「最後の吐息」星野智幸
「最後の吐息」星野智幸 河出文庫
今出てる文藝の春号で特集が組まれていて、ちょっと面白そうだなぁと思って、読んでみました。
文藝賞受賞の表題作ともう1話が収録されていましたが、なんと言いますか、「インストール」や「野ブタをプロデュース」とこの作品が同じ賞を受賞していることが信じられない感じです。文藝賞というと、他にも「きょうのできごと」とか鈴木清剛「ラジオデイズ」なんかの青春モノのイメージが強いのですが、この作品はそれらとは一線を画するといっても良いかもしれません。確かに青春モノではあるんですけど・・・。もっともっと、生々しくて、受賞するなら決して直木賞ではなく芥川賞だろう純文学的な作品を書く作家さんです(←最近、この辺の境がわかりにくくなってると思う)。
いつものようにストーリーとか書こうと思ったのだけれど、なんか上手く書けない感じ。南米の大学に留学している主人公が恋人に書いた手紙に小説を書いて送って、で、その作中作である小説が「最後の吐息」という作品で、物語の大半を占めて書かれています。で、なんと言いますか、日本語の文章をちゃんと読んでいるのに、よく理解できない外国語の作品を一生懸命読んでいるような不思議な感覚を味わうほどに、文体や言葉の使い方がよく言えば、みずみずい感性で書かれていて、悪く言えば分かりづらい作品なのです。自動記述で書かれたような感じといいますか。幻想的といいますか。なんだかあまり読むことのない文学作品でした。
もうひとつ載っている作品はもっともっと感覚的な描写がするどくて、ストーリーなんかがつかみづらい感じ(これは僕の読解力の問題)で、面白いのだけれど、置いていかれてしまって気づいたら迷子になっているような感じ。南米が舞台ということと合わせて考えると、ボルヘスの作品なんかに似た雰囲気の作品を書く作家さんだなぁというのが感想です。あの手の作品が普通に楽しめる人ならば、かなりはまれる作家さんではないでしょうか。他の作品も読んでみようかな。
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