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2006年5月 9日 (火)

映画「マザーテレサ」

「マザーテレサ」 2003年 イタリア・イギリス

「ロミオとジュリエット」で有名なオリビア・ハッセーがマザーテレサという大役に挑んだ作品。彼女が映画に出てるのは、ジュリエットしか見たことがないので、そのイメージが強かったんですけど、すっかりオバサマになられていましたね。でも、綺麗でした。

1946年、カルカッタの修道院で教鞭をとっていたマザー・テレサは、貧しいものたちで溢れる街の現状を目の当たりにし、自分は修道院ではなく、カルカッタの街に出て、人々のために働こうと決心する。やがて、院外活動を認められた彼女は、孤児たちに勉強を教え、病気で行き倒れになっている人々を救う施設を作る。彼女の活動に賛同するものも増えていくなか、修道会の規律の中で活動を続けることに限界を感じた彼女は新しい教団を設立。反対者達、スキャンダル事件など様々な困難や問題に直面しながらも、神への強い信仰と、行動力が人々を動かし、やがては、教皇までをも動かす。マザーテレサの激動の半生を描く物語。

うーん、非常にもったいない映画です。オリビア・ハッセーの演技は、ジュリエットのときと変わらずにまっすぐに純粋で、まさに熱演。しかし、彼女の熱演むなしく、脚本と演出があまりにも単調な気がしました。基本的に、「マザーテレサ、何かの行動をする」→「周囲からの反対にあう」、「なんらかの問題が生じて行き詰る」→「誰かが助けてくれる」→「マザーテレサ、神に感謝する」というパターンが2時間の間延々と繰り返されるだけなのです。一つ一つのエピソードは興味深いものが多いのだけれど、本当に、年表のように箇条書きにそれぞれが綴られていくだけという印象を受けました。

さらに気になったのは、この映画では、マザー・テレサという人物の人間性が全く見えてきません。もっと彼女の心情に迫った内容を期待したのですが、どこか人間的ではない聖女のような描き方になっていて、それも残念でした。中年~晩年を描いた作品だったのですが、それよりも、少女時代から描いて、彼女が人々のためへの活動に目覚めるまでを描いたほうが、マザー・テレサという人物に迫った作品になったのではないでしょうか。

しかしながら、厳しい環境の下で、激しい反対と戦いながら、ただ貧しい人々のために生きた彼女の人生は、20世紀という時代にあって、本当に輝いていたのだろうなと改めて実感しました。これだけのことができた人というのは、かなりのカリスマ性やオーラのようなものを持った人だったんだろうなぁと思います。映画を見ていても、自分が正しいと思うことへの情熱の強さや(航空会社のシーンにいたっては割りと衝撃的)、神へのあふれんばかりの深い信仰心、そして、多くの人の心を動かす「何か」を持っていた人であることがありありと伝わってきました。一番印象に残ったエピソードはラストの3ドルの水のエピソードかな。こういう映画見終わると、少しだけ自分の身の回りを見直そうかなという気になります。

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