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2006年2月

2006年2月26日 (日)

「神戸在住 8巻」 木村紺

「神戸在住 8巻」 木村紺 講談社

神戸の大学に通う女子大生を描くシリーズの第8巻が出ました。今回も大変素晴らしく、ほのぼのと心温まる内容でした。

最初の巻では大学2年生だった主人公もこの巻で4年生になりました。雑誌連載では最終回を迎えたそうなので、おそらく大学を卒業して終わりになるのでしょうね。この巻では卒業制作に取り組む姿なんかが描かれて、これまでは、学科の異なる友人や、サークルの友人とのエピソードが多かったのに対して、学科の友人とのエピソードが大半を占めていました。印象的だったのは主人公の成長が感じられる巻であったという点。初期の主人公は、どちらかというと、受身な印象の強いキャラだったのですが、7巻での衝撃の事件を乗越えた彼女は、他人のために力になってあげる「与える人」へと確実に成長をしています。単に主人公の大学生活をスケッチするだけの内容の作品なのだけれど、少しずつではあるけれど、成長していく過程を自然なエピソードの連続でさりげなく描いていくこのシリーズは本当に傑作だなと改めて感じた次第です。

あと、この巻で、サークルの先輩達と食事にいくというエピソードがあります。主人公が4年になっていることからも分かるように、先輩達は留年、大学院生、就職して社会人という顔ぶれ。これと同じメンバーで海に行くという回が主人公が2年生のときの初期のエピソードにあるのだけれど、今回は、このメンバーで出かけるとなんだかほっとするというような感想を主人公が持って終わるという回。海に行くエピソードはいかにも学生らしい雰囲気をしっかりと捉えて描かれていて、僕も自分の思い出と照らし合わせたりして、とても良い心地が味わえるものなのだけれど、この話を数年前に読んでいる読者は、今回のエピソードを読んで、この初期のエピソードを思い出して、主人公と同じように過去を懐かしむということを追体験できる、そんなエピソードでした。あと、サークルって自分が1年で入った頃のメンバーの印象がやっぱりどうしても強いというイメージが自分にはあって、今のサークルも楽しいけれど、先輩たちと出かけると、なんだかほっとするという感覚にとても共感できました。

これまでは、何気ない日常を描いているエピソードが目立つ作品だったけれど、主人公は卒業制作を終えて、弟が家を出ると言い出し、友人は結婚し、この巻にきて物語は確実に終わりへと近づきました。この雰囲気を保って最終回を迎えれば、この作品が自分の中で最も好きな漫画と呼んでおかしくないことは間違いありません。最終巻、少し、淋しいけれど、発売が待ち遠しいです。

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2006年2月21日 (火)

映画「ぼくの伯父さん」

「ぼくの伯父さん」 フランス 1958年

夜にBSで仏映画「ぼくの伯父さん」がやっていました。見るのは5回目くらいなんですけど、普通に楽しめました。当時のアカデミー外国語作品賞&カンヌの特別賞を受賞しています。

下町に暮らすユロとその甥っ子ジェラールの物語。ジェラールの父は工場の社長をしていて、住んでいる家も、超未来的なデザイン住宅。母は客がきたときにだけ、庭の噴水から水を出して、家の自慢を繰り返している。そんなジェラールは堅苦しい家にいるよりも、無職で自由気ままに下町で暮らす伯父と遊ぶのが大好き。しかし、毎日遊んでいる伯父を心配して、ジェラールの父母は仕事や恋人を紹介しようと試みるのだが・・・。という物語。とにかく見てください。そして、1958年製作だということに度肝を抜かされてください。

作品全体を通してゆる~い感じのトーンが一貫して続くので、後半、ちょっと飽きてくるのは事実なんですけど、前半1時間くらいまでは確実に楽しめます。恐らく2日くらいに分けて、後半だけ単独で見れば、十分に楽しめると思うので30分くらいの短編作品でシリーズ化したらもっともっと伝説的になったかもしれませんね。半世紀ほど前の映画のはずなのに、映像も音楽もとにかくオシャレなのです。当時、これを映画館で見た日本人は恐らく、外国の文化は未来そのものに違いないと強く憧れたのではないでしょうか。しかし、この映画の持つセンスの良さは、21世紀の今でもなお光り輝いていると僕は感じます。とにかくセンスが良いんです。そして、クスリとさせてくれるさりげない笑いがまた良い。カラー作品ですけど、カラー映画が登場して間もない頃の作品のはず。それなのに、今年公開された映画といわれても全く疑う余地が無いような斬新な個性があるので、最初に見たときは本当に衝撃をうけました。

オープニングのスタッフ名の表示の仕方、タイトルの出し方からして、この映画の持つ独特のセンスの良さが感じられて、かばんに魚をさして歩くシーン、近未来的な少年の家、魚の噴水、伯父さんの家、子供たちのいたずらなど、全編にわたって、ほのぼのとした暖かさ、そして、無邪気なイタズラ心にあふれているのですが、それでいて、サラリと風刺をきかせているのがこの映画の憎めないところ。台詞が少ない映画なのだけれど、BGMとして登場するテーマ音楽がまた非常に心地が良い。この音楽とセンスの良い映像を楽しむだけで十分に価値のある作品です。

この映画好きだなぁ。ジャック・タチ作品、これしか見てないんだけど(その割りにこれだけは何度も見てる)、他の作品もかなり気になります。

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「タンノイのエジンバラ」 長嶋有

「タンノイのエジンバラ」 長嶋有 文春文庫

「猛スピードで母は」で芥川賞を受賞した作家さんです。「猛スピード~」はなかなか好きだったので、文庫化2作目となる今作もしっかりとチェック。

全部で4作品が入った短編集で、隣の家の娘を預かることになった失業中の男を描く表題作、両親の離婚で離れ離れになった姉妹弟の関係を描く「夜のあぐら」、妻と姉と3人で行ったスペイン旅行での居心地の悪さを描く「バルセロナの印象」そして、パチンコ店でバイトを始めた音大卒30歳の主人公の日々を描く「三十歳」を収録。

一番面白かったのは、「バルセロナ~」、次いで、「三十歳」、「夜のあぐら」、「タンノイ~」という順でしょうか。しかし「タンノイ~」も表題作になってるくるらいなので決して悪い作品ではないです。総じてレベルの高い短編集だというだけ。男性主人公、女性主人公問わず、読者を主人公の日常世界へと引き込む語り口の上手さが際立った作品集という印象でした。どの作品も、あらすじだけ書けば何のことも無い内容なのだけど、なんとない日常で主人公達が感じるよしなしごとや、とりわけ、ちょっとした閉塞感、やり場のなさなんかをサラリと描いているのがなかなか面白いです。この点で言えば、「三十歳」はかなりの傑作だと感じました。あと、何気ない描写の中に、主人公の感じる閉塞感を無言で描く「バルセロナの印象」もとても面白い。自分は芥川賞の「猛スピード~」より、この本のほうが好きかな。

ところで、この本、単行本は表紙が高野文子だったのに、この文庫版は違う表紙。高野さんの作風とこの作品集の空気は確かによくマッチしていると思うので、文庫版の表紙も高野さんのをそのまま使って欲しかったなぁと。

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2006年2月20日 (月)

映画「アップタウンガールズ」

「アップタウンガールズ」 2004年 アメリカ

「宇宙戦争」に引き続きダコタ・ファニング。映画好きなんて言っている自分ですが、実は今回が、初ダコタ。天才子役とはどんなものなのかとワクワクして見てました。

事故死してしまった伝説のロックスターの両親の残した莫大な遺産によって、遊びながら悠々自適な生活を送っていた主人公。22歳の誕生日を迎えたある日、遺産を管理していた男が、それを持ち逃げしてしまい、彼女は一文無しの状態になってしまう。仕方なく何か仕事を始めることにした彼女だけれど、これまで働いたことなどなく、遊び人のお嬢様だった彼女を雇ってくれるところはなく、ようやく見つけた仕事が、ベビーシッター。レコード会社の社長令嬢の8歳の少女の世話をすることになったのだが、彼女は、外見は8歳でも精神年齢が相当高く、子供らしいところがまるで無いツワモノ。一方、これまでの人生遊んで暮らしてきた主人公は体は大人でも精神年齢が低く、まるで子供のような振る舞いばかり。このデコボココンビが互いの心に抱えた傷に気づき、友情を育む様子をコメディたっぷりに描く作品。

ハートウォーミングな映画としては、普通に面白くできているのですが、あまりにも、普通すぎる脚本&演出で、先の展開がすぐに読めてしまうし、いかにもな泣かせシーンがあったり、ドタバタコメディシーンがあったりで、確かに面白いのだけれど、新鮮味の無い作品ではあります。しかし、そんな作品をしっかりと見せるだけの演技力が主演の2人にあるので、しっかりと最後まで見れる映画。子供っぽい大人を演じるブリタニー・マーフィーも、大人っぽい子供を演じるダコタ・ファニングも役にぴったりで、この2人有っての映画に仕上がっています。ちなみに、主人公の恋人役が演じている役者も、脚本上の役どころも良いところがまるで無い上に、何故、ここで彼が出てくるのか!?という場面もあり、ちょっといただけない感じです。

ダコタさんの妙に演技演技した台詞回しは確かに上手くて、こういう映画では、「大人っぽい子供」を無理して演じているというような設定なので、非常に効果的に感じるのだけれど、「宇宙戦争」でも同じ喋りだったので、これは彼女の喋りの演技がそのまま生かされた形だったのでしょうね。でもやはり、「宇宙戦争」に続いて、カメラの前での演出を最大限に生かす動きや間の取り方が上手な子でした。でも、天才子役っいうと、自分はやはり、オスメント君かな。女の子でいえば、点子ちゃんの自然な可愛さのほうがずっと印象的だし。もっと自然なダコタさんを見てみたいものです。

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映画「宇宙戦争」

「宇宙戦争」 2005年 アメリカ

昨年の話題作。スピルバーグ×トム・クルーズの「マイノリティ・リポート」コンビです。

では簡単なネバタレしない程度のあらすじを。事件は主人公が離婚した元妻と一緒に暮らしている子供達と久々に過ごせる休日に起こります。怪しげな雲が空に現われ、次の瞬間、激しい落雷が連続で起こり、その現場へ行ってみると、地面の中から、謎の巨大マシーンが現われ、レーザービームのようなものを撒き散らしながら周囲にいる人々を次々と襲っていく。そして、子供達を守るため、主人公は必死になって逃げて逃げて逃げまくるという物語。母親である元妻のもとへ子供達を連れて行こうと、これまで父親らしいこと一つできなかった主人公が全力で子供達を守ろうとする姿がメインで描かれて、襲撃してきた宇宙人と積極的にバトルするような内容ではないのがこの手のパニックものとしては新しい感じです。まぁ、敵が圧倒的に強すぎるんですけどね・・・。

この物語、原作は未見なのですが、70年ほど前に全米を恐怖に陥れた伝説ラジオドラマのほうはCD&スクリプトがセットになったものを5年位前に買ったのがあって、何度か聞いたことがありました。このラジオドラマはとてもよくできていて、普通に天気予報やら音楽やらが流れている途中に、臨時ニュースが入って、何度か番組に戻るんだけど、そのうち、番組が中断されて、宇宙人が襲撃している現場からのリポートや、学者のコメントなどを普通のラジオのニュースのようにつないでいくという構成になっているのです。で、いわゆるラジオドラマみたいな展開はなくて、あくまで本物のニュースのように展開するので、知らずにこれを聞いていた人たちが、本当に宇宙人が襲撃してきたのかと思い全米がパニックになったそうで、それも納得のなかなかよくできたラジオドラマです。そのイメージが強いので、今回の映画化は話を聞いたときからスピルバーグがどのように作るのかということがかなり気になっていましたが、蓋を開けてビックリ、パニックものなのに、ただひたすら子供を守るために逃げまくるという内容とは・・・。

突然の襲撃にパニックに陥った人々が暴徒と化して主人公達に襲ってくるという中盤の展開は、なかなか面白かったです。さらにその後の場面で、主人公がつい先ほど暴徒に言われた台詞と寸分も変わらぬものを言う立場になるという描き方も、主人公が「ヒーロー」ではなくて、1人の「人間」として描かれいる感じでなかなか面白かったと思いました。これほどのパニックが起こったら日本もどうなるかは分かりませんが、いつかの台風のとき、アメリカでは、避難所の住民達が配給の食糧を巡って殺人を犯したりしているというニュースがあって、日本とはずいぶん違うなぁと思ったのを思い出しました。日本って、災害が起きたときに、自分だけが助かることを考えないで、地域なりなんなりである程度のコミュニティで一体となって助かろうとする傾向があるように思うのだけれど、先のニュースや、今回の映画を見ると、アメリカは自分の命を守ることが最優先という印象です。さらに言えば、家族の命よりも自分みたいな部分まで感じられるところもあって、ちょっとビックリしました。

で、この映画、やっぱり、ダコタ・ファニングが上手いです。彼女、見せ方を心得ています。どのタイミングで目を見開いて、絶叫すればいいかとか、カメラのアングルとかを意識して、パーフェクトに見せ場を盛り上げるのには感心させられます。しかし、逆に言えば、台詞回しも合わせて、全てが演技演技しすぎているような感じもします。インタビューなんかで出てくる彼女は割りと子供らしい子供なので、もっと素の子供らしさを生かせばいいのになぁなんて思うのだけれど、どうなんでしょうか。

最後に一言。で、何故大坂!?

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2006年2月18日 (土)

「陽気なギャングが地球を回す」 伊坂幸太郎 

「陽気なギャングが地球を回す」 伊坂幸太郎 祥伝社文庫

新書で出ていた伊坂作品3作目が文庫化しました。新書版を買おうかどうしようか、かなり迷っていたところだったので、かなり期待していて、あっという間に読み終えてしまいました。いや~、今回も面白かったですよ、伊坂さん!!

銀行強盗をしている4人組が主人公。ある日、彼らがいつものように銀行を襲撃して、無事大金を手に入れて逃走していると、目の前に一台のバンが現われ、あわや衝突事故という状況に。そして、そのバンの出現により事態は意外な方向へと展開して・・・というお話。伊坂作品はストーリーのほとんど全てがキーになっているのでネタバレを避けて内容の説明をしようとすると、かなり難しいのは相変わらず。

今回は、前2作、「オーデュボンの祈り」(これ、27歳のときの作品なんだね。すげー。)や「ラッシュライフ」のようにバラバラになったパズルのピースがつながっていくような爽快感こそないものの、はじめから終わりまで登場するエピソードや会話がほとんど全て伏線になっている構成はやはりお見事!の一言。それでいて、徹底してエンターテイメントに徹していて、飽きさせず、次々と展開していくストーリーも非常に面白い!第1章の銀行襲撃のクライマックスからはじまって「ギャング」という題材の持つ面白さをこれでもかというくらいにたっぷり詰め込んで、さらに、ところどころ、区切りの部分に現われる語の辞書的解説の使いかたもとても上手。最後のほうはネタやオチが分かってしまっても、それをどうやって持っていくのかが気になってしまって最後まで思いっきり楽しんでしまいます。ますます伊坂ファンになってしまいした。

この作品、今まで読んだ2作品と比べて、圧倒的に映像化しやすい作品なのですが、実際、この春に映画が公開になるようです。しかし、読んでいるときから頭に浮かんだのはハリウッド映画のイメージ。これ、ブルース・ウィルスとか主演にして、ハリウッドでこのまま映画化したら、「オーシャンズ11」(これも確かに面白いけれど)なんかよりもずっと面白い映画ができるんじゃないかと思います。なんて思って読んでいたらあとがきで作者が、90分くらいで見終わって爽快になれるような短い映画が好きで、そういうのの小説版を目指して書いたと書いていました。ほうほう。やはり、映画を意識した作品だったのですね。大成功ですね、伊坂さん!!(なんだか慣れ慣れしい感想だ・・・)

そうやって絶賛しつつも、やはり前2作の衝撃は超えなかったので、ものたりない部分も。これが他の作家の作品だったら手放しで絶賛するところですが、伊坂氏となると、もっともっと読者をあっと言わせて欲しいという欲が出てきてしまいます。早く他の作品も文庫化して欲しい!!ハードカバーで買いそうになりつつも、我慢するほどに、期待が膨らんで、読むのが楽しみになるのも事実なので、待ち続けるんだろうなぁ。でも、最近の出版ペースを考えると、そろそろ次々と文庫化する頃だよね。

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映画「ボクと空と麦畑」

「ボクと空と麦畑」1999年 イギリス 

バイト先で一緒の某君が注文してDVDを取り寄せていて、以前から気になっていたものの未見だった作品で、その後、ちょっとした映画トークになって、そのDVDを貸してもらいました。見てないだろうけど、サンキューです。

舞台は1970年代のグラスゴー郊外の労働者階級の人々が暮らす街。ゴミ収集のストのために、街中にゴミが溢れ、ネズミが大量発生、街を流れるどぶ川では悲しい事故も起こり、低所得層の人々が暮らすこの地区は常に町全体がどんよりとした様子。この環境の中、主人公の少年は、ショッキングな事件に遭遇し、さらには、町の悪ガキ連中との退屈な日々、貧しい家庭と追い詰められて行き、自分の居場所を必死になって探す。そして、出会うのが悪ガキ連中にいじめられている少女だったり、偶然乗ったバスで行き着いた広大な麦畑だったりして・・・というお話。はっきり言いますと、最後の最後まで見ていて鬱になるエピうソードの連続。結末も極めて後味が悪いです。この爽やかな邦題を見ると、追い詰められた少年が麦畑で夢を見て救われるのかなぁなんて思ってしまうのですが、全然そんな映画ではありません。

この映画を見ていて思い出したのが、ケン・ローチ監督の「Sweet Sixteen」と「ケス」の2作品。とりわけ、全体の雰囲気は「ケス」と非常によく似ているのではないでしょうか。そうなると、この映画の目指す表現は40年前にすでに確立されていたということになり、そして、より完成度が高いということで、改めて「ケス」という作品が非常に優れていることを痛感せざるを得ないというのが正直な感想です。おそらく、この監督さんはそうとうケン・ローチを意識しているのは間違いないのではないかと。

ちなみにこの作品、始まるや否や、いきなりすごい勢いで裏切られます。これにはさすがにやられました・・・。DVDの表紙の写真とか見れば分かることなんですけど、それでも、やっぱり、ねぇ。

イギリスの労働者階級を描く作品というのは、60年代の「土曜の夜と日曜の朝」や「ケス」からはじまって、90年代の「フルモンティ」や「リトルダンサー」、「トレインスポッティング」まで、本当に様々な作品があるので、見比べていくとなかなか面白いのでオススメですよ!というのが、学部のときに受講していたいくつかのイギリス系の授業から得たイギリス映画の楽しみ方の1つです。

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2006年2月16日 (木)

「最後の吐息」星野智幸

「最後の吐息」星野智幸 河出文庫

今出てる文藝の春号で特集が組まれていて、ちょっと面白そうだなぁと思って、読んでみました。

文藝賞受賞の表題作ともう1話が収録されていましたが、なんと言いますか、「インストール」や「野ブタをプロデュース」とこの作品が同じ賞を受賞していることが信じられない感じです。文藝賞というと、他にも「きょうのできごと」とか鈴木清剛「ラジオデイズ」なんかの青春モノのイメージが強いのですが、この作品はそれらとは一線を画するといっても良いかもしれません。確かに青春モノではあるんですけど・・・。もっともっと、生々しくて、受賞するなら決して直木賞ではなく芥川賞だろう純文学的な作品を書く作家さんです(←最近、この辺の境がわかりにくくなってると思う)。

いつものようにストーリーとか書こうと思ったのだけれど、なんか上手く書けない感じ。南米の大学に留学している主人公が恋人に書いた手紙に小説を書いて送って、で、その作中作である小説が「最後の吐息」という作品で、物語の大半を占めて書かれています。で、なんと言いますか、日本語の文章をちゃんと読んでいるのに、よく理解できない外国語の作品を一生懸命読んでいるような不思議な感覚を味わうほどに、文体や言葉の使い方がよく言えば、みずみずい感性で書かれていて、悪く言えば分かりづらい作品なのです。自動記述で書かれたような感じといいますか。幻想的といいますか。なんだかあまり読むことのない文学作品でした。

もうひとつ載っている作品はもっともっと感覚的な描写がするどくて、ストーリーなんかがつかみづらい感じ(これは僕の読解力の問題)で、面白いのだけれど、置いていかれてしまって気づいたら迷子になっているような感じ。南米が舞台ということと合わせて考えると、ボルヘスの作品なんかに似た雰囲気の作品を書く作家さんだなぁというのが感想です。あの手の作品が普通に楽しめる人ならば、かなりはまれる作家さんではないでしょうか。他の作品も読んでみようかな。

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2006年2月 4日 (土)

「The Office」 

「The Office」 2001年~2003年 イギリス

イギリスで大ヒットしたコメディのDVDが日本で発売になりました。見たのは第1シーズンだけですけど、とにかく面白いので皆でレンタル店へGO!です。

このドラマはBBCが製作しているんですけど、BBCといえば、良質のドキュメンタリーを沢山製作していることで有名です。これはBBCがロンドン郊外のとある製紙会社のオフィスのドキュメンタリーを取材しているという設定のドラマで、社員たちへのインタビューを織り交ぜながら、オフィス内の風景をスケッチしていきます。

ここが面白い!その① とにかくドキュメンタリー

ドキュメンタリーという設定通りに、社内の様子を撮影している場面での役者さんたちの演技がとにかく自然。本当にどこかの会社のオフィスを撮影しているみたいです。あと、たまにカメラ目線になったり、素人さんが取材のカメラを気にしながらちょっとかっこつけたりするような演技も、いかにもドキュメンタリー的で上手。ドラマだと知らないで見始めたら、普通にドキュメンタリーだと思う人も多いのでは?

ここが面白い!その②他では見られない特殊な「笑い」

アメリカのシットコム(「フレンズ」とか「フルハウス」とか)みたいに、ダイレクトに台詞の面白さ、動きの面白さといったコント的なネタで笑わせるのではなくて、「雰囲気」で笑いをとるのがイギリス的。空気が読めない発言で場がしらけたりする場面なんかを映して、「こういう人いるいる!」みたいな面白さを出してみたり、「ドキュメント」という手法を逆手にとって、インタビュー時の建前と実際のオフィス内スケッチで見られる本音のギャップで笑わせたりと、とても自然なのに完全に計算されつくされたような笑いがなかなか新鮮です。また、海外コメディでよく見られる、「笑い声」が入っていないのも特徴的。ドキュメンタリーという手法をとっているので、「笑い声」はもちろん入らないのですが、「しらけた雰囲気」のときに無音状態になったりするのが、また面白いわけです。よくある海外コメディでは、そういう場面では、大爆笑の音声が入ってたりして、しらけた空気に、たまらなくなって含み笑いしてしまうような感覚を味わうことはなかなかできませんが、この作品はそういう場面も沢山あります。

ここが面白い!その③最初の数回をちょっと我慢すれば後は笑の嵐

最初の2回くらいははっきり言ってあまり面白いとは感じられません。あまりにドキュメンタリーっぽく作られすぎているので、まずこれがコメディだと理解するのに時間がかかります。あと、人物紹介がちゃんとあるわけではないので、最初の2話くらいは、オフィス内スケッチから、それぞれのキャラを自分で読み取っていかなければいけません。さらに、笑いの種類が分かりやすいものではないため「はぁ?」という感じになりがちなのが最初の2回。ところが、3話目くらいから俄然面白くなってきます。具体的でストレートな笑いのネタが増えると言うのもあるのだけれど、各キャラの性格を一度つかんでしまうと、とにかく面白いです。なので、最初の2回くらいがあまり面白くないからといって早送りなんかしてしまうと。この作品独特の空気をつかめないので、面白くないまま。ちょっと退屈かもと思っても、見続けることがポイント。そうすれば、3話目の社内クイズ大会と4話目の社員研修の回は、終始笑いっぱなし。さすがBBC、「ビーン」に続いて、こんなに面白いコメディを作ってくれてありがとう!!!という感じです。

NHKの「サラリーマンNEO」でニュース番組の様式を模して笑いを作ってる回があったけれど、あの感じに似てます。「NEO」は割と「笑い」を前面に出してきていて、ちょっと見ればそれが作り物のニュースでバラエティ番組なのだと分かるけど、こちらは、本当にただのドキュメンタリー番組のようで、1シーズン全6話を通して見ても、「こういう変な人が多い会社がどっかにあって、BBCがドキュメント作ったのかな?」と思わせる「本物っぽさ」がこの「The Office」の凄いところだと思う。DVDボックス買っちゃおうかな。

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2006年2月 2日 (木)

「短編マンガ集 バニーズほか」 笠辺哲

「短編マンガ集 バニーズほか」 笠辺哲 小学館

IKKIという雑誌の作品は、自分のツボにあうものが多くて、割と注目しているのですが、これもそんな中の1冊。

短編集ということで、短い作品がいくつか入っているのですが、SFあり、不条理あり、笑いあり、涙ありと言った感じです。絵のタッチが独特で人を選びそうなのですが、ストーリーだけで言えば、一番似ているのは藤子Fの短編ではないでしょうか。藤子氏はSFを「すこし・不思議」の略称として用いて、大人向けに書いた短編集の面白さ、完成度の高さは何度読んでも楽しめてしまうのですが、この短編集のテイストはまさに藤子F。不思議な設定をさらりと導入して、主人公たちはいかにもどこにでもいる普通の人で、最後のオチで読者にガツンと衝撃を与えるといった感じ。

収録作品はどれも面白いのですが、いくつかの話は、あまりの面白さに読んだ直後にまた読み返してしまうくらい。とりわけ、一番最後に収録されている「イパネマの娘」という短編は白眉のできで、藤子Fの「ミノタウルスの皿」を思わせるような設定&展開でオチのつけかたが全然違うところがまた良いです。この作者さん、要チェック。原一雄の「麦わらドリル」といい、藤子テイストの作品を発掘してくるのは、さすが小学館といった感じです。

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