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2006年8月

2006年8月31日 (木)

DVD「スウィニー・トッド・イン・コンサート」

スティーヴン・ソンドハイム「スウィニー・トッド」イン・コンサート THE DEMON BARBER OF FLEET STREET    「スウィニー・トッド・イン・コンサート」

先日、ティム・バートンがジョニー・デップを主演に映画化することが報じられた、有名ミュージカルのDVDです。舞台での公演をそのまま収録したものではなくて、2001年に行われた、コンサート形式の舞台を収録したもの。

コンサート形式なので、指揮者とオーケストラが舞台上に並んでいて、「音楽」が主役なのですが、オケを取り巻くように、演技のための舞台も作られていて、最低限の小物を使って、実際に演技をしながら展開していくので、その点はシンプルな演出のミュージカル舞台といった感じです。たっぷり2時間、「音楽」をメインにこのミュージカルを味わえるとても面白いDVDでした。ちなみに、自分は舞台は見たことがないので、このDVDがこの作品の初見です。

ストーリーは、19世紀ロンドンが舞台で、妻に目をつけた判事の陰謀で、無実の罪で流刑になった床屋が主人公。長い年月の果てにロンドンに戻ってきた彼は、判事への復讐を企てます。そして、階下のミートパイを売る夫人と共謀して、次々と殺人を犯すことに。床屋に入った人々が姿を消し始めたその日から、新しい肉を使ったミートパイ屋さんは大繁盛。やがて彼らに訪れる哀しい結末とは・・・。という惨劇の物語ではあるものの、全体を包むトーンはとてもユーモラスなもので、扱う題材とのギャップがとても面白い作品でした。そういうメリハリがとてもよいですね。そして、ティム・バートン的世界観とも近いと思うので、映画化にかなり期待ですね。

このミュージカルの作詞作曲のソンドハイム氏は、「ウェスト・サイド・ストーリー」の作詩をした人だと言うのが最も一般的な理解なのでしょうが、この方、かなりの数のミュージカルを手がけていて、昨年、ブロードウェーで宮本氏が演出した「太平洋序曲」なんかもこの方の作品。でもって、この「スウィニー・トッド」は79年にトニー賞を7部門も受賞した代表作。BBC製作のミュージカルの100年を紐解くドキュメンタリの中でも、ミュージカル史のランドマークの一つとして取り上げられていました。

さて、僕は19世紀ロンドンがとても好きで、関連書籍も色々と読んだことがありますし、大学のときには授業で、1時間以上に及ぶ、「19世紀ロンドンの光と闇」というプレゼンをやったこともあります。ほとんど趣味だけで行った発表だったので、とても準備が楽しかったという記憶が。なので、19世紀ロンドンが舞台というだけで、とても嬉しいミュージカルです。出てくる地名にもいちいち反応してしまいました。

前書きがかなり長くなりましたが、このDVDのコンサート。かなり満足度が高かったです。非常に言葉多い歌が多かったり、複数の人が同時に違う歌詞を歌う場面も多くて、字幕が対応し切れないほどなのですが、複数の人が歌う=ハーモニーを味わえるということで、2人、3人で歌うような場面の音の作り方が非常に上手い!!コンサート形式の舞台ができるというだけあって、音楽が本当に素晴らしくて、合唱、ソロ、アンサンブルとそれぞれの良さが味わえる内容でした。

最後のほうは、なぜたかわからないけれど、なんだかとても感動してしまいました。

曲として好きだったのは次のとおり。

冒頭とラストで歌われる物語紹介の歌:すごい迫力。特にラストのは泣ける。

夫人とトッドが歌うミートパイの歌:かな残酷な内容をユーモアたっぷりに韻を踏ませて歌うシュールな歌。多分、これが一番好き。

判事、娘の恋人、トッドの3人がそれぞれの思いを歌い上げる曲:
とにかくアンサンブルが良い!!

夫人がトッドに自らの思いを歌う曲:哀しいラブソングでした。

これは一度、舞台で見てみたい作品ですねぇ。そういえば来年のお正月くらい国内でやるんだよね。ちょっと見たいかも。

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2006年8月28日 (月)

映画「センター・ステージ」

「センター・ステージ」 2000年 アメリカ

ニューヨークの名門バレエ団の練習生となった若者達を描く青春ダンスムービー。

主人公はアメリカン・バレエ・シアター(ABT)の練習生となる試験に合格し、両親の反対をよそにNYへとやってきた。ABTの付属のバレエ・スクールに入学したジョディは、そこでよい成績をおさめて、ABTへの入団を目指す仲間達と出会う。ダンスの腕はピカイチだけど、下町育ちで先生たちに反抗的な態度をとるエヴァ、9歳からここでレッスンを受けているエリートのモーリーンといった同じ夢を抱えるライバルでありよき仲間である友人達や、男子生徒たち、そして、皆のあこがれの世界トップの男性ダンサーであるクーパーらと過ごす日々を描く。

非常に面白い映画でした。

それぞれのキャラクターがとてもよく作られていて、誰でも出てくる登場人物の中に1人は共感できる人物がいるのではないでしょうか。それぞれが抱えているコンプレックスも様々で、ジョディは素質はあるけれどバレリーナには不向きな体格のために、どんなに練習をしてもだめだしを出され、エヴァは才能はあっても反抗的な態度をとってしまうために教授陣から良い目では見られず、モーリーンは才能はあっても母との関係に悩みストレスをかかえていたり。そして彼女らと関わる男性陣も皆魅力的なキャラクターばかりで、彼女らをあたたかく受け止めるナイスガイばかり。短い時間の作品ながらも「青春映画」の様々な醍醐味をたっぷりと詰め込んでいるのが心地よい作品です。皆でワイワイガヤガヤと大騒ぎする場面はかなり楽しそうでしたねー。

そしてそして、この映画の主役であるバレエシーンも見逃せません。この映画、2時間弱の作品なのに、舞台でのダンスシーンだけを合わせると30分くらいはあるのではないでしょうか。そこに、ダンスの練習シーンを合わせると恐らく、作品の半分はダンス場面でできています。しかし、この映画はこのダンスシーンが本当に素晴らしくて、下手をすれば退屈になりかねない舞台でのバレエのシーンも、そのダンスのうまさに釘付けになってしまって、あっという間でした。出演してる役者さんたちが、本当のABTのトップダンサーだったり、バレエ経験のある女優さんだったりするので、ダンスがうまいのは当然なのかもしれませんが、それでも、映画の中の劇中劇としては、かなりのレベルではないでしょうか。ラストは古典バレエではなくて、創作バレエなんですけど、ジャミロクワイなどが使われて、かなり斬新なバレエなのも見ていて面白かったですね。

イジメっぽい場面などもなく、終始爽やかに展開する青春ムービーで、サクサクと展開も良くて、レベルの高いダンスシーンも適度に挿入されるので、かなり満足度の高い作品でした。全体を通してダラダラしてる部分があまりなくて、派手な場面があるわけでもないのに、飽きさせないというのは、かなりバランスが良い作品なのだろうね。あまり知られてないのがもったいないくらいです。

ちなみに、ロシアからの留学生ダンサーとして出演しているひと、どこかで見覚えがあるなぁと思っていたら、なんとなんと、フィギュアスケートのイリア・クーリックじゃないですか!こんなところで映画デビューしてたんですねぇ。

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2006年8月24日 (木)

舞台「エドワード・シザーハンズ」

舞台「エドワード・シザーハンズ」@ゆうぽうと簡易保険ホール

ティム・バートン×ジョニー・デップの名作映画「シザーハンズ」を、マシュー・ボーン氏がダンスミュージカルにした舞台の来日公演に行って来ました。昨年の冬にロンドンで初演され絶賛された舞台が、こんなに早く日本で来日公演するというのは嬉しいものです。

ストーリーは弱冠の変更点はあるものの、大筋は映画のままです。この舞台は、台詞を全く使わずに、2時間、ダンスだけで全てのストーリーを展開するのですが、出演者たちの表現力が本当に素晴らしくて、台詞がないということは全く問題にならず、むしろ、言葉では伝わりにくい感情までをも、ダイレクトに見ているものに伝える内容だったと思います。これはもう本当に「すごい!」の一言。かなり感動しました。まぁ、自分は映画を見ているってのもあったので、見ていない人はストーリーを把握できないという可能性もありますが・・・。

コミカルな場面や、シリアスな場面、幻想的な場面が次々に現れるので、かなりメリハリのある舞台で、思わずクスリと笑ってしまったり、美しさにみとれてしまったり、ハラハラしたりと、もはや台詞のない劇であることを忘れてしまうほどに、物語に引き込まれてしまいました。このあたりの演出は本当にうまいですね。

この舞台、全部で6つの家族が出てきて、各4人×6家族=24人に主人公のエドワードが加わった25人が同時に舞台に登場する場面がかなりあります。このとき、この25人がそれぞれ自らのキャラクターを演じていて、舞台の隅から隅まで全てを使って、各自がまるで別の演技をします。たとえば、パーティのシーンで、中央でメインに踊るキャラクターがいるんですけど、それとは別に、後ろの隅の方で、勝手にお酒を飲んで酔ってる人がいたり、横の方にはケンカをはじめた2人を止めてる人がいたりと、メインのストーリーとは別のそれぞれのキャラクターの物語が舞台上ところせましと繰りひろげられていて、25人全てが見どころといっても過言ではない状態でした。

で、どこか一箇所ばかりを見ていると、同時進行で進むかなり多くの場面を見逃すことになり、見ている我々は舞台上をくまなく見なくてはいけません。つまり、一度だけでは、この舞台の全てを見るのは不可能ということですね。しかも、サブストーリー的な隅っこで演じられているコネタがなかなか面白いものが多いのも嬉しいところ。でも、この群集のシーン、結構何度も出てくる割には基本的には全部同じパターンで、最後のほうは、「またか」という雰囲気もありましたが・・・。あと、サブに気を取られすぎていると、メインの動きを見逃してしまって、気づくとストーリーが展開してたなんてところもありました・・・。この辺の見方は難しいですね。

こういうダンス劇やバレエでは、群舞というと、集団全体で1つとなって完全にそろって踊るところに美しさを見出すという印象がありましたが、この舞台では、皆が同じダンスをそろって行う際にも、各自がそれぞれのキャラクターの個性をあらわして、それぞれが微妙に異なった動きをしているのもとても面白かったですね。本当に25人全員が舞台の上で確固とした役割を担っている舞台でした。個人的には、黒づくめのクリスチャン一家(バートン色が強いキャラ)と艶やかな隣の家のおばさん、プロペラ帽子の少年なんかが面白かったですねー。ただ、こういう演出のために群舞による迫力が感じられるような場面はなくて、そういう意味では、全体にちょっとダラダラした印象もありましたが・・・。

舞台の演出はバートンの映画を忠実に再現したものではなくて、あくまでも映画は原作という感じになっていて、独特のバートン色が強いわけではないのですが、幻想的でとても美しい場面もたくさんありました。バートン独特の「悲哀さ」みたいなものは、そこまで演出しきれず、どうしても、幻想的な部分にスポットをあてざるをえないのは、ダンスミュージカルだからでしょうね。その点は、ちょいと物足りなかったのも事実。それでも、バートンとはまた違った「シザーハンズ」の世界を見ることができたのは嬉しかったですね。

そして、そして、最後にはサプライズの演出が!!!自分は前から2列目に座っていたのだけれど、その演出のせいで、大変な状態になってしまいました。しかし、この美しさは本当に言葉では言い表せませんね。素晴らしい感動をありがとう!!!と感動しつつも、頭がすごいことになってしまったし、臭いが割りと強かったりで、一瞬に素になってしまいましたが・・・。

さらにさらに、今日の舞台、なんと、終了後に、出演キャストによる特別トークショーが!!こんな日に当たるなんて本当にラッキーです!しかも、前から2列目ということで、出演者達のひそひそトークもちょっと聞こえたりしてなかなかよい感じ。今、感動の舞台を見せてくれた方々が素になって、我々、観客からの質問に答えてくれるという企画で、舞台のこと、マシュー・ボーン作品のことなど、色々な話をきけて、とても楽しかったんですけど、惜しむらしくは、通訳が邪魔!!!英語⇒通訳と、同じ内容を2度聞くのは割りと退屈だし、通訳は微妙に情報が足りないときがあるし、さらに、通訳する時間をカットすれば、同じ時間で倍の量の話が聞けると思うと、本当にもったいないですよ!彼らのイギリス英語、かなり聞きやすく喋ってくれたしさぁ。と、思ったのにも理由があって、通訳さんと出演者たちとのコミュニケーションがうまくいってなくて、もたつく場面が結構多かったんですよね。それがとても気になってしまいました。

マシュー・ボーンの舞台は以前から気にはなっていたものの、見るのは今回が初めて。で、見てみて、恐らく「くるみ割り人形」なんかはもっともっと華やかでダンスメインで面白いんだろうなぁなんて思いました。今後、来日する機会があれば、積極的にチェックしようと思います。

* * *

物語的な部分のお話。

見ていて気づいたんすけど、「シザーハンズ」って、いまさらながら、ハロウィン~クリスマスの物語なんですよね。これって、「ナイトメア~」と全く同じじゃないですか!!バートン氏、多分、この2つの行事が大好きなんろうなぁとしみじみ。

あと、この物語、「フランケン・ウィニー」とかなり似てますよね。このテーマもバートン氏のお気に入りなんだろうね。

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2006年8月21日 (月)

「古道具中野商店」 川上弘美

「古道具中野商店」 川上弘美 新潮社

先日「ニシノユキヒコ~」の感想を書いた際に、早く文庫になって欲しいという旨を書いたところ、単行本を持っているという友人がよかったらどうぞと貸してくださいました。そういえば、「センセイの鞄」も同じ友人が単行本を貸してくれたんですよね。どうもありがとうございました。

都内にある古道具屋を舞台に、店主の中野ハルオ、アルバイトのタケオとヒトミ、ハルオの姉マサヨと、お客さんたちとのやりとりをホンワカと描いた作品。主人公はヒトミで、彼女とタケオとのなんともいえない淡い関係や、女ぐせの悪いダメ中年男の中野さんなどの色恋ごとも、いつもながらの川上節でフワフワと描かれていきます。

骨董屋ではなく、古道具屋だという設定からしてとてもワクワクさせるのだけれど、個人経営の小さな商店で店主とアルバイト店員、そして常連さんたちがホンワカとした日々を過ごすという設定がとても気になって、絶対に読みたい!と思っていた本です。思ったとおりに、この設定と川上さんの文体との相性は抜群でした。

いつも思うことだけれど、川上さんは日本語の使い方が独特でユニークなのだけれど、それがとても上手いなぁと感じます。ちょっとした呼び名とか、口癖から、そのキャラクターの性格や個性、お互いの関係をサラリと表現してしまうあたりはいつもながら、とても上手です。今回はタケオの「~す」という口癖なんとも心地良かったです。これも普通だったら「~っす」としてしまうところを、単に「す」としてるのが良いですねー。あとはやっぱり、カタカナ使いの上手さは今回も特筆すべきものがありました。

これまでの作品との違いといえば、今回は割りと艶かしい色事を多く描いていました。色男を描いた「ニシノユキヒコ」以上になまなましい場面が多かったように思います。そして、この物語の男達は、ニシノユキヒコ並にダメ男ばかりでしたね。川上さんは、相当のダメ男萌えと見た。

とくにスゴイ面白いというわけではないのだけれど、読んでいて心地が良い作品で、まとめて一気に読むというよりかは、毎日1章ずつ、少しずつ読み進めていきたいタイプの作品です。このホンワカした空気をそのまま再現して作ったら良いドラマができるかもしれませんね。

個人的には川上作品は「うそばなし」度が高いもののほうが好きなので、この作品はものすごく気に入ったとかいうわけではないんですけど、一般受けは良さそうな作品だと思います。初期の頃みたいなうそ話をまた書いてくれないですかねぇ。まぁ、ニシノユキヒコのような男の存在や、中野商店のうような店の存在も非現実的といえば、そうなんですけど・・・。

ところで、この本、装丁がかなり良いですねー。装丁の良い本ってそれだけでポイント高いですよね。

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2006年8月12日 (土)

映画「ザスーラ」

「ザスーラ」 2005年 アメリカ

「ジュマンジ」という映画は、公開されたときから、とても大好きな作品で、その後もテレビ放映されてたりするのを、ちょこちょこと見ては、やっぱり面白いなぁと思う娯楽映画なのですが、同じ原作者による、続編とも言うべき作品が映画化されたということで、公開時からかなり気になっていた作品です。

ちなみに、ずーっと「ザ・スーラ」だと思っていたんですけど、「Zathura」という一単語でしたね。カタカナ表記は分かりにくいよー。

弟ダニーと兄ウォルターは4歳年の離れた兄弟は離婚した両親の家を姉のリサと3人で行ったり来たりしながら生活をしていた。ある日、父の家の地下室でダニーが古いボードゲームを発見し、それで遊び始める。早速ネジを巻いて、スロットを回すと、出た目の数字だけコマが進み、マスに止まると、一枚のカードが出てくる。そのカードには、流星群から避難せよと書かれており、突如、彼らのいたリビングに激しい流星群が。そして、ふと外を見ると、そこは、大宇宙。なにやら、出てきたカードに書かれた様々な困難を乗越えて、無事ゴールをしないことには、元の地球には帰れないということらしい。果たして兄弟は恐怖の双六を無事最後までやり遂げることができるのか!?という物語。いやはやまんま「ジュマンジ」ですねー。

この映画、主役の兄弟2人がケンカばかりしているのですが、自分もちょうど歳が4つ離れた兄がいるので、この兄弟関係にかなり親近感を覚えてしまい、自分の幼い頃の兄弟げんかのことなんかを思い出しながら、「そうそうこんな感じで意地はったりするんだよねぇ」なんて共感してしまいました。

ストーリーは、「ジュマンジ」が街中がパニックになるという作品だったのに対して、こちらは、家が宇宙空間に飛ばされてしまうという設定なので、最初から最後まで家の中だけで展開するというのが「宇宙」という割にはスケールが小さい感じです。

あと、よくよく考えてみるとつじつまが合わない気がする部分が実はチョコチョコあって、特典の監督の音声コメンタリーでも、「ここは矛盾する」と自ら話してたりするくらいなのですが、恐らく、この映画を見て、ほとんどの人が「?」と思うのが、途中で出てくる宇宙飛行士の下りでしょうね。しかし、自分の見解では、これはあくまで「ゲーム」なのであって、ファンタジーであり、彼の存在自体を現実の枠組みでとらえる必要など全くないのではないかと思うのです。その存在そのものがファンタジーみたいな。心が生んだ存在とか。ネットで感想を見てると、この点にかなり非難が集中していたんですけど、自分はそこまで気にならなかったり・・・。むしろ、序盤から最後まで無駄に使ったネタがほとんどなくて、伏線の張り方とその回収率の良さは特筆すべきものだったように思いました。これは「ジュマンジ」もそうでしたけど。

ストーリー的には中盤、宇宙人に家が襲われる部分があるのですが、そこで、その宇宙人を登場させるまでの見せ方がとてもうまかったというか、普通に怖かったです。この宇宙人、何気に「宇宙戦争」よりも怖かったかも。深いことを考えないでこういうハラハラドキドキに身を任せて見るのが、鑑賞のポイントでしょうね。

この映画、映像が素晴らしいのは言うまでもないのですが、DVDに収録されているメイキングがかなり面白くて、本編並みの長さがあるにもかかわらず、最後まで見たいと思わせる内容でした。CG全盛の現代にあって、極力CGは使わないという方針で撮影されたそうで、一見「どうせCGで処理したんでしょ?」みたいな場面も、実は巨大なセットや小道具を駆使した特殊撮影だったようで、CGはそのリアルな映像の引き立て役のような使い方だったようで、映像へのこだわりがなかなか興味深い作品でした。

「ジュマンジ」も面白いけれど、この映画も相当自分は楽しめました。恐らく、小学生、中学生くらいの自分だったら間違いなく大好きな映画になっていたのではないでしょうか。次々と起こる様々なできごとにワクワクしながら楽しめる名作キッズSFだと思います。

ちなみに、リサ役の子はパニック・ルームの女の子なんですね。いやぁ、大きくなりましたねぇ。

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2006年8月11日 (金)

「隠し部屋を査察して」 エリック・マコーマック

「隠し部屋を査察して」 エリック・マコーマック 創元推理文庫

帯に上弘美の推薦文があって、解説が柴田元幸というだけで購入を決めた1冊。柴田氏の翻訳がとりたてて好きな訳ではないけれど、柴田氏が紹介する作品は好きなものが多いのです。

短いものから長めの物まで20篇を収録した短編集。作者はカナダの作家さんです。作品の雰囲気は幻想短編集とでもいったところでしょうか。ダークなテイストが強い作風ですが、グロさはあまりなく、ちょっと奇妙な物語がたくさん収録されていました。

では気に入った作品をいくつか手短にコメント。

『隠し部屋を査察して』
表題作なだけあって、なかなか面白い作品です。6つの建物の地下室にある隠し部屋に幽閉されている人々を、年に1度、査察して回る査察官の物語。それぞれの部屋の住人達の不可思議な身の上が綴られていくのですが、とりわけ印象残ったのは、とある町の町長のエピソード。オチを含めて、こういうかなり好きです。

『窓辺のエックハート』
とある殺人事件を追うエックハート警部の物語。「ねじれた」という表現がとても適切な不思議でシュールな雰囲気のある一編。

『一本脚の男達』
とある炭鉱で起きた事故の結果、工夫の住人達が一本脚になったのを雑誌や新聞などの記事を並べて綴っていく物語。ちょっとグロイんですけど、インパクトの強い作品。

『エドワードとジョージナ』
この本では、2番目に好きな作品。町の人々との交流がほとんどない年老いた兄妹の物語。正反対の性格の2人は、他人とのかかわりをずっと避けてきたけれど、ある日、兄が亡くなり、やがて、この兄妹の隠された秘密が明らかになるという物語。切ないファンタジーでした。

『刈り跡』
他の作品にあるダークな要素がほとんど感じられない爽やかな一編。爽やかさの原因はラストによるところが多いのですが・・・。自分はこれが1番面白かったです。アメリカを発端に、突如現れた「刈り跡」が地球を一周しながら、世界中に深い溝を刻んでいくという物語。溝に飲まれたモノは姿を消し、建物も跡形もなくなくなっていくというちょっとした恐怖のできごとを、結構明るい感じで書いている作品です。日本の部分が割りと長いのが興味深いところです。

『祭り』
とある町でひらかれた3日間の不思議な祭りを描く物語。体育館での描写が衝撃的。

『町の長い1日』
とある町の1日を描きながら色々な住民の不可思議なエピソードを綴っていく作品。「隠し部屋~」の系列ですが、この手の作品が本当に上手です。

『双子』
分裂できずに1つの体に2人が存在するという特殊な双子を描く作品。なかなか怖い作品でした。

この作者の作品を読んでいて思い浮かんだのが小田扉の「江豆町」という連作短編の漫画。いくつかの作品の空気が本当によく似ています。シュールでちょっと不思議なSFファンタジィを割と日常のなかにくるんで描くというスタイルがそう思わせたのかもしれません。

あとは、この短編集をひとことで言うならば、ダークな想像力の博物館みたいな感じでしょうか。

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2006年8月 8日 (火)

映画「スパングリッシュ」

「スパングリッシシュ」 2005年 アメリカ

今年のはじめくらいに劇場公開されていて、気になっていた作品。期待通りに面白かったです!

主人公フロールは、夫と別れ、幼い娘クリスティーナの将来のことなどを考えて、メキシコから不法入国してアメリカへ。ヒスパニック系が住民の約半数を占めるLAへとやってくる。ヒスパニック系住民の居住地区で、昼夜問わずに働いていた彼女だが、思春期が近づく娘を夜1人にはできないということで、給料の高い昼間の仕事を探し、初めて、スペイン語圏から外の世界へと飛び出し、とある白人家庭でハウスキーパーの職を得る。そこは、年老いた有名ジャズシンガーの祖母、有名レストランのシェフの父ジョン、元キャリアウーマンの母デボラに2人の子供達という家族構成で、夏には豪華な貸し別荘を借りような上流階級の世界。英語を全く話すことのできないフロールであったが、家族に暖かく迎え入れられ、仕事に励むことになるが・・・。フロールとクリスティーナの移民家族の母娘の問題、一見幸せそうな上流白人家庭の抱える問題、そして、アメリカとメキシコの文化の違いなどを、名作「恋愛小説家」の監督・脚本のジェームズ・ブルックスが、コメディ&ハートフルに描いた物語。

ところどころにあるコメディシーンはとにかくセンスが良くて、大笑い。これは、「恋愛小説家」なんかと同じですね。

様々な要素を盛り込んだために、2時間越えの大作になっていますが、最後まで十分楽しめる内容でした。DVDの特典映像として、かなり多くの未公開シーンが収録されているので、これでもかなり内容を絞ったということなのでしょう。

とても行動的で、自己中心的な母親なのだけれど、時に、自分でも自分についていけなくなってしまって、半ばパニック状態に陥る女性というデボラのキャラクターがとにかく強烈でした。彼女を暖かく包み込む、祖母と夫がとても印象に残る映画です。特にラスト近くの、祖母の熱演はかなりのインパクト。

この中ではいろいろな家庭問題を扱っていますが、デボラと娘の関係を描く部分はとりわけ印象に残りました。自分の娘のことを愛してはいるのだけれど、その肥満体型がどうしても許せずに、厳しく接してしまい、そんなところに、スタイル良し、顔良し、頭良しのフロールの娘クリスティーナが現れ、これぞ理想の娘と思い、デボラはクリスティーナをこれぞとばかりに可愛がる。一方で、自分自身にコンプレックスを持つ実の娘バーニーは、それにショックを受けるが、母に対して直に自分の気持ちを伝えることができない。そこに、父親が全力の愛で彼女を暖かく受け止めるという流れがとても良かったですね。バーニーのキャラもとても良かったなぁ。

この映画、基本的に女性キャラがそれぞれでしっかりと個性を確立しているのがとても良いです。

この映画の最大のテーマの一つが移民の問題。フロールは自分の娘がアメリカ的になっていく姿がどうしても受け入れられず、彼女の教育に対して、強い信念を持って、接しています。こういう移民の家族の1世、2世の問題というのは、「ジョイ・ラック・クラブ」などでも非常によく描かれているテーマで、大学の学部時代に、学科の授業でアメリカ移民をテーマにした際に、「ジョイ~」を資料にしたのを思い出しました。今だったら、この「スパングリッシュ」は絶好の教材でしょうね。この映画は他にも、現代アメリカ家族の描写、言葉の壁、価値観の違いなど様々な問題をコンパクトにまとめていて、教材的価値が非常に高いように思います。それでいて、しっかりとコメディなのが良いです。

タイトルからして、異文化交流のようなものを強く感じさせる映画ではありますが、満たされない思いを抱え悩んだり、相手を思って行った行為が結果として偽善になってしまったり、つい感情的になってしまったり、家族を愛したり、という言葉や文化の壁を乗越える普遍のテーマも数多く現れて、それがまた、「異文化」の鏡を通すことで、強く感じられたように思います。

言葉が通じていても、相手を理解しようとしなければ、深い溝ができてしまうし、逆に、言葉が分からなくても相手を理解しようと努力することで、深い交流が生まれるんだなぁというのをフロールとデボラという対照的な2人を通して、改めて実感させられました。

英語で見てもスペイン語部分には英語字幕は出ませんし、日本語字幕にしても、当然、スペイン語部分には字幕が出ない作品なのですが、自分はたまたま、ほんの少しだけスペイン語も分かるので、時折、理解できる箇所があり、そういう場面はより深く楽しめたように思います。もっとスペイン語分かったら、相当面白いんだろうなぁと思います。

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2006年8月 6日 (日)

「ニシノユキヒコの恋と冒険」 川上弘美

「ニシノユキヒコの恋と冒険」 川上弘美 新潮文庫

川上弘美の作品は、「蛇を踏む」を読んで以来、すっかりはまってしまい、文庫化したものは全て読んでいます。で、先月末に「ニシノユキヒコ~」が文庫化されたということで、早速読んでみました。文庫化といえば、「古道具中野商店」が早く読みたい!!

ニシノユキヒコという1人の男性を彼とかかわった10人の女性達が回想するという形式で書かれた連作短編集。全10話で全て語り手が変わり、ニシノユキヒコ氏の中学時代から死までが描かれていきます。

このニシノユキヒコという男、見かけも良いし、仕事もできて、そして、どうしようもなく女ぐせが悪い。しかし、だからといって、性格が悪いわけではなく、ただひたすら、まっすぐで優しい男なんですね。プレイボーイとは言うものの、光源氏のようなイメージではなく、有能ながらもちょっとダメ男っぽい雰囲気が感じられる人間で、恐らく、女性の「萌え」を刺激する要素があるキャラクターなんだろうなぁと思いました。で、話全体が、とても女性視点が強くて、個人的には、ニシノユキヒコのキャラにもそれほど感情移入できなかったので、いつもの川上調は楽しめたものの、物語自体にはそこまではまれませんでした。

面白かった作品は、中学時代を描く「草の中」が個人的にはダントツで良かったです。西野くんもまだまだ「青い」感じがほほえましいし。あとは、最終話で、この連作短編集全体が、かなり引き締まってました。タダひたすらに愛を求めて求めて、それでも上手くいかないニシノユキヒコの心に秘めた哀しみの原点に迫る内容で、 とても切なくなる話でした。

1人の男のことを女性達が次々に回想していくというスタイルはなかなか面白くて、このまま、連ドラとかにしても面白いんじゃないかなぁなんて思ってみたり。

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2006年8月 5日 (土)

映画「シムソンズ」

「シムソンズ」 2006年 日本

実はカーリング好きのANDREです。長野オリンピック以来、冬の五輪の最大の楽しみはカーリングを観戦すること。一度見始めると、2時間ほどの長い試合時間も全く気にならないくらいにハマってしまいます。自分でもやってみたい!!とずっと思っているのですが、関東在住の身としては、気軽にはじめられる環境が整っていないため、夢叶わなずの状態。

映画の舞台は北海道の常呂町。主人公の女子高生、伊藤和子は、将来の目標が見つからず、悶々とした日々を過ごしていた。常呂町は町をあげてカーリングを行っていて、ある日、町出身のカーリング選手で、町民の憧れの"真人様"が帰ってきているという情報を得て、町のカーリング場を訪れる。その開場で、真人に「カーリングのチームを作ってみないか?」と声をかけられた和子は、憧れの真人様と一緒にカーリングができると、早速友達を集めて、チームを結成。集めたメンバー3人は和子を含めて全くの素人。みなで練習場に行き、真人が紹介するという最後のメンバーを待っていると、現れたのは、クラスメートの美希。そして、コーチは軽い感じの怪しげな男。こうして、カーリングチーム「シムソンズ」が結成された。彼女達が選手権を目指してがんばる姿を描く青春映画。

シムソンズは実在するチームで、ソルトレーク五輪の日本代表に選ばれたチーム。その後、シムソンズメンバーだった小野寺さんと林さんがトリノでチーム青森として、日本中にカーリングフィーバーを起こしたのは記憶に新しいところです。

カーリングという題材に馴染みの無い人のために、ルールの解説などを、上手くストーリーに取り入れて、予備知識がなくても楽しめるようにしているのはとても好感。そして、カーリングで「最初の1点」をとるまでの、苦労をとても丁寧に描いて、そこから終盤のクライマックスまでを一気に見せるメリハリの良い展開も非常に良かった!あっという間の2時間弱でした。自分がカーリング好きということを引いても、かなりよくできた映画ではないでしょうか。

高校生の青春モノといえば、大ヒット作「ウォーターボーイズ」や「スウィング・ガール」を思い浮かべますが、この映画の特徴は、ただひたすらに「まっすぐ」であることだと思いました。「WB」や「SG」のようにコメディに走りすぎる場面はなく、ただひたすらに、カーリングにハマっていく少女達の姿を描いていました。「WB」の路線が悪いとは言わないけれど、この映画ではこのまっすぐさが心にすっと染み込んできて、主人公達と一緒になって、一喜一憂しながら、成長していく感じを味わえるのは青春映画として、とてもよくできているのではないでしょうか。

個人的に嬉しかったのは、主人公の加藤ローサはちょっと違ったのだけれど、他の3人が、実際のシムソンズのメンバーたちに雰囲気が似ているキャスティングだったこと。特に、林田さんと小野さんの友情を描く場面では、トリノ五輪での小野寺と林の絆を感じさせて、ぐっと胸に迫るものがありましたね。また、ソルトレークに出場した事実を知っているだけに、一つ一つのエピソードもその後の彼女達の活躍の第一歩として見る事で、感動が何倍にもアップしたように感じました。「私を見つけてくれてありがとう」という場面も、その後の小野寺さんの活躍がダブってしまうと、超感動ですね。かなりフィクションになっているとは分かっていても、ここは、役をダブらせた方が感動もアップなので、あえて、そういう見方をしてみたり。真人役は、長野五輪に出ていた敦賀さんがモデルですよね。カーリング好きとしては、嬉しい映画です。

スポーツであれ、何であれ、この映画のように、「心の底から楽しんでやる」ということはとても重要な要素だと思います。本当に楽しんでカーリングをやっている主人公達の姿がとても印象的でしたねー。

ますますカーリングが好きになる、そんな映画でしたねー。とにかく爽やかで、まっすぐで、見ていて気持ちの良い映画なので、かなりオススメです!

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2006年8月 4日 (金)

「マリコ/マリキータ」 池澤夏樹

「マリコ/マリキータ」 池澤夏樹 角川文庫

たまに無性に読みたくなる池澤作品。今回は短編集です。

全部5作収録されているのですが、面白かったのは、表題作の「マリコ/マリキータ」、「梯子の森と滑空する兄」、「帰ってきた男」ですね。他の2作も面白くて、レベルの高い短編集でした。

「マリコ/マリキータ」は本当に爽やかな作品で、夏の今読むのにはぴったしの1作でした。研究で訪れた南の島で、たくましく自由に生きる日本人女性と出会う大学教授の話。マリコさんのキャラクターがとてもよくて、読後感も爽やかでした。目新しい物語ではないのだけれど、しっかりと心をつかまれる不思議な魅力のある作品です。

「梯子の森と滑空する兄」は、歯医者の待合室で雑誌を見ていたら、長い間音信不通だった兄が記事になっていて、兄との思い出を回想するという内容。これも、兄のキャラクターの描き方が良かったですね。↑の作品とあわせて、池澤氏の描く自由人はとても魅力的です。

「帰ってきた男」はとても不思議な物語。遺跡で、ある「音楽」を耳にし、世界の真理を悟ってしまった2人の男の話。とてもスピリチュアルなテーマを取り上げていてるのだけれど、小難しさや、押し付けがましさのない語り口で、「スティルライフ」を読んだときのような、不思議な感覚になる作品でした。「個」とは?「人間」とは?と問い詰めていく中で、2人の中に徐々に生まれる考え方の違いがまた面白く、ラストの決断まで一気に読ませる作品でした。

やっぱ池澤夏樹はいいなぁと思う短編集でした。

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映画「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」

「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」 2005年 イギリス・アメリカ

ハリポタ4作目です。3作目までは原書で追いかけていたのですが、4作目以降はあまりの分厚さにおののいてしまい、原作は一切読んでいません。邦訳版は上下分冊なのに、原書は無理矢理1冊にしている感じで、新作が出るたびに、辞書のような厚さを見て、「あー、また長くなったんだなぁ」と思っています。

ハリーはいつもの仲間達ともに、Quidditchのワールドカップを観に行くが、会場に闇のもの、デスイーターが現れ、混乱の中、ハリーは闇の紋章を持つ男を目撃。その後、皆は無事、帰還して、新学期が始まる。今年度のホグワーツのメインイベントは、3大魔法学校の代表選手たちが競い合う試合がホグワーツ主催で開かれること。そして、各校の3人の代表に加えて、なぜかハリーが4人目の特別選手として参加することに。様々な難関を乗越えて、競技会で優勝するのは果たして誰なのか?そして、ついに闇の「あの人」の復活の時が迫る!!これに加えて、いつも通りの、授業風景や、クリスマスのダンスパーティの様子などの学園ドラマも描かれるというストーリー。

で、「炎のゴブレット」って何か重要な役目を持って出てきましたっけ・・・。てのが一番の感想。

長大な原作を無理矢理2時間半に詰め込んだのが、原作を読んでいなくてもひしひしと感じられるほどの展開の速さ。恐らく原作には登場したであろう、Dursleyさんたちはもはや出番すらありませんでしたね。でも、おかげで、これでもかというくらいにテンポが良かったので、2時間半の長さも割りと気にならないというのは有りましたけどね。

原作をカットするのは仕方ないとは思います。しかし、映画を観ていて、期待していた場面がごっそりカットされるというのは、いかがなものでしょうか。ワールドカップの場面では、試合前の様子をあれだけの映像で盛り上げて見せておきながら、試合シーンは1つもないとか(Wカップそのものが登場人物紹介のために仕方なく挿入したとしか思えない)、ドラゴンのとの戦いを期待させておいて、いきなりハリーの番ってのは、やっぱり作り方として、あまり上手ではないように思いました。あと、ロンとのケンカがあまりにも唐突に起こった上に、あまりにも唐突に終わるので、ちょっと意味不明でしたね。あのシーンで自分はフクロウじゃないと怒るハーマイオニーは面白かったですけど・・・。

1作目、2作目のクリス・コロンバス監督は、キッズ・ムービーの名手だけあって、無難にエンターテイメントに仕上げましたが、3作目の「アズカバン」では、一転、「雰囲気」重視の重厚な映像美を楽しめる、思い切った方向転換で、監督が代わることによって、それぞれの持ち味の良さを楽しめる、「エイリアン」のようなシリーズになるのではないかという期待を持ちました。で、今作では、「フォー・ウェディング」や「モナリザ・スマイル」のマイク・ニューウェルが監督ということで、どのような仕上がりになるのか、かなり期待してました。

遠くから引いた映像が多いのは。前作と同様ですが、前作では暗く思いイギリス的空気が漂う映像だったのに対して、今回は、「ファンタジー映画」的な映像が多かったと思います。そして、監督お得意の人間ドラマを思う存分に楽しめた、舞踏会の場面は非常に楽しめる仕上がりになっていて、大満足でした。むしろ、この舞踏会をメインにすえて、ずっとやってても良いと思うくらいです。全体的に、人間関係を描くようなエピソードを重視して作られていたようにも感じましたね。それだけに、このテンポの速さでは、人間ドラマを描くにはあまりにも速すぎて、やや消化不良気味のエピソードも多かったのが残念。やっぱり、「詰め込みすぎ」という結論に落ち着きますね。一方で、競技会のシーンはちょっと、物足りないというのが本音。メインのはずなのに、いまいち迫力や緊張感がありませんでした。

あと、今回、いただけなかった点として、人が死にすぎるというのがあります。これは、子供向けファンタジーとしてはどうなのかと。しかもその死が主人公の成長に不可欠な要素とはとても思えないので、もう少し考慮して欲しかったですね。まぁ、原作がそうなんだったら、映画はどうしようもないですけど。

そうそう、ロンの双子の兄たちってあんなに目立つキャラでしたっけ?

さらにさらに、前作のエンドクレジットはあんなに評判が良かったのに、今回は、特に演出もなく、ちょっとつまらなかったのもポイントダウンですね。

総じて、「アズカバン」はこのシリーズ中、屈指の完成度だったということですかね。

さてさて、レイフ・ファインズが登場して、次回作にも微妙に期待がかかるわけですが、次回はどんな感じになってるんですかね。何だかんだいって、次回も見ることになるかと思います。だって、イギリス映画好きとしては、これだけの豪華キャスト映画は見逃せないですよ!!

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2006年8月 1日 (火)

06年6月7月に読んだコミックから

CDにならってコミックもこの形式で取り上げることにしました。

①「不思議な少年 5巻」 山下和美

もはや敵なしの傑作ですね。全人類必読と言いたいくらいに良い。

今回は、短めの話が多かったものの、作品のクオリティの高さは相変わらず。何がすごいって、1話完結のどの話をとっても単品で映画化可能であろう、奥深さがあるところです。5巻目ということで、ややマンネリを感じさせつつも、「少年」そのものに焦点をあてるような描き方も増えてきて、今後もますます目が離せませんね。

それぞれのエピソードのプチ感想。

「フランツ・カウフマン博士」:山下さんの描く老教授はいつもキャラが良い。この作品で目指すことが明確に現れた名台詞が良かった!

「40歳のOL 村山香」:ビジュアル的に「トワイライトゾーン」な感じでした。

「ルキ・イスカリオテ」:恐らく5巻の目玉作品。とにかく上手。100ページにも満たないとは思えない濃さ。

「夫・恭平、妻・瑠璃子」:短いながらも、この作品のテーマをよくとらえた小品。

「昭とたけしとヨシ坊と」:なんだか泣ける内容でした。今回では一番好きかなぁ。

②「大使閣下の料理人 25巻」 西村ミツル・かわすみひろし

この巻でついに完結。ずっと買ってたからちょっと淋しいですね。

個人的には初期のベトナム編のほうが好きでした。この作品は、単なるグルメ漫画にとどまらず、外交問題をそこに絡めてくるのが新鮮だったのですが、初期のベトナム編では、割と一般的なアジアの問題を描くことが多かったり、色々な国の料理や、その国の抱える問題を描くことが多かったのですが、最近は、そのときの外交の時事問題をとりあげるようになってしまい、グルメ部分よりも、外交部分のほうが前面に出てくるようになってしまったのがちょっと残念でした。

逆に時事問題を描き続ければ、永遠に続くことも可能だったのでしょうが、引き際としては丁度良かったのかもしれません。異色のグルメ漫画で個人的には結構好きな作品でした。今は文庫版も刊行されてるので、手に取りやすくなってると思います。

③「Death Note 12」  大場つぐみ・小畑健

もはや説明不要の有名作品。こちらもついに完結です。最後の終わらせ方は期待が高まっていただけに、ちょっと拍子抜け感もあったけれど、この終わり方だと、第1部の最後と対になるので、やや不満のあった第2部も見事に消化された形だと思いました。人気絶頂の今、連載終了を受け入れたのは、この連載誌の性格上、かなりの英断だったと思います。

<ネタバレじゃないけど、自分の思うベストのラスト(反転してください)>

ラストで月が、パニックを起こすのはやっぱり今までの流れからいくと、あまり見たくない姿ですし、一晩でノートを偽造するなどのやや無茶な展開もありました。面白い作品ではあったものの、自分ならこういうラストが良かった!という勝手な自己満足最終回を考えたので、メモ程度で、ちょっと書いてみます。

やはり、最後の対決でも月は勝ってほしかったですね。で、皆がやられて、1人微笑む月が突如、そこで心臓発作を起こして倒れる。実は、彼の寿命がそのときまでだったというオチです。しかも死因は偶然にも心臓発作。それまで散々人の運命を弄んできた彼も、自らの寿命という運命には逆らえず、死に行く彼を見てリュークがその運命の皮肉さを「面白い」と笑い飛ばすという終わり方はいかがでしょうか。

④ 「虹ヶ原 ホログラフ」 浅野いにお

現在まで発売されてる浅野作品は全て読んでいますが、一番最初の「素晴らしい世界」がデビュー作とは思えないほどのクオリティの高さを持った傑作で、その後の作品は、それと比べてしまうとどうしても、物足りないと感じていました。

で、発売になった新作です。いやはや、「素晴らしい世界」に迫る大作でした。しかし、内容が難しいです。1話ごとに過去と現在を交互に描いていって、とある小学校の同級生達をとりまく、出来事を綴っていった作品。伏線の張り方が見事で、最初の数話は何がなんだかよく分からない部分も多いのですが、ストーリーが進むにつれ、過去サイド、現在サイドの両方から、それぞれのストーリーのパズルが完成していくような構成は本当にお見事でした。しかし、逆に言えば、その構成の複雑さから、一度読んだだけでは、ども釈然としない部分が多いのも事実で、何度か繰り返して読むことで全体がつながってくるような作品でした。

相変わらず、絵は上手くて読みやすいのだけれど、ちょいと凝った演出が意図的になされていて、それが何度も繰り返されるのは、ちょっと、どうかなとも思います。下手をすれば作者の自己満足一歩手前くらいまで、演出に凝った作品で、それがまたストーリー構成の複雑さからくる難解さを増幅しているようにも感じました。この作品は何だか分からないけど、スゴイんだぞ!っていうのを必死に演出してるような感じがしてしまうんですよね。これまでもその傾向はったけれど、今回は特に強かった気がします。

これまでの浅野作品は、斜に構えた若者達を描いて、人生の暗い面を描きつつも、最後には、何か暖かい気持ちになれるような傾向が強かったのですが、今回は、最後までどよ~んと重いテーマを扱っていて、正直、読後感はあまり良くありません。読んでいて気づきましが、浅野作品って、子供は皆大人びているのに、大人は皆子供っぽいですよね。「大人びた子供」の状態から成長しきれてない大人を描くことが多いなぁと。

暗い作品ではあるけれど、読ませる力のある面白い作品でした。でも個人的には「素晴らしい世界」のほうが好きかなぁ。

⑤「月館の殺人 下」 綾辻行人・佐々木倫子

ほんわかした佐々木さんのギャグのテイストに、ミステリー作家の綾辻氏が原作ということで、上巻では、はっきりいって方向性が見えなかったんですけど、最後まで読むと、佐々木色をしっかりと出しつつも割としっかりした(?)ミステリになっていて、なかなか面白い物語でした。映画化しても面白いかもね。

これ読むと、無性に「鉄子の旅」が読みたくなりますね。あとがきによると、担当さんが同じ人だったみたいです。

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