« 「神戸在住 8巻」 木村紺 | トップページ | 「永遠の出口」 森絵都 »

2006年3月 1日 (水)

映画「遠い空の向こうに」

「遠い空の向こうに」 1999年 アメリカ

名作として名高くて、以前からずっと見たかった映画をようやく見ることができました。多少の脚色があるとはいえ、事実は小説よりも奇なり、映画よりも感動的なりといった雰囲気の映画。主演は今をときめく某カウボーイ映画の主演かつドニー・ダーコ君の彼。

舞台はソ連のスプートニク打ち上げのニュースがラジオから流れる1957年のアメリカ。主人公の高校生の少年は地上から肉眼で観察できるスプートニクを見て感動し、友人らと自分達でロケットを作ろうと決意し、試行錯誤しながら、ロケット作りに励む。しかし、彼の住む町は、炭鉱会社が建設したもので、住人はすべて炭鉱関係者の家族、子供たちは町の学校を卒業してそのまま炭鉱で働くというのが暗黙の了解となっていた。そんな閉鎖的な田舎の炭鉱の町から飛び出したいと、自分の夢に向かって突き進む主人公と、息子には自分の後を継いで炭鉱で働いてもらいたいと願う父親との葛藤を交えて物語は進む。やがて全米科学コンテストの出場を目指す少年達は、閉鎖が噂される炭鉱の町の希望となり、多くの住人達が彼らを応援するようになるのだが・・・。

実話に基づいて描かれた名作です。本当によい。空高く舞い上がるロケットという題材が、単に少年たちの夢に終わらず、閉鎖的な町から飛び出して生きたいという夢の象徴となって、主人公のみならず、やがて街中の人々の希望になっていくのが、本当に良いのです。父親との葛藤も、ありがちな展開とはいえ、演出がとても上手で、はっとさせるような映像&役者さんたちの演技によって、安っぽい感動の押し付けに終わらないで、いつまでも心に残るような素晴らしい名シーンを作り出していました。生徒達を応援する教師(しかもあまりにドラマティックな後半の展開が「実話」なのだから、さらに感動的)をはじめとして、脇を固めるキャラもかなり良い。主人公達の行為に反対する父親をはじめとする人々だって、単に、反対しているだけではなくて、自分が誇りを持って行っている仕事を継いでもらいたいという思いや、子供を本当に愛しているからこその厳しい意見であるということも、短い時間の中でしっかりと伝えたことがこの映画の上手なところ。「炭鉱の町」という特殊な状況がこの物語を深く盛り立てているのは間違いありません。

とても丁寧に作られた作品で、心に染み入るシーンも多く、泣きどころのオンパレード。何気に、冒頭のスプートニク打ち上げのニュースを報じるラジオと地下で作業する炭鉱の人々とを比較して描いていく数分のシーンから、この映画はただものではないと感じさせられました。「フォンブラウン博士は偉大だけど、ヒーローじゃない」という主人公の台詞が出るあたりからは涙腺はゆるむ一方、そして最後のクライマックスでは号泣でしたよ。エンディングに出てくる、実際の主人公達の映る8mmで撮影した映像がまた良い。あと音楽の使い方も良い。前半のオールディーズを多用して時代を感じさせながら、ユーモラスな場面を描くのも良いし、オープニングや後半の感動的なBGMの使い方もかなり良い。そして何よりも良いのが原題の「October Sky」が「Rocket Boys」(原作本のタイトルもこれ。)のアルファベットを並べ替えたアナグラムになっているという神業的なタイトルのつけかた。この作品に寄せる製作者たちの熱い思いがこれでもかと伝わってきます。

「リトルダンサー」と似ているなんていう意見をよくきくのですが、自分はちょっと違うなと思いました。どちらも、自分の夢に向かって突き進む主人公と、それに反対しつつも暖かく息子を見守る父親が登場する炭鉱の町のお話で、ストとか、プロットも似てるのは確かにありますが・・・。

「リトルダンサー」が面白いのはやはりジェンダーの描き方。このあたりは「フルモンティ」、「ベッカムに恋して」なんかと同じで、イギリス映画ならではのテーマ。だからこそ、「男の子がバレエをする」という設定が生きてくる。一方でこの映画のロケットというテーマは、上述の通り、地下の世界である「炭鉱の町」との対比で強烈に生きてくる題材。また、主人公が「町」そのものに持っているイメージなども違いますよね。「遠い空の向こうに」は、炭鉱の町で生まれて炭鉱で働くことが当然とされている主人公が、その壁を突き破ろうとして、高校生という進路の決定を目前にした主人公の境遇との相乗効果で設定が生きているのに対して、「リトルダンサー」では、似たような設定ではあるけれど、それよりも自分はただ踊りたいのだという主人公の踊りへの熱烈な思いが強く描かれています。「リトルダンサー」は主人公&イギリス社会そのものにスポットが強くあたっているけれど、この映画は派手なアメリカの闇とも言える「炭鉱の町」という部分に当てられたスポットライトがとてもよく生きている作品ではないかと思いました。だからこそ「リトルダンサー」には見られなかった、息子も父を理解すると言う「遠い空の向こうに」の展開がまた泣かせるんですねぇ。

あと、決定的な違いは「仲間」いるかどうか。4人と1人とではかなり違いますよね。スタンドバイミーを髣髴とさせるしね(←一部サントラが被ってるのと、線路のシーンが原因かと思われる)。僕はどちらのも映画も大好きですよ!「リトルダンサー」は好きな映画TOP5に入る作品ですし。

|

« 「神戸在住 8巻」 木村紺 | トップページ | 「永遠の出口」 森絵都 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/145222/8885601

この記事へのトラックバック一覧です: 映画「遠い空の向こうに」:

« 「神戸在住 8巻」 木村紺 | トップページ | 「永遠の出口」 森絵都 »