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2005年12月21日 (水)

映画「バタフライ・エフェクト」

「バタフライ・エフェクト」2004年 アメリカ 

切ないラブストーリーというのがこの作品の売り文句だったと記憶していて、確かにラストはとても切なかったのですが、予想していたものとは全く違う内容の作品でした。予備知識として持っていたのは、「何度も過去に戻ってやり直すラブストーリー」というもので、割と壮大でロマンティックな愛の物語なのかなぁなんて思っていたのですが、この映画、そもそもが恋愛映画じゃなかったです・・・。SFサスペンスちょっとだけ恋愛mixみたいな内容で、どこもロマンティックではないし、むしろ、ハラハラドキドキの時空謎解きサスペンスみたいな作品でした。

タイトルになっている「バタフライエフェクト」というのは、蝶々が羽ばたいたときに生じた小さな風が、やがて大きくなり、地球の裏側で台風を起こすきっかけになるということを表した言葉で、小さな変化が思いもよらないような大きな変化へとつながるというこの映画のテーマを表しています。

<一応いつもどおりに、核心にはふれないようにしてストーリーの一部を簡単に紹介しますが、この映画はこういう前知識がないほうが絶対に楽しめるので、読みたい人は反転させてどうぞ>
主人公は少年時代、突然記憶が飛んでしまうという現象がたびたびあって、序盤はそんな少年時代のエピソードがいくつか語られます。幼馴染の少女の家でその父親と映画を撮影したり、友人と一緒にダイナマイトで遊んだりetc.様々なエピソードが語られ、どれにも共通するのは途中で主人公が記憶を失う部分があることと、それらのエピソードでとても悲惨な事件が起きて、周囲の人々が強いショックを受けたということ。主人公はそのときに何が起きたのかという記憶を失っていたのだけれど、大学生になったあるとき、過去の日記を読んでいたところ、突然、日記に書かれている、事件の起きた瞬間に魂が戻ってしまう。少年時代の仲間達は過去の事件がトラウマとなっていて、決して幸せではない人生を送っており、主人公は初恋の幼馴染の少女を救うために、日記を読んで過去に戻ることで、ターニングポイントとなった事件を変えようとするが・・・。という物語。

前半部分で大量の謎をちりばめておいて、後半部分、ひたすら過去に戻りまくることで、それを一つ一つ丁寧に回収していく脚本はとても面白かったです。戻るたびに未来が変わるのだけれど、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もびっくりなくらいの変わりようで、同じ役を演じつつも、性格から話し方まで全然違うキャラを演じ分けなくてはいけない役者さんたちが大変そうだなぁなんて思って見てました。とにかく次から次へとめまぐるしく展開していって、あっという間の2時間という感じです。思っていた作品とは全然違ったのだけれど、これはこれで、良い意味で期待を裏切られたと思います。

詳しい感想を書こうと思うとネタバレをせざるを得ないので再び反転します。「シックス・センス」みたいなもんですね。見て無い人はとにかく見て!

過去に戻るたびに、変化する現代なのだけれど、主人公は、みんなが幸せになることを求めつつも、割と自分の欲望にも忠実なのが印象的でした。たとえば、主人公の体が不自由になってしまうパターンの未来は、母親がタバコによって肺を悪くする以外、他の仲間達に関して言えば、主人公と彼女がつきあっていない以外はかなり幸せそうでしたよね・・・。まぁ、主人公の体が自分たちのせいで不自由になってしまったという罪悪感を抱き続けなければいけないのかもしれませんが・・・。あの時点で、もうこれで良いじゃん!と思ってしまったんですけど、それでも尚、過去に戻り、あの最悪な結果を招くに至っては、もはや見ていられない状態。で、結局は、彼女と出会わないことを選択するわけでしょ。でもさ、彼女が母親と一緒に暮らすことで幸せになったってのは本当に偶然ではないかと。母と暮らした場合はそれはまた違う何かが起きている可能性も十分あるわけで、そうなると、かなりの賭けですよね・・・。ラスト、すれ違った彼女が実は不幸のどん底だったりして・・・なんて思うのはイジワルな見かたですかね。

ディレクターズカットでは、ラストで自分が生まれなかったことにするようですが(←じつはこれは自分が予想していたラスト)、そうなってくると、この映画のメッセージは、「運命を受け入れろ、それができないのであれば、何も望むな」ということですよね。人生のあるときを変えたいという欲望は誰にもあることだろうけど、それを行うと、結局はどこかでひずみが生じてしまい、繰り返した結果は、すべての振り出しそのものを変えなくてはいけなくなってしまうのだということを、投げかけてくる映画でした。そういう点で、これまでの数あるタイムスリップものの作品が持つ「生ぬるさ」を一蹴するようなシリアスな映画だったと思います。(←一部だけ表示して好奇心を煽ってみた。)

そんなこんなで色々と思うところもある映画なのですが、ラストに限って言えば、「切ないラブストーリー」というコピーが本当にぴったりで、無茶苦茶「切ない」終わり方でした。もう、これでもかってくらいに切ないんですよ、ええ。しかも、そこに流れるoasisの曲がまた良いのさ。しかし、DVDの特典には様々なパターンのエンディングが収録されていて、それは概して「切なさ」をなくすような演出をしているのですが、監督さんのコメント曰く、それではやっぱり意味がないんですよね。切ないからこそ生きてくる映画で、そうなると、未見なのだけれど、ディレクターズカットのラストというもの(こちらは全然違うラストにようです)の描く切なさが一番強烈で監督の意向に沿っているのではないかと思うわけです。

ちなみにこのラスト、「メイド・イン・ヘブン」という恐らく誰も知らないような超マイナー映画を彷彿とさせるものでした。よくあるやつだけど、こういうの結構好き。「メイド・イン~」は、(これまた今回の映画のネタバレに近いので、ごめんなさい)天国で知り合った男女が、お互いの記憶を失ったまま生まれ変わって、ひたすらすれ違いまくりながらも奇跡的な出会いを果すという内容で、なかなか面白い映画。かつてテレビでやっていたのだけれど、ネットで見ても全然情報とかないので、恐らく本当にマイナーな作品。

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