映画「ゴーストワールド」
「ゴーストワールド」 2000年 アメリカ
先日見た「チアーズ!」とは対極をなす内容の女の子の青春を描く作品です。かなり面白かったです!今年見た映画の中でも1,2位を争うのでは?
主人公イーニドは、斜に構えて世の中を見る少女で、クラスメイトの輪から外れたところで親友のレベッカと一緒に毒舌大会を繰り広げていた。高校を卒業した夏、2人は一緒に暮らす約束をしつつも、次の進路もまだ決まらないまま、美術の補講を受けながら、ダラダラと近所のダイナーで時間をつぶしては、さえない男友達のジョシュをからかう日々を過ごしていた。ある日、2人は新聞の出会い欄を見て、からかってやろうと1人の男性をダイナーに呼び寄せて遠くから観察することに。店にやってきたのは、どうみても冴えない一人の中年男性で、2人は彼がどんな生活をしているのかが気になり、そのまま尾行を続け、やがて、イーニドは古いブルース音楽オタクのその中年男性シーモアのことが気になって仕方なくなってしまう。レベッカはそんな彼女に呆れ果て、一人でカフェでの働き口を見つけ新しい生活に向けて動き始める。どんどんすれ違っていくイーニドとレベッカ。果たしてイーニドは自分の進む道を見つけることができるのだろか・・・。という物語。
イーニドは、「チアーズ!」に出てくるような、いかにも青春してます!というような高校生を見れば「ガキっぽくて相手にしていられない」と思い、自分はクラスメイトたちとは違う「特別な存在」なのだと信じて疑わないような女の子。クラスメートも、流行の音楽も、「将来のために頑張ること」も、何もかもが子供っぽく感じるし、ダサい生き方にしか感じられず、いつも一歩上に立ったような視点で世の中を眺めては、あれやこれやと文句を言ったり、バカにしたり。しかし、彼女が一番ダサくて嫌いなのは恐らく自分自身。進路を決めなくてはいけないのも分かっているし、一緒に暮らそうといってくるレベッカは大切な友達だし、描いた絵が褒められれば嬉しいし、誰よりも可愛がってくれる父親のことも大好きに違いないのだけれど、そんな自分を受けれいれることができなくて、気づけば悪態ばかりついてしまう。頑張って髪型も色々と変えてみるし、色々な洋服もきてみる。音楽もジャンルを問わずかけてみる。一生懸命に「今」の自分を探す。これほどまでに不器用な少女をここまで正面から描いた作品もそう無いと思います。
結局、彼女は、シーモアもレベッカも自分の手の届く場所にいるときには素直に大好きな存在として認めることができるのだけれど、就職をして新しい生活を見つけたり、恋人を作ったりすると、皆が自分から遠く離れてしまうような気がしてしまい、さらに、不器用だから、ついつい悪態をついてしまって、さらに溝を深めてしまいます。だからといって、相手がぐっと距離を縮めてくると、今度は怖くなって突き放してしまったりして、そういう必死になって「自分」を探している姿が本当に印象深くて、彼女が部屋で号泣する場面は本当に切なくて、胸にぐっと迫ってきました。結局、これまでの人生で、強がって生きてこられたのは「学校」とか「女子高生」という枠の中にいたからで、いざ広い大海に出たときに、道を見失ってしまった、井の中の蛙なのだと思います。ラスト、突然、ファンタジー的にラストを迎えるのだけれど、果たして彼女の未来はどこにあるんでしょうか。いかようにでも判断できるラストシーンなのだけれど、自分はとてもとても悲しい結末のように感じました。あなたは魅力にあふれた女の子なんだよと声かをかけてあげたくなります。あなたはまだ18歳。ガキっぽくたって誰も文句は言わないんだよ。
この映画を見て、「わたしもああいう感じだったから、本当に共感できた~。この映画大好き!!」なんて言う人も沢山いるのではないかと思うんだけれど、きっとイーニドは、「あなたたちなんかと一緒にしないで!馬鹿らしい」と突っぱねて見せるんだろうなぁなんて思ってみたり。
ところで、この映画、最大の驚きは、ブラッド・レンフローが彼とは分からないくらいにダサい男に成長してしまったこと。かなりの衝撃です。「依頼人」→「マイ・フレンド・フォーエバー」→「セブンティーン」と確実にイケメン路線に成長してると思ったものの、最近あまり見なくなったのはそういう理由かぁと思ってみたり。あと、レベッカ役のスカーレット・ヨハンソンは、こういう普通の現代の女の子の役をするのは初めて見たのだけれど、なかなか可愛い感じなんですねー。ちょっと意外。
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