« 「パイロットの妻」 アニータ・シュリーヴ | トップページ | 「インストール」 綿矢りさ »

2005年12月27日 (火)

映画「SAYURI」

「SAYURI」 2005年 アメリカ

原作の小説の邦題が「さゆり」だったので、恐らく映画のほうもそのまま邦題を「SAYURI」にしたのだと思いますが、原題の直訳は「ある芸者の回顧録」だということを知っている人は少ないのでは?原作本が数年前に割りと流行ってて、洋書売り場でも頻繁に見かけた作品を、スピルバーグが映画化権を買い取り、途中から監督を「シカゴ」のロブ・マーシャルに交代して映画化した作品です。スピルバーグ製作×ロブ・マーシャル監督なんて夢のような組み合わせですが、出演している女優人もアジアン・ビューティー大集合という感じでした。

幼い頃に京都の置き屋にひきとられた少女、千代。イジワルな置屋の女将や先輩芸者のイジメ(?)に耐える日々を送っていた彼女は、あるときステキな男性と出会い、彼と再び会うことができるようにと、芸者の道を志す。そんな折、都一の芸者が、置屋の女将と賭けをし、彼女を一人前の芸者に育て上げることになる。こうして、千代は「さゆり」という芸者として世に出ることになるが・・・。というお話。かなりテンポが良くて、一気に見せる2時間ちょっとでした。時代設定は戦前~戦中~戦後のようですが、きっとそれは「JAPAN」のであって日本のではないです。

時代考証も台詞が英語なのも、中国人が主役なのも、この映画が描くのが「日本」ではなくて「JAPAN」であることを踏まえれば全く(?)気にかからない作品で、観る前はかなり不安もあったのですが、意外とあっという間の2時間ちょっとでした。そりゃ、何か言おうとすれば、「え、いきなり伏見稲荷?どれだけ移動したの?」とか、「寺の中が呉服屋?」とか、「着物でこの歩き方はあり?」とか、「豆葉とかカボチャ(字幕はおカボだったけど、英語は完全に「パンプキン」)とかって名前の芸者なんているのか?」とか、「ウメ味とサクラ味のカキ氷なんてあるのか?」とかとかとかとかそりゃもう数え切れないくらいに不思議な場面は沢山あるのですが、ここで描かれているのはあくまで西洋人によるファンタジーの世界としての「神秘の国JAPAN」であり、その代表的存在としての「GEISHA」なのです。キャスティングもオール日本人キャストではないことに不満をあげる人もいるだろうけれど、オールアメリカ人キャストのヨーロッパが舞台の映画なんてのも星の数ほどありますからね。

そう割り切ってしまえば、メインの芸者達がチャン・ツィイー、コン・リー、ミシェル・ヨーと日本人ではないキャストで占められているのも許せますし、音楽が妙に中華な感じ(ヨーヨーマのチェロだし)なのもありではないのかと思います。ストーリーは、「大奥」置き屋版みたいなノリのドロドロ物語なのですが、個人的にもの足りなかったのは、「情」という概念がほとんど感じられなかった点と、「静」の演出がほとんどなかった点。「JAPAN」を描いているにしても、「姉妹」の契りを結んだ妹に対する姉が割とあっさりしているところ(特に戦争が始まってから)や、親友の裏切り、育ての親の完全な冷徹さは「日本」ではありえない描かれ方ではないでしょうか。「男女」の間の情はしっかりと描いているのに、「女の世界」=「女のバトル」になっていたように思いました。日本の作品だったら、「お母さん」の役どころは、普段はクールにしているけれど、実はやさしく見守っていたんだよというような設定があったりすると思うのですが、そういうものが皆無で男女の間以外はかなりドライな人間関係だったのが印象的でした。やっぱりアメリカ映画ですね。

もう1点気になったのは「静」の演出がほとんど無い点です。日本のアニメが海外で上映される際に、「無音」の演出がされているシーンにもBGMを付け加えてしまうという話をきいたことがあるのですが、この映画も、常になんらかの音が場面を盛り上げていました。映像も、明暗を上手く使うのは、ロブ・マーシャルが監督した「シカゴ」やミュージカル「キャバレー」などと同じでとても上手いのですが、あくまで「豪華絢爛」な世界の演出に重点が置かれていたように感じました。「芸者」を描くのであれば、もっともっと「静」の部分があったほうが生きてくるのではないかと。芸者の美しさも、割と「動」の部分に求めていたような印象があったけれど、黙っていても何かを感じるオーラのようなものをもっと感じさせて欲しかったですね。お披露目の舞の場面なんかは完全に「シカゴ」だったのだけれど、芸者ってあんな派手な踊りするんですかねぇ。あ、これは「GESIHA」か・・・。

と、気になった部分を書いておいてなんですが、この映画、基本的には割りと面白いです。チャン・ツイィーは「オペレッタ狸御殿」の可愛らしいお姫様の役のほうが似合っていたようにも感じるのだけれど、その存在感は抜群!あと、桃井かおりが相当良いです。「千と千尋」チックな役どころではあったけれど、とても印象に残る演技でした。主人公の少女時代の子は英語の発音がお世辞にも上手いとはいえなくて、ちょっと苦笑いな感じだったのだけれど、なかなかの熱演。あと、いきなり出演の舞の海にもびっくりしました。ハリウッド作品だし、キャスティングはかなり成功だったのではないかと思います。そうなってくると、やっぱり感じるのは、頑張れ!日本人女優!ということですかねぇ。この役だったら蒼井優とか良さそうだけどねぇ。

|

« 「パイロットの妻」 アニータ・シュリーヴ | トップページ | 「インストール」 綿矢りさ »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/145222/7869388

この記事へのトラックバック一覧です: 映画「SAYURI」:

« 「パイロットの妻」 アニータ・シュリーヴ | トップページ | 「インストール」 綿矢りさ »