「陽気なギャングが地球を回す」 伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」 伊坂幸太郎 祥伝社文庫
新書で出ていた伊坂作品3作目が文庫化しました。新書版を買おうかどうしようか、かなり迷っていたところだったので、かなり期待していて、あっという間に読み終えてしまいました。いや~、今回も面白かったですよ、伊坂さん!!
銀行強盗をしている4人組が主人公。ある日、彼らがいつものように銀行を襲撃して、無事大金を手に入れて逃走していると、目の前に一台のバンが現われ、あわや衝突事故という状況に。そして、そのバンの出現により事態は意外な方向へと展開して・・・というお話。伊坂作品はストーリーのほとんど全てがキーになっているのでネタバレを避けて内容の説明をしようとすると、かなり難しいのは相変わらず。
今回は、前2作、「オーデュボンの祈り」(これ、27歳のときの作品なんだね。すげー。)や「ラッシュライフ」のようにバラバラになったパズルのピースがつながっていくような爽快感こそないものの、はじめから終わりまで登場するエピソードや会話がほとんど全て伏線になっている構成はやはりお見事!の一言。それでいて、徹底してエンターテイメントに徹していて、飽きさせず、次々と展開していくストーリーも非常に面白い!第1章の銀行襲撃のクライマックスからはじまって「ギャング」という題材の持つ面白さをこれでもかというくらいにたっぷり詰め込んで、さらに、ところどころ、区切りの部分に現われる語の辞書的解説の使いかたもとても上手。最後のほうはネタやオチが分かってしまっても、それをどうやって持っていくのかが気になってしまって最後まで思いっきり楽しんでしまいます。ますます伊坂ファンになってしまいした。
この作品、今まで読んだ2作品と比べて、圧倒的に映像化しやすい作品なのですが、実際、この春に映画が公開になるようです。しかし、読んでいるときから頭に浮かんだのはハリウッド映画のイメージ。これ、ブルース・ウィルスとか主演にして、ハリウッドでこのまま映画化したら、「オーシャンズ11」(これも確かに面白いけれど)なんかよりもずっと面白い映画ができるんじゃないかと思います。なんて思って読んでいたらあとがきで作者が、90分くらいで見終わって爽快になれるような短い映画が好きで、そういうのの小説版を目指して書いたと書いていました。ほうほう。やはり、映画を意識した作品だったのですね。大成功ですね、伊坂さん!!(なんだか慣れ慣れしい感想だ・・・)
そうやって絶賛しつつも、やはり前2作の衝撃は超えなかったので、ものたりない部分も。これが他の作家の作品だったら手放しで絶賛するところですが、伊坂氏となると、もっともっと読者をあっと言わせて欲しいという欲が出てきてしまいます。早く他の作品も文庫化して欲しい!!ハードカバーで買いそうになりつつも、我慢するほどに、期待が膨らんで、読むのが楽しみになるのも事実なので、待ち続けるんだろうなぁ。でも、最近の出版ペースを考えると、そろそろ次々と文庫化する頃だよね。
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