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2006年9月 8日 (金)

「DIVE!!」 森絵都 角川文庫

「DIVE!!」 森絵都 角川文庫

非常に面白かったです。なんか漫画みたいな感じでサクサクと読めてしまう面白さ。でも、「小説」というジャンルでしかなしえない表現を駆使した作品で、きっと、漫画化しても、映像化してもこの作品の面白さは引き出せないのではないでしょうか。

自分としては4作目の森作品。先ごろ直木賞も受賞されてノリにのっている森さんが、ティーンを対象にして書かれていたときの代表作の1つが文庫化されたものです。

都内にある飛び込み競技のクラブを舞台に、そこに所属する3人の少年達の青春を描く作品。全部で4部に分かれているのですが、それぞれで視点が異なっているのがなかなか面白い構成です。

第1部は、なんとなく飛び込みを続けていた知季という少年が、新しくやってきたコーチによって自分に眠っている才能に気づくのを描いていました。これまで一緒に楽しくやっていた友人との摩擦や兄弟、恋人との関係など、「普通」だった少年が、突如、才能あるものの世界に飛び込む様子を描く第1部は、読み手にも共感できる場面が多くて、とても面白かったです。

続く第2部は、コーチによって青森から連れてこられた天才飛び込み少年が主人公。第1部の続きになっていても、視点がガラリと変わることで、とても驚く展開でした。第1部で共感できるキャラだった知季も、この第2部では、大分印象の異なるキャラになっていて、「視点」の違いをとてもよく表しているなぁと思いました。

第3部では、チームのコーチの息子で、国内屈指の選手として知られている少年の視点に。それまでは、天才少年のように描かれていた彼の視点で描かれることで、今度は、「飛び込み」という世界に生きることや、彼の葛藤なんかが描かれいて、これまたとても面白かったです。

そして最後の第4部では、各章ごとに次々と主人公が変わっていくというスタイルで、これまでの3人の主人公に加えて、脇役として登場した人々の視点からも物語が描かれていって、飛び込みという競技にまつわる様々な人間の群像劇を見せると同時に、まさに目が離せないストーリー展開であっという間に最後まで読んでしまいました。

視点を次々と変えていくというスタイルも面白かったしストーリーも面白くて、かなり楽しめる作品でした。飛び込みは確かにマイナーな競技ですけど、以前、オリンピックのときに中継されていた試合を、何故だかひきつけられて、ついつい最初から最後まで全部見てしまったことがあって、、個人的にはちょっと気になる競技であったということも、この作品を楽しめた要因かもしれません。

スポーツをとりまく少年達の姿を描くという点で、「バッテリー」(「DIVE!]の解説はあさのあつこさんでした。)とも近い要素を持った作品ではありますが、あちらが、孤高の天才少年を描くのに対して、こちらはもっと弱い主人公たちを描いていたりして、また違った面白さのある作品でした。

ところで、作品そのものは各登場人物の個性もよく出ているし、とても面白いストーリーだし、本当に満足のいくものだったんですけど、やはりというか、気になったのは、ここで描かれる男子中学生、高校生たちがあまりにピュアだということ。女性作者が描く少年たちって、何故だかとても繊細でナイーブなキャラが多いですよね。突き抜けるような、良い意味でのバカバカしさに溢れているというのもこの世代の男子の特徴だとは思うんですけど、そういう部分が描かれることがなくて、どの人もみんな王子様みたいな雰囲気があるのがいつも気になります。

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コメント

はじめまして。私も森さんのDIVE!!に感動した一人です。
一人ひとりの設定と、個性、想いの描写が上手で、読んでいて3人それぞれに惹かれてしまう魅力的な作品でしたよね。
オトナにはない純粋さとか、自分の得ばかり考えない競技に対する真面目さって、学ぶところが多いです。

バッテリーも面白そうですね。次はあさのさんの作品を読んでみることにします!

投稿: Shocola | 2006年9月10日 (日) 22時19分

>Shocolaさん

コメントどうもありがとうございます!
とても面白い本でしたね。
性格の異なる3人それぞれに、感情移入して読むことができるあたり
森さんの文章の上手さを改めて感じました。

バッテリー、自分は全巻そろってから一気に読もうと思って、
追いかけるのは2巻で止まっているんですけど、
DIVE!がお好きでしたら間違いなくハマれる作品だと思います。

投稿: ANDRE | 2006年9月10日 (日) 23時39分

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