銀河ヒッチハイク・ガイド
小説「銀河ヒッチハイク・ガイド」&「宇宙の果てのレストラン」 河出文庫
TVドラマ「銀河ヒッチハイク・ガイド」 1980年 イギリス
映画「銀河ヒッチハイク・ガイド」 2005年 アメリカ
この一ヶ月くらいにわたって、小説版→ドラマ版→映画版と製作された順に制覇しました。本当は一番のオリジナルのラジオ版があるんですけど、残念ながらそちらは未聴。CD出てるみたいなので、そちらも聞いてみたいですね。全てのバージョンに原作者であるダグラス・アダムズがかかわっているので、どれもが「オリジナル」と呼べるわけですが、それぞれに微妙に違いがあるのが面白いです。
物語は、主人公アーサーの自宅の真上をバイパスが通過することになったということで、立ち退きを宣告され、強引に工事が開始されるのを必死になって食い止めるところから始まる。そんな折、突如地球上空に宇宙船が出現、曰く、銀河バイパスが通過することになったので、これから地球を破壊するとのこと。突如訪れた危機だったが、アーサーは実は宇宙人だった親友のフォードに連れられて、破壊直前に、宇宙船へのヒッチハイクに成功。こうして彼らの宇宙を舞台にした大冒険が始まる。その後、彼らは宇宙大統領ゼイフォードと彼女にナンパされた地球人の女性、そして、鬱ロボットのマーヴィンらと出会い、「人生、宇宙、すべての答え」とはなにか?という究極の問いを求める大冒険が始まるという物語。
シュールというか、いかにもイギリス的というか、独特の笑いのセンスが最初はあまり面白く感じられないのだけれど、いつの間にか、それにはまってしまっている自分がいました。全体的に、脱力系のネタが多くて、「これだけ盛り上げておいて、それだけ?」とか、「それだけのことに、こんなにエネルギー費やすの?」とか、「バカ全快なのに、無茶苦茶真剣!?」みたいな笑いが多い作品。それでいて、とても頭の良い人が作ったに違いない、よくできたプロット。これは、原作やドラマのほうが強く感じられることだけれど、普通にストーリーもよくできてます。「42」が出てくる場面や、その後の、「地球」に関しての展開はかなり面白かったです。
あと作品全体に漂う、鬱っぽい感じが特徴的。しかも後半に進めば進むほどエスカレートするんですけど、映画版では、ラストを軽くまとめてしまった感があって、ちょっと残念。原作2巻やドラマでのラストに出てくるどうしようもないほどの脱力感こそがこの作品の真骨頂だと思います。
地球が破壊され、ヴォゴン人の船から脱出し、ゼイフォードの船に拾われるまでの展開はどのバージョンでも同じですが、映画版はその後、オリジナルのエピソードを加えて、かなり違ったストーリー展開を見せます。終盤になって、再び原作やドラマと合流しそうになるんですけど、ラストはまるで違うものになっていました。映画版のラストは個人的には完全に「ナシ」です。原作序盤のやや冗長な部分をコンパクトにまとめて、テンポよく見せる映画版なんですけど、時間の制約があるためか、最後のほうが駆け足になってしまい、説明不足感も否めず、オリジナルエピソードも微妙に消化不良な印象です。原作読まないと良く分からないんじゃないかと思うんですけど、どうなんでしょうか。映画ではヴォゴン人が最後まで大活躍なのがかなり意外。あと、編みぐるみが無茶苦茶可愛いです。
映画版の、アーサー、「ラブ・アクチュアリー」にも出てましたけど、「The Office」にも出てましたね!!さらに、マーヴィンの声がアラン・リックマン。やたらと豪華です。あと、映画版、タイトルバックのBGMがドラマと同じでした!これは嬉しいサービス。そして、ドラマ版の正統な映画化だということのアピールでしょうね。映画オリジナルのオープニングのミュージカルは何気にツボ。
一方、ドラマ版です。こちらは、作られた時代が古いこともあって、いかにもセットな宇宙船やとってもチープな特撮や宇宙人&ロボットなんですけど、洗練された映画版よりも、このチープな雰囲気の方が作品の空気と合ってる様な気がしました。ドラマ版のほうが、時間かけてるし、原作の2巻目までストーリーをカバーしてるので(映画は1巻目のみ)、よりディープに作品世界にひたれます。原作の2巻目にあたる部分のほうがストーリーもネタも面白いですし。あと、無限不可能性ドライブの説明とかが映画ではかなり簡単にされてるのが、ドラマのほうではしっかり説明して、そして、小説同様に、「???」な感じになってましたね・・・。
あと、肝心の「ヒッチハイクガイド」なんですけど、映画のほうのCGを駆使して、作った映像もいいんですけど、ドラマの手書きアニメーションで作ったと思われる映像のほうが何気に良かったと思います。普通にこっちのほうが面白い。
小説版は全5巻が刊行中ということで、今3巻目を読んでるんですけど、全巻読破した時点でまた感想を書こうと思います。
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