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2006年4月 3日 (月)

「家庭の医学」 レベッカ・ブラウン

「家庭の医学」 レベッカ・ブラウン 朝日文庫

翻訳の柴田元幸が現代のアメリカ作家9人にイタンビューする「ナイン・インタビューズ」の中でも取り上げられていた作家さんの作品。この作家さんは「からだの贈り物」と、ペーパーナック読みかけの「The end of youth」に続いて3冊目。

母親が癌にかかり、衰弱していって亡くなるまでを、最期まで看病と介護を続けた主人公の視点で描く作品。「貧血」、「嘔吐」、「幻覚」、「モルヒネ」といった用語でつけられた各章のタイトルの下には、「家庭の医学」という名の通りに、それぞれの用語の専門的な解説が添えられています。で、それぞれの章の内容も、可能な限り感情を出さずに極めて淡々と描かれていくのがとても印象的です。しかし、この作品は、語らないからこそ、むしろ、語らないことによって、そのできごとが直球で胸につきささり、結果として、深い感情を引き起こすことに成功しているように感じました。「からだの贈り物」もこれと全く同じような作品だったので、この作者の特徴なのでしょう。癌の母を看取るというと、感動の押し売りのような印象を与えますけど、そうではなくて、とてもリアルに淡々と展開していく作品なのです。

最後は母が亡くなって終わりとなるのだけれど、それに反して、読後感は意外にもそこまで暗くはありません。最後に向かって、死に直面する母親が、ようやく楽になり、天国で待つ人々のもとへと旅立っていけたというように感じさせる展開の仕方が本当に上手なのだと実感します。作者の実体験に基づくという、ノンフィクション的要素の強い作品ですが、このような形をとるにせよ、どのような形であっても、残されたものが去っていったものを忘れないことが大切なのだと思います。自分の親はまだまだ健在ですが、20年後、30年後、そしてまた、自分が老いていく50年後、60年後に読み返してみると、また違った読後感を味わえるのかもしれません。

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