映画「ビヨンド・サイレンス」
「ビヨンド・サイレンス」 1996年 ドイツ
「点子ちゃんとアントン」の監督の出世作です。以前からずっと見たくて、テレビでやったのをビデオに録画したものの、なかなか機会がなくて何年かそのままになっていたのをようやく観ました。
聾の両親を持つ少女が主人公がクラリネット奏者を目指すという物語。彼女と両親との関係を、丁寧に、優しく、そして、溢れんばかりの素晴らしい「音」とともに描く作品です。この映画の良いところは、両親が聾であるということが、直接的にテーマになっていることではなくて、どこの家族でも直面するような問題を描いているところです。主人公の父親は、少年時代から「音楽」を理解できないことに対するトラウマがあり、主人公の夢に対して積極的に賛成できずにいるのだけれど、「子供が親の希望する進路を選ばない」なんてのは、特に特別な問題ではないですよね。この映画は音楽家を志す主人公とその家族を描く、青春映画なのです。
この作品は、両親が聾ということで、「音」をとても効果的に使用しているように思いました。日常の中の些細な音を、とても印象的にキラリと挿入したり、無音の場面で孤独感から暖かさまで表現したり、そして、何より、主人公が志す音楽の世界を象徴するクラリネットを用いた美しいBGMの数々が使われており、冒頭から最後まで、これほどに「音」の世界を印象的に描く作品は少ないのではないでしょうか。
「点子ちゃんとアントン」と同じように、全編を通して、とても暖かな作品で、いつまでもその世界に浸っていたいと感じさせるような素晴らしい作品でした。
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