「ビートキッズ」 風野潮
「ビートキッズ」 風野潮 講談社文庫
児童文学の大きな賞を3つ受賞した作品が文庫化。良質の児童文学が文庫化したものは面白いものがほとんどなので、ためらうことなく購入しました。
主人公の英二は転校してきたばかりの中学生。病気がちの母が妊娠しているにもかかわらず、父親は酒にギャンブルに金を使い、夜勤で家を空けていることがほとんど。ある日、彼はブラスバンド部に誘われて、仕方なしにのぞきに行くのだが、そこで、大ダイコをたたいた瞬間に、一気にその魅力に取り付かれてしまう。その吹奏楽部は、楽器店の息子で、様々な楽器を弾きこなし、成績もよく、見栄えも良い、七生という少年がなかば独裁者的に部活を取り仕切っているのだが、七生は英二の抜群のリズム感に目をつけ、やがて2人は親友になるのだが・・・という物語。
孤高の天才が登場する児童文学というと、「バッテリー」を思い出しますが、こちらのほうがもっとポップでドラマチックなストーリーです。ブラスバンド小説という側面だけではなくて、主人公と七生の家庭の問題が大きな核を占めていて、部活を通して知り合った2人の少年が様々な壁にぶつかりながら成長していく姿を描いています。途中のいくつかの展開があまりにあまりにドラマチックすぎて、ちょっと演出過剰な気もしましたが、基本的に、テンポも良いし、とても面白い作品でした。同じブラスバンドものでは、「楽隊のうざぎ」という作品もありますが、「楽隊~」のほうが、正統派で、こちらはもっと現代的な作品というイメージです。どちらも面白いですが。
さて、なかなか面白かったとは言いつつも気になる点も。これは「バッテリー」でも、森絵都作品でも感じたのですが、女性作家が描く中学男子の友情は、あまりにも理想化されすぎているように思います。キラキラと輝く友情と青春の物語なのはいいんですけど、男子中学生ってもっともっとバカでアホな面を沢山持ってます。その辺がちょっとリアリティが感じられないんですよねぇ。
この作品、続編も文庫化されたので、早速読んでみたいと思います。あと、映画化もされてるみたいですね。「ハングリーデイズ」ってこれがデビューだったんだね。今、知りました。
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