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2006年7月18日 (火)

映画「ディア・ウェンディ」

「ディア・ウェンディ」 2005年 デンマーク・仏・独・伊

劇場公開時から気になっていた作品で、観にいきたいと思っているうちに公開が終了してしまい、最近、レンタル開始になったので早速見てみました。脚本は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー、主演は「リトル・ダンサー」のダンス少年ジェイミー・ベル。

舞台はアメリカのとある炭鉱の町。主人公の少年ディックは他の子供達同様に父親から工夫になることを望まれるが、自分には不向きな仕事にすぐに嫌気がさし、町の商店で働くようになる。そんなある日、ディックはかつて町の玩具店で購入した中古のおもちゃの銃が実は本物の銃であることを知る。やがてディックは同じ商店で働くスティーヴィーとともに銃の魅力にとりつかれるように。そして彼らは同じく炭鉱の町に馴染めずにいる玩具店の娘スーザン、足の不自由なフレディと苛められている弟フレディにも声をかけ、それぞれが自分の銃を持ち「ダンディーズ」という秘密結社を作る。彼らは自分の銃に名前を与え、その銃を自分たちの相棒として大切に扱い、平和主義を理念に掲げて、決して人を撃つのではなく、精神的なよりどころとして崇拝するようになっていく。ある日、1人のメンバーがこの会に加わり、そして、それが悲劇の幕開けとなるという物語。

非常に面白かったです。淡々としているようで、なぜか引き込まれてしまうメリハリの利いた展開とスタイリッシュな映像で最後まで一気に見ることができました。終盤、突如訪れる、衝撃的な事件が本当に衝撃的で、予想だにしていなかっただけに、ポカーンとしたまま、一気に最後のクライマックスを迎えるような感じでした。中盤までは、少年達の精神的な部分を丁寧に描いていくんですけど、クライマックスは目を覆いたくなるようなシーンの連続で、ラストに至ってはこの上なく切なく哀しい作品でした。しかし、恐らくハッピーエンドという、まさに「ダンサー・イン・ザ・ダーク」なラスト。そして、全ての物語が小さな空間だけで展開されるし、起こる出来事もありえないようなことが多くて、完全にファンタジーなのだけれど、妙に重いテーマをぶつけてくるところも「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と同じ。

平和主義を掲げ、武器を手にすることで、精神的に強くなっていく少年たちの危うさがとてもよく描かれていて、ラスト、自分達の動かした歯車にのまれてしまい、破滅を迎えていてく少年達の姿に、武器を手にすることの恐ろしさ、果ては、「平和」という目的のために武力行使に至る現代社会までを重ねる力作でした。特に、ラストの警官達の姿は見ていて背筋がぞっとする怖さを感じさせるあたりに、製作者たちの反アメリカ精神を強く感じました。しかも、そのようなシーンに至ってもなお、スタイリッシュな漫画的な映像演出を多用してくる部分がとても皮肉的。

アメリカの炭鉱の町の物語といえば、真っ先に思い浮かぶのは「遠い空の向こうに」。この作品も炭鉱の町に馴染めない若者達が主人公でしたが、似た題材を持ってきてここまで違う物語が作れるのかというのも面白いところ。しかも、被ってるキャストがいるのもちょっと面白い。

ちなみに、劇中でゾンビーズの曲がたくさん使われているのですが、それがまた、とても映像とマッチしていて、ゾンビーズが聞きたくなりました。題材の重さとは裏腹に全体にわたってセンスの良い映画です。

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コメント

ANDREさん、こんにちは。
TBとコメントありがとうございます。
思った以上にいい作品でした。
今回も、ANDREさんがわたしの言いたいことを全部言って下さっていて、
嬉しくなりました。
本当に、閉じられた小さな世界の、ちょっとした出来事と大きな不幸。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(『ドッグヴィル』もかな)な世界でしたね。
『遠い空の向こうに』の被ったキャストも面白かったです。

投稿: 悠雅 | 2006年11月 8日 (水) 11時04分

悠雅さん、コメントどうもありがとうございます!
同じような感想を持っている人がいるというのは嬉しいですよね♪

見てから何ヶ月か経つんですけど、
ふっと場面を思い出すことがあって、
心にいつまでも残っている作品です。

「ドッグ・ヴィル」も、ものすごく見たいのですが、
一度借りてきたのに、見る時間がなくて返してしまったことがあって
すぐにまた借りるのもなんだかなぁと思っているまま
いまだ見られずにいる作品です。

投稿: ANDRE | 2006年11月 9日 (木) 00時51分

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受信: 2006年11月 8日 (水) 10時53分

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