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2006年1月18日 (水)

「しょっぱいドライブ」 大道珠貴

「しょっぱいドライブ」 大道珠貴 文春文庫

03年下半期の芥川賞受賞作品。余談ですが、このときの直木賞は、京極、石田、角田、奥村、横山と人気作家さん目白押し状態だったにもかかわらず該当ナシだったんですね。しかも、その後しっかり受賞した人ばかり。

表題作含めて短編が3つ収録されています。芥川賞受賞作の「しょっぱいドライブ」は、港町で暮らす30代の女性が、幼い頃から家族ぐるみでつきあいのあった近所に暮らす老人、九十九さんと同棲をするに至るまでを描く作品。主人公の家は母親を早くに亡くし、金銭面にだらしのない主人公一家は九十九さんから多大の借金をしている上に踏み倒しているという状態。九十九さんは、御人好しな感じで、妻を若い男に寝取られた上に子供まで、その男になつかれてしまうは、借金は踏み倒されっぱなしという男。主人公はふとしたきっかけで九十九さんと寝ることになり、そのまま、一緒にドライブをしたりして、やがて一緒に暮らそうということになる。そこに、主人公がかつて憧れていた劇団員の男のエピソードなどが挿入されて、色々としょっぱい人間模様を描く作品。

老人と30代の女性というと、どうしても「センセイの鞄」のイメージが強くなってしまいます。この作品も、設定だけ見たら、川上作品にあっても良さそうな感じ。しかし、やっぱり「センシエ~」の持つ、独特の間を持った心地よい雰囲気が感じられず、どこか物足りない。あと、恋愛関係はないけれど、「博士の愛した数式」もやっぱり30代女性と老人の物語ですね。最近、こういうのはやってるんですかね。田舎の港町の小さな人間関係や何だかわからないもやもやとした空気はよく描けていて、つまらなくはないけれど、きっと2度目読むことはないだろうなという感じでした。

さて、この本、他に2編収録されているのですが、3作目の「タンポポと流星」という作品がとても面白かったです。芥川賞、個人的にはコチラの作品であげたい感じ。中学時代から一緒につるんでいる友達と主人公との女の友情を描いた作品。主人公は中学時代からいつも姉御肌の鞠子と一緒で、彼女のペースにふりまわされてばかり。別々の高校に行っても、家を出て、違う街で1人暮らしを始めても、毎週のように彼女のもとにやってきて、やたらと世話を焼き、命令口調で、主人公は内心、そんな彼女を疎ましく思いつつも、ふりきることができず、いつも彼女のペースに流されていた。そんなあるとき、主人公は東京の会社へ就職し、1人生まれ育った福岡から東京へ行くことに。はたして主人公の鞠子のいない東京での生活は・・・。という物語。

こういう主従関係がはっきりとした中学生くらいの人間関係ってしばしば見受けられますが、常に親分から逃げたいと思っている子分がいざ離れてみると・・・っていう割とありふれた感じの内容ではあるものの、テンポも良いし、エピソードが面白いし、比喩的なラストの表現がとても上手で心地よい作品でした。

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