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2006年8月 8日 (火)

映画「スパングリッシュ」

「スパングリッシシュ」 2005年 アメリカ

今年のはじめくらいに劇場公開されていて、気になっていた作品。期待通りに面白かったです!

主人公フロールは、夫と別れ、幼い娘クリスティーナの将来のことなどを考えて、メキシコから不法入国してアメリカへ。ヒスパニック系が住民の約半数を占めるLAへとやってくる。ヒスパニック系住民の居住地区で、昼夜問わずに働いていた彼女だが、思春期が近づく娘を夜1人にはできないということで、給料の高い昼間の仕事を探し、初めて、スペイン語圏から外の世界へと飛び出し、とある白人家庭でハウスキーパーの職を得る。そこは、年老いた有名ジャズシンガーの祖母、有名レストランのシェフの父ジョン、元キャリアウーマンの母デボラに2人の子供達という家族構成で、夏には豪華な貸し別荘を借りような上流階級の世界。英語を全く話すことのできないフロールであったが、家族に暖かく迎え入れられ、仕事に励むことになるが・・・。フロールとクリスティーナの移民家族の母娘の問題、一見幸せそうな上流白人家庭の抱える問題、そして、アメリカとメキシコの文化の違いなどを、名作「恋愛小説家」の監督・脚本のジェームズ・ブルックスが、コメディ&ハートフルに描いた物語。

ところどころにあるコメディシーンはとにかくセンスが良くて、大笑い。これは、「恋愛小説家」なんかと同じですね。

様々な要素を盛り込んだために、2時間越えの大作になっていますが、最後まで十分楽しめる内容でした。DVDの特典映像として、かなり多くの未公開シーンが収録されているので、これでもかなり内容を絞ったということなのでしょう。

とても行動的で、自己中心的な母親なのだけれど、時に、自分でも自分についていけなくなってしまって、半ばパニック状態に陥る女性というデボラのキャラクターがとにかく強烈でした。彼女を暖かく包み込む、祖母と夫がとても印象に残る映画です。特にラスト近くの、祖母の熱演はかなりのインパクト。

この中ではいろいろな家庭問題を扱っていますが、デボラと娘の関係を描く部分はとりわけ印象に残りました。自分の娘のことを愛してはいるのだけれど、その肥満体型がどうしても許せずに、厳しく接してしまい、そんなところに、スタイル良し、顔良し、頭良しのフロールの娘クリスティーナが現れ、これぞ理想の娘と思い、デボラはクリスティーナをこれぞとばかりに可愛がる。一方で、自分自身にコンプレックスを持つ実の娘バーニーは、それにショックを受けるが、母に対して直に自分の気持ちを伝えることができない。そこに、父親が全力の愛で彼女を暖かく受け止めるという流れがとても良かったですね。バーニーのキャラもとても良かったなぁ。

この映画、基本的に女性キャラがそれぞれでしっかりと個性を確立しているのがとても良いです。

この映画の最大のテーマの一つが移民の問題。フロールは自分の娘がアメリカ的になっていく姿がどうしても受け入れられず、彼女の教育に対して、強い信念を持って、接しています。こういう移民の家族の1世、2世の問題というのは、「ジョイ・ラック・クラブ」などでも非常によく描かれているテーマで、大学の学部時代に、学科の授業でアメリカ移民をテーマにした際に、「ジョイ~」を資料にしたのを思い出しました。今だったら、この「スパングリッシュ」は絶好の教材でしょうね。この映画は他にも、現代アメリカ家族の描写、言葉の壁、価値観の違いなど様々な問題をコンパクトにまとめていて、教材的価値が非常に高いように思います。それでいて、しっかりとコメディなのが良いです。

タイトルからして、異文化交流のようなものを強く感じさせる映画ではありますが、満たされない思いを抱え悩んだり、相手を思って行った行為が結果として偽善になってしまったり、つい感情的になってしまったり、家族を愛したり、という言葉や文化の壁を乗越える普遍のテーマも数多く現れて、それがまた、「異文化」の鏡を通すことで、強く感じられたように思います。

言葉が通じていても、相手を理解しようとしなければ、深い溝ができてしまうし、逆に、言葉が分からなくても相手を理解しようと努力することで、深い交流が生まれるんだなぁというのをフロールとデボラという対照的な2人を通して、改めて実感させられました。

英語で見てもスペイン語部分には英語字幕は出ませんし、日本語字幕にしても、当然、スペイン語部分には字幕が出ない作品なのですが、自分はたまたま、ほんの少しだけスペイン語も分かるので、時折、理解できる箇所があり、そういう場面はより深く楽しめたように思います。もっとスペイン語分かったら、相当面白いんだろうなぁと思います。

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