映画「理想の女」
「理想の女」 2004年 英、西、伊、米、ルクセンブルク
オスカー・ワイルドの戯曲「ウィンダミア夫人の扇」を映画化した作品です。「理想の~」というタイトルは、前に映画化されている同じくワイルドが原作の「理想の結婚」を意識した部分も多いのでしょう。そして、「理想の結婚」と同様に、強くオススメできる大人のドラマでした(どちらかというと「理想の結婚」のほうが上な気もしますが・・・。)。ワイルドの作品は、一つ一つの台詞に重みがありますね。
舞台は1930年代、社交界で名の知れた結婚1年目の夫婦メグとロバートは、イタリアでのセレブな休日を楽しんでいた。ある日、彼らが過ごす地に、男を手玉に取って遊んでいるともっぱらの噂になっている中年女性アーリンが現われる。アーリンはロバートに近づき、いつしか、2人の関係が噂されるようになるというお話。ここに、メグに一目ぼれしたイギリス紳士ダーリントン卿や、アーリンと恋仲になるダピィなどが加わり、夏のイタリアの海岸を舞台に社交界の人間模様が描かれていく。
映画館で見たという人から、ラスト近くになると、映画館にいた中年女性が皆泣いていたという話を聞いたのだけれど、見初めて30分ほど経っても、ただの社交界恋愛模様の映画でしかなくて、感動の要素がどこにあるのかが全く分かりませんでした。しかし、途中で、衝撃の展開が用意されていて、最後まで見てなるほど納得、これは中年女性たちが涙する映画ですよ。「理想の結婚」でも思ったけれど、ワイルドの戯曲ってストーリーに卒がないし、それぞれのキャラクターたちの心の機微を描くのがとても上手です。ストーリーの面白さは、原作の良さがそのまま反映されたのでしょう。でも、ちょっと調べてみたところ、原作では、そのタイトルにも入っている「扇」という小道具がもっと生かされた作品のようです。この映画では、原題も「A good woman」となっていて、「扇」そのものはそれほど生かされていませんでした。このままでも十分面白いけど、きっと原作の戯曲はもっと面白いに違いない。
この映画、「真珠の耳飾~」のスカーレット・ヨハンソンがメインと思わせつつ、最大の功労者は、アーリンを演じたヘレン・ハントです。最初は、すっかりオバサンになってしまったヘレン・ハントにちょっと衝撃を覚えたりもしたのだけれど、この映画での彼女は本当に素晴らしいです。細かな感情の表現は言うまでもなく、色気を感じさせた貫禄のある演技には本当に引き込まれました。これまでのイメージは、「恋愛小説家」や、「ハート・オブ・ウーマン」、テレビドラマ「Mad about you」などの大人のラブコメのイメージが強かったのですが、この映画での彼女は、新境地発掘といったところでしょうか。逆に彼女があまりに良すぎて、スカーレット・ヨハンソンが完全にのまれてしまっている印象も受けたのが、ちょっと残念。
タイトルの「理想の女」の意味が分かるラストは、本当に良いです。この場面でのヘレン・ハントとスカーレット・ヨハンソンの熱演が、ジンワリと感動を誘っていたように思います。人間の暖かさ、心遣い、そして、愛情の深さを感じることのできる、傑作ではないでしょうか。こういうハッピーエンドも気持ちが良い。あと、舞台となってるイタリアの景色や、衣装、小物などもかなり良い雰囲気なので、その辺も楽しめる映画でした♪
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