキャスティングなのかなぁなんて頭の中で思い浮かべるのが楽しかったです。

世界的な大指揮者が体調を崩し、仕事を全てキャンセルして、7歳まで過ごした故郷の村に戻ってくるところから物語りはスタート。ふとしたことから村の聖歌隊の指導をすることになるが、閉鎖的な村ということもあり、周囲の反応はあまり良いものではなかった。聖歌隊のメンバーはそれぞれに様々な問題をかかえていたが、彼のユニークな指導により、徐々に心を開き、自己の内面とも向き合っていくという物語。聖歌隊のメンバーとその周囲の人々との間に溝ができていくなかで、彼らはコンサートを開き、コンクールを目指します(←お決まりの展開ですな)。合唱シーンの練習シーンがこの手の映画としてはかなり好感のもてる描き方だったので、かつて合唱部だった者としては好印象。

合唱映画といえば、「コーラス」が記憶に新しいところ。しかし、この映画は、「コーラス」とはかなりタイプが違うように思える作品でした。「コーラス」は、どちらかというと、「いまを生きる」合唱版みたいな雰囲気がありましたが、こちらはもっともっと大人の物語で、どちらかというと、「ショコラ」合唱版みたいな作品でした。主人公は、聖歌隊のメンバーに、自分自身の声を知ることが大切だと教え、歌の練習よりも、自分自身の声を発見するための発声トレーニングを繰り返します。やがて、「自分の声を発見する」という行為が自己の内面と向き合うことへとつながっていき、聖歌隊のメンバーたちはが心の奥に秘めていた思いを表に出していくというのがこの映画のポイント。閉鎖的な村の環境でそんな彼らが好ましく受け入れられず、指揮者に集まる人望に嫉妬してか、牧師が「罪」の名のもとに、主人公を責立てていく様子も、「ショコラ」を彷彿とさせました。

で、面白かったかと聞かれますとですね、最初の1時間までは、相当面白かったのですが、後半1時間でなんとも言えないよな~となってしまいました。前半部分は、純朴な村の聖歌隊メンバーと、世界的指揮者が目指す練習の温度差をコメディ調に描いていて、笑ってしまう場面もかなり多く、ほのぼのとした雰囲気も心地よかったのです。そして、メンバーたちが心を開いていく中で中盤の最大の山場となる演奏会が開催されるのですが、この場面が映画全体を通してみても、最大の盛り上がりだったように感じました。この演奏会までで映画が終わっていれば、間違いなく今年見た映画の中でも、かなりの上位にくいこむ素晴らしさだったのですが、その後の1時間がね・・・。ちょっとグダグダになってしまった感じ。舞台が冬から夏に移って、北欧の短い夏の美しさを感じるような映像になった一方で、物語からは前半部分の明るさがなくなってしまい、さらにラストに向かって突然の急展開。えーーーーーーーーーー!?と思ってるうちに映画は終了しました。

<以下、かなりのネタバレなので反転させて下さい>

心臓発作が再発して倒れるのはまだ許すにしても、体がふらついた拍子にトイレで頭打って倒れて、誰にも気づかれずにそのままってのはちょっと強引なのではないかと。しかし、最後の歌の部分、どのような曲で閉めるのかと思っていたら、素晴らしい倍音の嵐でした。あの大合唱を始めるきかっけになるのが、あの純真無垢な青年の唸りだというのが、とても印象的でした。彼の役割は「天使」だったのかと気づかされて、はっとなった場面です。冒頭で主人公に聖書を差し出そうとした場面も、ここで、深い意味を持ったなぁと。そう思うと、無駄な場面や人物のほとんど無い、とてもよくできた作品なのかもしれません。

というわけで、最後、一部の展開がかなり微妙だったものの、途中までは素晴らしいし、最後の歌の場面は、人間の声の持つ力強さをこれでもかというくらいに伝える、鳥肌モノの場面(「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラストと同じくらいの衝撃)で、全体的には好印象な作品。中盤の盛り上がりで出てくる歌がとにかく良いのさ。エンドクレジットもこの歌だったし。アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされたそうですが、どうですかねぇ~。

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2005年12月18日 (日)

Daniel Powter 「Daniel Powter」

Daniel Powter 「Daniel Powter」

カナダのシンガーソングライターのデビューアルバム。8月に発売されたもので英・仏でヒットしました。シンガー・ソングライター好きとして、しっかりとチェックです。国内盤は発売予定ないみたいです。

うん、聞きやすい。ひたすら聞きやすい。そして、妙にJames Bluntに似ている・・・。クセのある歌い方とか、曲の感じとか。こちらのほうがポップな感じが強いかもしれませんけど。割とピアノ主体というところが個人的には嬉しいですね。1曲目から、すんなりに耳に入ってくる曲で、聞きやすさを実感させてくれるのは、Jason Mrazの1stと同じ。ヒットシングルの「Bad Day」はやっぱり良い曲ですね。全体に元気が出るような曲が多いと思います。ビル街を颯爽と歩く大人の映像がよく似合うアルバムで、都会を舞台にしたドラマの主題歌とかに使えそうな曲ばかり。37分と収録時間が短いので、あっさりとした印象でやや物足りないアルバムではありますが、この聞きやすさ、曲の構成のそつなさ、爽やかさは特筆すべきものがあると思います。結構オススメ。下記の公式サイトで曲も聴けますよ。こちらで見られる映画仕立てのPVも結構オススメ。

http://www.danielpowter.com/

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「不在の騎士」 イタロ・カルヴィーノ

「不在の騎士」 イタロ・カルヴィーノ 河出文庫

今月の文庫新刊。国書刊行会のあまり普通の書店に売っていなくて、値段も高くて、マニアックな品揃なところの本が文庫になるのは嬉しいですね。河出書房さんに感謝です。カルヴィーノの作品も結構読んできましたが、今回もなかなか良いです。

舞台は中世のヨーロッパ。シャルルマーニュ率いるフランス軍に所属するどこからともなく現われた風変わりな騎士が主人公。彼はその甲冑の中が空っぽで、「存在していない」騎士。強い意志のみで存在している騎士であった。そんな彼を中心に、女性騎士や、母を探す青年、聖杯の騎士、スコットランドの姫といった「騎士もの」の定番キャラが登場して織り成す、王道騎士物語のパロディのような形をとったユニークな小説です。

カルヴィーノの作品の大きなテーマと思われるものとして、「記号と存在」や「語るものと語られるもの」などの関係性を強く追求するというものがあるように個人的には思っています。「見えない都市」(河出文庫)では身振り手振りでの会話で語られる様々な都市の姿を描き「物語」とは読者の想像の産物であると実感させられましたし、「宿命の交わる城」(河出文庫)ではタロットカードを読み解くことだけで一つのカードに様々な解釈を与えることで物語をつむいで、「記号」の解釈の曖昧さや、「物語」の創出について考えさせられました。また、「冬の夜ひとりの旅人が」(ちくま文庫)でも、「読者」と「物語の作者」の境界とは何かということを深く考えさせられました。この「不在の騎士」という作品もこうしたカルヴィーノの特徴を強く感じることのできる1冊です。そもそもの主人公が意志のみで存在しているという設定がまさにど真ん中ですし。この騎士の名前が無茶苦茶長いというのも、「名前」というものの曖昧さを皮肉的に感じさせられますし。

主人公の騎士に対する存在として、姿はあるのに意識がないという男が登場し、彼は自分の目の前にあるものと自分とを混同してしまい、動物を見れば、動物のように行動してしまうような存在で、主人公の「不在の騎士」と究極的に対照的な存在になっています。このような登場人物たちが中心で描かれると、所謂「普通の騎士たち」というのがとても中途半端な存在になってくるのが、この物語の面白いところ。そして、物語の一番最後に現われるとんでもない大どんでん返し(?)によって、ここでも「物語」とは何なのかということが突如曖昧さを持って読者の前に現われるのが非常に面白かったです。

なんて読み方もできるのですが、普通に小説として、とても面白い本で、純粋に楽しめる1冊。純粋に楽しめた上で色々と考えることができるのがカルヴィーノの面白さだと思います。

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2005年12月14日 (水)

RSC来日公演「A Midsummer Night's Dream (夏の夜の夢)」@東京芸術劇場

RSC来日公演「A Midsummer Night's Dream (夏の夜の夢)」@東京芸術劇場

行ってきました!シェイクスピア劇の老舗イギリスのRSC(ロイヤル・シャイクスピア・カンパニー)の来日公演です。英語での公演(字幕なし)なので、この日のために、予習しまくったかいもあって、思う存分に楽しんできました。RSCの舞台は2001年夏のストラトフォードでの「Twelfth Night」以来2度目。本を見ればわかりますが、「夏の夜の夢」はかなり短い劇というイメージがあるものの、上演時間は休憩を挟みつつたっぷりと3時間以上でなかなかの見ごたえでした。ちなみに今日の舞台は皇太子様が見にいらっしゃっていました。

座ってた席は前から4列目のど真ん中。この舞台は結構役者さんたちが座ったり横になったりする場面が多くて、そうすると、同じ目の高さで劇を見ているような状況になるので、なかなかの臨場感を楽しむことができました。舞台全体を見渡すような見方はできなかったけれど、その分、役者さんたちの息遣いまで感じることがきる場所だったので、かなり満足。

今回の舞台で印象に残るのはやはりパックの性格。ボロボロのワークパンツにだらりと片側が垂らしてタンクトップを着ている中年のおっさんでした。しかも、終始ややふてくされ気味の態度。王様がインド少年にご執心になってしまったために、ふてくされつつも、一生懸命気をひこうと頑張っている解釈のようです。やけに人間的なキャラで、どちらかというと客との距離が近い位置にある役どころでした。これまでのイメージだとパックはイタズラな妖精だったけれど、こういうのも良い。あと、以前の十二夜とも比べて見ても、あぁ、パックはフェステなんだなぁと実感できる内容でした。パックを演じた役者さんの絶妙な間の取り方が、また良くて、「だろ?」みたいな感じで観客を舞台に引き込む様子が良かったですねー。最後の台詞のまとめ方も好きでした。(最後のオベロンの歌もなかなか良かったです♪)

舞台美術もなかなか凝っていました。月があったのですが、それが3時間の舞台の間に時間の経過を現すかのようにゆっくりと動いていったりだとか、シンプルな何も無い真っ白の舞台に光をあてることで、役者さんたちの影が大きく背景の真っ白な部分に映り込んだりだとか、「キャッツ」っぽい感じのスクラップでできている妖精の世界(妖精たちの格好もボロボロの作業着系)だとか、森を彷徨うのを3人の妖精さんたちの体で木の枝を表現したりだとか、目を見張るような美しい演出が多い舞台でした。ランプもきれいだった。そして何よりも人形の使い方が面白かったですね。インドの少年の人形は可動式になっていて、それを何人かで動かしているのだけれど、その妙にリアルな動きがちょと怖かったり。あと、バービーっぽい人形を使って妖精を表してたりだとか。

一番笑った場面はなんといっても第5幕。劇中劇が面白すぎでした。映画なんかで見てもこの劇中劇はかなり面白いのだけれど、今日の舞台のはもう抱腹絶倒という表現がぴったしで、会場が一体になって笑いが止まらないような状況。たっぷりと笑わせていただきました。今まで、劇団のまとめ役のクインスは真面目なイメージだったのだけれど、今日でそれが一変。「TRUTH」Tシャツが欲しくなったよ・・・。あと、「壁」が思ってた以上に面白かった♪オイオイみたいな。その点、ライオンさんの印象がちょっと薄かったかもね。劇中劇後にベルガマスク・ダンスを踊ろうという部分があって、映画なんかではカットされているのですが、本を読んだときに、これhが絶対に面白いシーンにできるはずと思っていて、今日の舞台ではまさにその通りに面白いシーンに仕上がっていました。てか、劇を上演する職人さんグループ、面白すぎ。面白いのはボトムだけかと思ってたのに、何気に全員面白かったよ。

主役の4人の恋人たちは印象としてはあまりぱっとしない感じではあったのだけれど(代役だったみたいだし)、熱演でした。でも、ハーミアが本当に背の低い女優さんで、彼女が最初に登場した瞬間から、後半の森の中でのバトルが想像されて、それだけで、ちょっと笑いそうになってしまったり。予習をがんばった分、先の展開を読んで一人でおかしくなってしまう場面も多くて、かなり楽しみましたよー。

本当に楽しむことのできたあっという間の3時間だったのだけれど、個人的には、映画にもなっているエイドリアン・ノーブルの演出の方が好きかも。特に森の場面。あの映画の森は何度見ても感心してしまいますよ。素晴らしすぎます。劇中劇は断然、今日のほうが面白かったですけどねー。まぁ、映画用に編集された舞台と本物とではまた違うんだろうけど。

いやはや、自分の書いた脚本が400年以上後の遠い極東の島国の人々を笑わせているなんてことをシェイクスピアさんは予想してたんですかね。うん、やっぱ、シェイクスピアは良いよ。ますますファンになりました。今度は悲劇も見てみたいな~。あー。「ヴェニスの商人」の映画も見に行かなきゃ。

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2005年12月 5日 (月)

「愛別外猫雑記」 笙野頼子

「愛別外猫雑記」 笙野頼子 河出文庫

芥川賞受賞作の「タイムスリップコンビナート」ですっかり心を奪われて、「母の発達」で完全にはまってしまった笙野さんの作品。今月の新刊です。他の笙野作品と比べると、かなり平易な日本語で書かれているので、非常に読みやすい本ではあるものの、彼女の文章のセンスはやはり天下一品だと感じざるを得ないテンポの良さ。

猫好きというわけでもなかったのに、たまたま「親友」になってしまった近所の野良猫、捨て猫たちを世話していた作者さんが、あまりにもひどい仕打ちに会い、一大決心をして、その野良猫たちを世話するために30年のローンを組んで都内から千葉県のS倉市(恐らく我が市のすぐ近くのあそこ)へと引越しを決行することになるあらましを書き綴った私小説。どこまでがフィションなのかは分かりませんが、写真もありますし、恐らく、実話に基づいている作品。もともと自分のところで飼っていた猫と新しい猫たちと両方に気をつかいつつ、近所の猫嫌いの方との激しい論争バトルや、猫たちに対する各団体の態度への憤りなどをこれでもかというくらいに、激しく本音をぶつけて罵りまくような1冊で、なかなかの読み応えです。都会に暮らす野良猫たちが置かれている状況も垣間見れて、なかなか興味深い1冊でもあります。

猫をめぐる様々な人々、団体とのバトルを通して、作者の激しい憤りが手に取るように伝わってきて、さらに、その表現の仕方がとても面白い一冊です。もともと日本語の使い方がとても上手で洗練されている作家さんなのですが、そういう人が窮地に立たされると、ここまでおもしろおかしく罵倒することができるかと思わせるような1冊。特に、強敵である猫嫌いの洋食屋の人の書かれようが、もうあまりにも酷くて、ここまで酷いと笑うしかないような書かれっぷりなのがとても面白かったです。

10ページに1枚くらい猫たちの写真が収録されていて、猫ファンならば必読!というような装丁が内容の濃さと対照的でこれもなかなか良いなぁ~と思ってしまいました。S倉市での猫をめぐるバトルを描いた続編なんかがあれば是非読んでみたい!

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