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2006年1月 5日 (木)

映画「ハウルの動く城」

「ハウルの動く城」 2004年 日本

ジブリの最新作を遅ればせながらようやく観ました。ちなみに、自分の好きなジブリ作品上位3つは「ラピュタ」、「魔女」、「おもひで」です。「豚」もいいよね。

魔女の呪いで90歳の老婆に姿を変えられてしまった少女ソフィーが、それまでいた帽子屋にいることができなくなり、末の妹を訪ねていく途中、不思議なカカシに導かれて、足があり動き回る巨大な城に迷い込む。そこは、街の人々が恐れる魔法使いハウルの住む城で、ソフィーは自分にかけられた呪いが解かれることを期待しつつ、そこに半ば強引に掃除婦として住み込むことに。はてさて、彼女にかけられた呪いは解かれるのか?魔法使いハウルの秘密とは?そして国中を脅かしている戦争の行方は?という物語。

この作品、映画化が決定した直後に、原作を読もうと思って、原書で半分ちょっとまで読んだのですが、あまり面白くないなぁと思っているうちに、放置してそのままになっていました。今回、映画を最後まで観て、その結果、色々と理解不能だったので、未読だった原作の後半部分を駆け足でパラパラと読んだので、その辺も検討して感想を。

単刀直入に言ってしまうと、原作通りに映画化するべきだったのではないかと。そうしたら「ラピュタ」的な作品になって普通に楽しめた気がします。原作はつまらないと思ってたけど、この映画よりは面白い。とりあえず、原作にはない要素の「戦争」が邪魔だと感じました。このテーマを無理に挿入したことで、ハウルにかけられた呪いの秘密という原作通りの基本のストーリーがかなりぼやけてしまっているように思いました。あと、非常にテンポよくストーリーが進むのだけれど、そのために、説明不足が多いのが否めないのも事実。特に序盤の各キャラクターの背景的な説明が主人公含めてあまりに少なくて、何がなにやらさっぱりなのでは?と思いました。自分は原作を多少読んでいたので、その知識でカバーできたけれど、何も知らずに観て、果たしてちゃんとフォローできるのでしょうか。特に子供とか。そもそも主人公は継母と暮らしていて、あまり良い生活をしていないのだけれど、映画では母は登場するものの、それが実母なのか継母なのかも説明ないし・・・。だから、後半で再び彼女が登場するときに、わけの分からない登場の仕方になってしまっていて「??」という感じでしたよね。

原作では、純粋にハウルと荒野の魔女の対立がメインで、戦争を行っているという背景はありません。この映画では「戦争」という新しい要素を導入しているので、9・11以降の世界に対して何らかの投げかけを試みているのはよく理解できるのですが、ハウルが戦場で何をしているのかなど、基本的な部分がどうもはっきりとしなくて、なんだかよく分からない感じでした。荒野の魔女がいつの間にか仲間になってて、王様のところにいる魔女サルマンが最終的な悪役になっているのもどうも腑に落ちないし。映画では魔女も戦争を行っている政府側の犠牲者的存在として描くことで、戦争を行っている王様&魔法使いを最終的な悪に持っていってたけれど、そのためには、もっともっと戦争の部分をはっきりと描けばいいのに、そういうところで妙に原作のストーリーを尊重したりしてて、どっちつかずの印象です。でも確かなのは、途中で全く違うストーリーになるものの、原作を読んでいるといないないとでは、この説明不足の映画の認識度は大分違うのではないかと。

映像や音楽の美しさは言うまでもないけれど、今回はメインテーマにやたら頼っていて、曲のバラエティが少ないのもちょっと残念。「魔女~」なんかは魅力的な曲をこれでもかというくらいにあって、今でもテレビでサントラの曲が色々と使われていますよね。「千と千尋~」で感じられた不自然なCG使いが今回はなくて、その点は良かったかなと思います。しかしです。声優が・・・。主人公が年をとってしまうので、年配の女優さんを声優に起用していますが、それならば若いときの声は別に人にやってほしかった・・・・。無理が感じられてちょっと、ねぇ。しかも年をとってからの場面で彼女は地声ではなく、わざわざ「おばあさん風の声」で演じてしまったので、もはや彼女でなくても良いのではと思ってしまったり。某アイドル君も頑張ってたけど、やっぱり顔がチラチラするんだよね。炎も。その点、神木くんは上手だなぁなんて思いました。声優があまりに気になったので、一部、英語音声日本語字幕で観たのだけれど、案外こっちのほうが落ち着いて観られるかもしれません。

ジブリとともに成長してきた世代なので、どうしても思い入れがあるジブリ作品ですが、今回はちょっと微妙ですね。でも「ナウシカ」(こちらは原作の2巻までの映画化で、もっと中途半端ですが)も普通に1回見ただけだとよく分からないけど、何度か観るとジワジワと面白い印象だしなぁ。単に最初に見たときは小さかったからわからなかっただけかもしれないけど。次回作、「ゲド戦記」は原作があまりに有名なので、原作をいじるようなことはしないと思いますが、はてさて・・・。

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