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2006年4月20日 (木)

「カンバセイションピース」 保坂和志

「カンバセイションピース」 保坂和志 新潮文庫

保坂作品は芥川賞作品の「この人の閾」に続いて2作目。他の作品もずーっと興味があったのですが、「カンバセイションピース」の評判が良いので、とりあえずそれを読もうと思って文庫化を待ち続けていた次第。

幼少時代に自分の一家と従兄弟一家とが一緒に暮らしていた一軒家。叔母がなくなり、住む人のいなくなったこの家に、中年になった主人公とその妻が引っ越してくるところから始まります。2人で住むには大きすぎるこの家に、やがて、友人がやっている従業員3人の会社と主人公の妻の姪が引っ越してくる。小説家の主人公とその家に暮らす人々、そして3匹の猫たちの淡々と過ぎていく日々を、時に主人公が子供時代にこの家で過ごした記憶などを織り交ぜながら、タイトルの通り、いくつもの会話の破片を繋げて描いていく作品。

「ストーリーのない小説」の真骨頂とも呼べる作品です。しかし、それにもかかわらず、最後に向かって、ある種独特の不思議な盛り上がりを見せて、ちょっとした感動さえ味わってしまうという不思議な作品でした。作品を通してずっと語られるのは、「存在とは何か」ということ。いくつもの思い出話、小さなエピソードと会話をつなげていく中で、読者の我々も一緒になって登場人物の会話に参加し、色々なことに思いをめぐらせる。そして、気づくと一緒になって哲学している自分がそこにいたりする。そんな作品です。読後に何かが深く残るというよりも、読書をしているその瞬間にこれほどまで強く働きかけてくる作品も珍しいのではないでしょうか。自分は今読書をしているんだ!ということをこれほどまでに実感させるような1冊でした。傑作!「この人の閾」もかなり感動したんですけど、これは、またさらに違う次元で感動しました。他の本も読まなくては!

この本、解説をしている方の職業が「書店員」とあって、解説を任せてもらえるなんて、こういう店員さんのいる本屋さんは良い店なんだろうなぁなんて思っていました。しかし、この解説、どこかで見覚えがありました。この書店員さんのいる書店、僕が一番好きな、あの書店じゃないですか!!!そんなに規模が大きいわけではないのに、自分が良いと思った作品に必ずと言っていいほどポップがついている書店。文庫コーナーのラインナップが「売れてる本」ではなく、「面白い本」に絞っていて、他店では見つけるのも困難な在庫僅少本も置いている書店です。明日でもまた立ち寄ろうっと。

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