「文明の憂鬱」 平野啓一郎
「文明の憂鬱」 平野啓一郎 新潮文庫
芥川賞作家の平野氏のエッセー集。月刊誌に連載されたもので、そのときどきの時事ニュースの中から1つを選んで、平野氏が考察をするというような内容です。書かれたのが2000年から2002年くらいの間で、扱われるニュースはAIBOの登場とか、成人式で騒ぐ新成人などの割と身近なものから、911テロまで色々なニュースを扱っています。
このエッセーが書かれたときの平野氏は24歳~27歳ということで、今の自分と同じ歳のころということもあり、とても興味深く読むことができました。もともと平野氏の小説は好きなので、どのような考えを持ってる人なのだろうと前々から興味もありましたし。この本を読んで感じたのは、芥川賞作家、しかも、あのような擬古文的な作品を書くような若い作家とはいえ、日常で考えていることが、常人の域を越えているというわけではないのだなということ。「そうそう」と共感したり、はたまた、それはちょっと違うのではないかと思ったり、同世代の若者が発した現代社会への一つの意見として、とても興味深く読むことができました。また、彼はうちの兄とほとんど変わらない世代なので、子供時代に触れている部分など、「あぁ、兄もその頃そんな感じだったなぁ」と思いながら読むこともできて、読みやすかったですね。
平野氏の書くエッセーがどのようなもなのか、読む前は色々と期待を膨らませたのですが、最初のほうは割りと固い文体なものの、連載が進むにつれて、読みやすいくだけた文体に推移していて、こういう普通の文体も上手で、とても読みやすかったです。ますますファンになったかも。「葬送」の続きそろそろ読もうかな。
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