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2006年8月 6日 (日)

「ニシノユキヒコの恋と冒険」 川上弘美

「ニシノユキヒコの恋と冒険」 川上弘美 新潮文庫

川上弘美の作品は、「蛇を踏む」を読んで以来、すっかりはまってしまい、文庫化したものは全て読んでいます。で、先月末に「ニシノユキヒコ~」が文庫化されたということで、早速読んでみました。文庫化といえば、「古道具中野商店」が早く読みたい!!

ニシノユキヒコという1人の男性を彼とかかわった10人の女性達が回想するという形式で書かれた連作短編集。全10話で全て語り手が変わり、ニシノユキヒコ氏の中学時代から死までが描かれていきます。

このニシノユキヒコという男、見かけも良いし、仕事もできて、そして、どうしようもなく女ぐせが悪い。しかし、だからといって、性格が悪いわけではなく、ただひたすら、まっすぐで優しい男なんですね。プレイボーイとは言うものの、光源氏のようなイメージではなく、有能ながらもちょっとダメ男っぽい雰囲気が感じられる人間で、恐らく、女性の「萌え」を刺激する要素があるキャラクターなんだろうなぁと思いました。で、話全体が、とても女性視点が強くて、個人的には、ニシノユキヒコのキャラにもそれほど感情移入できなかったので、いつもの川上調は楽しめたものの、物語自体にはそこまではまれませんでした。

面白かった作品は、中学時代を描く「草の中」が個人的にはダントツで良かったです。西野くんもまだまだ「青い」感じがほほえましいし。あとは、最終話で、この連作短編集全体が、かなり引き締まってました。タダひたすらに愛を求めて求めて、それでも上手くいかないニシノユキヒコの心に秘めた哀しみの原点に迫る内容で、 とても切なくなる話でした。

1人の男のことを女性達が次々に回想していくというスタイルはなかなか面白くて、このまま、連ドラとかにしても面白いんじゃないかなぁなんて思ってみたり。

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受信: 2006年8月16日 (水) 09時39分

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