映画「旅するジーンズと16歳の夏 トラベリング・パンツ」
「旅するジーンズと16歳の夏 トラベリング・パンツ」 2005年 アメリカ
あまり前情報もなく、恵比寿ガーデンシネマでやってた映画だよなぁという記憶だけを頼りに、面白いに違いないと思い、借りてみました。あそこの映画館で上映する作品は良作が多いのです。
主人公たちは高校1年生の女の子4人組。ほぼ同時期に生まれた4人は、幼少の頃からずっと一緒に過ごしてきた親友。そんな彼女たちが、高校1年生の夏に初めて、夏休みをバラバラに過ごすことに。そんな夏休みを前に一緒に買い物に出かけた彼女達は、そこで、体型がバラバラの4人全員にフィットしてしまう不思議なジーンズを見つけます。彼女達は、バラバラに過ごす夏の間、このジーンズを順番にそれぞれの滞在先に送り、はきまわすことに。祖父母のいるギリシアへの一人旅、メキシコでのサッカーの合宿、離婚した父を訪ねる南部への旅行、行くところがなく地元でバイトをしながらドキュメンタリーを撮影と4人それぞれが過ごす夏を、4人の友情の絆であるジーンズが繋いでいくという作品。
非常によくできた作品でした(←最近こういうのばっかりですが、本当に面白かった)。4人のキャラクターがそれぞれ上手く描かれていて、それぞれのエピソードにちゃんと見所を作っていました。
祖父母のいるギリシアに行った少女は言葉も通じない異邦の地で孤独を味わうのだけれど、その島の景色が絶景と呼ぶにふさわしい美しさで、島の観光プロモでも見ているような感じ。彼女のエピソードは祖父との交流が味わいぶかい。特典にあった削除された祖父とのシーンはあったほうがこのエピソードの質が上がった気がします。
サッカー合宿に行った少女は、美しい容姿を持っているのだけれど、幼い頃の母の死という呪縛から逃れられずにいる子。このエピソードは爽やかなサッカーシーンが印象的なのだけれど、主人公の美しさばかり目立っていたような気がします。
どこにも行かず、地元でドキュメンタリーを撮影した少女のエピソードは涙なしでは見られない感動のストーリーでした。これだけでも一つの映画が作れそうな内容ですね。全体を通して、一番良い夏を経験したのは、ずっと地元にいた彼女なのかもしれません。
離婚した父を訪ねる少女は、そこで、父の秘密を知ることになります。このエピソードは容姿にコンプレックスを持つ主人公ということで、決して綺麗とはいえない女優さんなのだけれど、とても魅力的な演技を見せる人で、彼女がグイグイとエピソードを引っ張りかなり見所がありました。
4人のエピソードが平行して描かれていくんですけど、その繋ぎ方も、緩急のつけ方が上手でとてもテンポが良いので、時間があっという間に経過してしまう印象です。4人が初めてバラバラに過ごし、それぞれが大人に向かって一歩成長するわけですが、まだまだ1人立ちすることはできなくて、「仲間」と悩みを共有しながら、成長していく姿がとてもリアルで、心に染み入りました。「スタンド・バイ・ミー」は、4人がこの後バラバラになってしまうのだろうなぁということを強く感じさせつつ、それでも、忘れがたい夏の日を共有したという思い出が残るところが、「少年の思い出」っぽいんですけど、この映画で描かれる少女の友情は、恐らく彼女達は一生4人で仲良く過ごしていくんだろうなというのが感じられる友情で、そういうところに女性っぽさを感じてみたり。
原作が全米をはじめとして全世界でベストセラーになっているようなので、原作勝ちという部分も多いとは思うのだけれど、映画化の仕方も非常に上手だったのではないでしょうか。原作はこの後も、彼女達のその後の夏を描く続編があるようなので、映画のほうも是非シリーズ化してもらいたいですね。特に3人が高校を卒業した夏を描くという第3作目が見てみたいですねー。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画「天使の分け前」(2013.06.13)
- 映画「屋根裏部屋のマリアたち」(2013.05.29)
- 映画「ハッシュパピー バスタブ島の少女」(2013.05.27)
- 映画「リンカーン弁護士」(2013.05.06)
- 映画「偽りなき者」(2013.05.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
とってもおすすめされているようなので見ました
これ、大好き!
後半大泣きだったのでおうちで見ててよかった
Juno以来くらいかなー
こうぴったりはまる感覚
元女の子としては
甘酸っぱくてもどかしくて一生懸命な感じが
すっごい思い出されるわけです
もちろん映画みたいにpicture perfectではないけどさ
昔の友達とかもね
なつかしいなあ
Tibbyみたいな、Junoみたいな、Enid(ghost world)みたいな子に
なんだかずっと憧れてたなあ
なんてことも思い出した
もう一本借りてきたけどこの余韻がもったいないので
また別の日に
紹介してくれてどうもありがとう
ここで読まなかったら知らなかったと思う
投稿: halcan | 2010年3月 7日 (日) 00時36分
>halcanさん
お久しぶり!
この映画良いでしょ!!
あまり知られてないのが本当にもったいないと思う。
やっぱり女性のほうが、
共感できる要素は多いんだろうねぇ。
僕のオススメをきっかけに観てくれた上に
満足いただけたようで嬉しい限りです。
続編の『19歳の旅立ち』も
同じキャストで映画化されていて、
この第1作目には劣るんだけど、
続編としては十分に合格点で面白いですよ。
投稿: ANDRE | 2010年3月 7日 (日) 01時36分
宵っ張りですね、お互い
ガーデンシネマ品質の映画だよね
おもしろい映画であることは当然として
品が良くて、さらに+α惹かれるものがある、というか
>やっぱり女性のほうが、
>共感できる要素は多いんだろうねぇ。
もちろんそうだと思う
みんなにぴったりなジーンズ、なんて魔法の瞬間
いくつか経験したもん
だからこそ、男の子なのに目が高いなーと思ったことだよ
見終わって少しグーグルしたんだけど
主演の女の子たちがugly betty, gosship girl, gilmore girlsなど
旬な女優になってることも付け足しましょうか
海外のテレビにうとい私でも聞いたことあるんだからすごい
投稿: halcan | 2010年3月 7日 (日) 01時49分
>halcanさん
>みんなにぴったりなジーンズ、なんて魔法の瞬間
>いくつか経験したもん
マジですか!?
そういう魔法の瞬間はあまりなかったなぁ。
バカばっかりしてました・・・。
そうそう、彼女達みんな大出世したんだよね。
この映画もアメリカではヒットしたみたいだし、
良い映画なのに
日本ではあまり受けれいれられてないのがかなり謎です。
投稿: ANDRE | 2010年3月 8日 (月) 00時27分
初めてお便り(笑)します。
今日、「旅するジーンズと19歳の旅立ち」を見ました!
良かった~~!!!!
去年。16歳~を見てとても感動したので続編があればな~と思ってしばらく忘れていました・・・。
4人の女の子が本当に良いです!!!
日本では同じような映画はつくれないだろうな。
もし、作られたとしても誰にも感情移入できないだろうな。
ANDREさんも書かれていたけど、なんで日本で話題にならないのか本当謎ですね。
この映画はもしかして実話では?と思わせるほど4人の女の子のエピソードがしみじみ微笑ましく胸にすーっと入ってきます。
お話変わりますが、恵比寿ガーデンシネマは良い映画が上映されるのですね。
なかなか映画館へは行けないのですが、今度チェックしてみて思い切って足を運んでみようかな。
ANDREさんは男性なのですね!!!
文章を読むととても細やかで女の子の気持ちがわかっているので途中まで女性だと思ってしまいました・・・!!!
良い映画がありましたら紹介してくださいね。
またおじゃましに行きます。
投稿: NEIGE | 2012年8月18日 (土) 20時36分
>NEIGEさん
お返事が遅くなってしまって申し訳ないです。
コメントどうもありがとうございます!
この映画は本当に良い作品だと思うので、
今からでももっと多くの人に知ってもらいたいですね。
最近原作が角川文庫で文庫化していたので、
それを読んだ人が映画も見てくれると嬉しいんですけどねぇ。
恵比寿ガーデンシネマは良い作品ばかりだったので
とても好きな映画館だったのですが、
非常に残念なことに昨年閉館してしまいました。
最近はミニシアターの閉館が相次いでいるので非常に残念です。
ちなみに女性的だと言われることは多いですが、
女性の気持ちは全然わかっていないともっぱらの評判です(笑)
投稿: ANDRE | 2012年8月22日 (水) 00時14分