「イン・ザ・プール」 奥田英朗
「イン・ザ・プール」 奥田英朗 文春文庫
先ごろ第3作目が発表になり、第2作目の「空中ブランコ」が直木賞を受賞したシリーズ第1作目です。賞を受賞する前からちょっと気になっていて、先月文庫化したので、早速読んでみました。
伊良部総合病院の地下にある神経科に訪れる患者達を描く連作短編。様々な症状を持った患者達をかなりクセのある個性派医師の伊良部が出迎え、とても医者とは思えないような対応を繰り返すのだけれど、いつの間にか患者達の心の問題が解決されているという内容です。
最初のほうのエピソードよりも後半のほうが面白いものが多かったように思います。特に携帯依存症の高校生と、脅迫神経症のサラリーマンの話が面白かったですね。第2作目の「空中ブランコ」は直木賞もとっているので、恐らく、もっと洗練されて面白いエピソードが読めるのではないかと思うと、期待は高まりますね。
どのエピソードも徹底してユーモアに溢れた語り口調で、娯楽作品としてとても面白いのだけれど、根の部分では結構直球で真面目なメッセージを投げかけているように思います。伊良部は精神科医とはいえ、ただのエロデブオヤジ(←この設定なので、以前のドラマ化での阿部寛は完全にミスキャストだと思う。)なわけで、結局は、患者達が自分自身と正面から向き合わなければいけないのだけれど、そこをプライドが邪魔して、結果として色々な症状が出てしまう。真面目な人、自分に自身がある人ほどこういう症状はでやすいんだろうなぁと思います。そこを、アホ医者伊良部が見事に解きほぐすところが彼の才能なのだろうなと思います。しかし、これ、さすがに3冊目ともなるとパターン化してしまうのではないかと思うんだけれど、どうなんだろ。また文庫化を待ちつつゆっくりと追っていこうと思います。
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