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2006年8月11日 (金)

「隠し部屋を査察して」 エリック・マコーマック

「隠し部屋を査察して」 エリック・マコーマック 創元推理文庫

帯に上弘美の推薦文があって、解説が柴田元幸というだけで購入を決めた1冊。柴田氏の翻訳がとりたてて好きな訳ではないけれど、柴田氏が紹介する作品は好きなものが多いのです。

短いものから長めの物まで20篇を収録した短編集。作者はカナダの作家さんです。作品の雰囲気は幻想短編集とでもいったところでしょうか。ダークなテイストが強い作風ですが、グロさはあまりなく、ちょっと奇妙な物語がたくさん収録されていました。

では気に入った作品をいくつか手短にコメント。

『隠し部屋を査察して』
表題作なだけあって、なかなか面白い作品です。6つの建物の地下室にある隠し部屋に幽閉されている人々を、年に1度、査察して回る査察官の物語。それぞれの部屋の住人達の不可思議な身の上が綴られていくのですが、とりわけ印象残ったのは、とある町の町長のエピソード。オチを含めて、こういうかなり好きです。

『窓辺のエックハート』
とある殺人事件を追うエックハート警部の物語。「ねじれた」という表現がとても適切な不思議でシュールな雰囲気のある一編。

『一本脚の男達』
とある炭鉱で起きた事故の結果、工夫の住人達が一本脚になったのを雑誌や新聞などの記事を並べて綴っていく物語。ちょっとグロイんですけど、インパクトの強い作品。

『エドワードとジョージナ』
この本では、2番目に好きな作品。町の人々との交流がほとんどない年老いた兄妹の物語。正反対の性格の2人は、他人とのかかわりをずっと避けてきたけれど、ある日、兄が亡くなり、やがて、この兄妹の隠された秘密が明らかになるという物語。切ないファンタジーでした。

『刈り跡』
他の作品にあるダークな要素がほとんど感じられない爽やかな一編。爽やかさの原因はラストによるところが多いのですが・・・。自分はこれが1番面白かったです。アメリカを発端に、突如現れた「刈り跡」が地球を一周しながら、世界中に深い溝を刻んでいくという物語。溝に飲まれたモノは姿を消し、建物も跡形もなくなくなっていくというちょっとした恐怖のできごとを、結構明るい感じで書いている作品です。日本の部分が割りと長いのが興味深いところです。

『祭り』
とある町でひらかれた3日間の不思議な祭りを描く物語。体育館での描写が衝撃的。

『町の長い1日』
とある町の1日を描きながら色々な住民の不可思議なエピソードを綴っていく作品。「隠し部屋~」の系列ですが、この手の作品が本当に上手です。

『双子』
分裂できずに1つの体に2人が存在するという特殊な双子を描く作品。なかなか怖い作品でした。

この作者の作品を読んでいて思い浮かんだのが小田扉の「江豆町」という連作短編の漫画。いくつかの作品の空気が本当によく似ています。シュールでちょっと不思議なSFファンタジィを割と日常のなかにくるんで描くというスタイルがそう思わせたのかもしれません。

あとは、この短編集をひとことで言うならば、ダークな想像力の博物館みたいな感じでしょうか。

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