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2006年10月11日 (水)

「誠実な詐欺師」 トーベ・ヤンソン

「誠実な詐欺師」 トーベ・ヤンソン ちくま文庫

ムーミンでおなじみのフィンランドの作家ヤンソンが書いた大人向けの作品、なにやら彼女の最高傑作との呼び声も高いのだとか。

舞台は冬のフィンランド。24歳のカトリは損得の問題に関して天才的な才能を持っていて、村人から契約などが絡む様々な相談を持ちかけられているが、彼女が信用するのは数字だけという人間嫌いの変わり者。彼女は弟のためにボートを買ってやることが夢であり、そのためにとある策略を立てる。村に住む、御人好しの裕福な老齢絵本画家のアンナの家に住み込みで働きに入り、彼女の価値観を揺るがすことで、あくまでも「誠実に」詐欺を企てたのである。果たして彼女の企ては成功するのか・・・2人の孤独な女性が織り成す、人間ドラマを描く。

冬のフィンランドが舞台ということもあって、とにかく暗い雰囲気が全体を覆っている作品でした。雪に閉ざされた長い長い冬のイメージそのままという感じです。ムーミンシリーズも子供向けにしては、ちょっとダークで暗い雰囲気が漂っている作品だと思うので、これはヤンソン作品のカラーなのかもしれません。

あと、印象に残ったのは全体を貫く妙な緊張感。2人の微妙な距離感がそのまま物語になっているような感じで、読んでいるこちらまで人間不信になりそうな、強烈な緊迫感がただよう作品でした。ひたすらに対照的に描かれるアンナとカトリというキャラクターがとても上手く生かされていて、それだけで最後まで一気に読ませるような作品です。

決して「面白い」とは思わなかったんですけれど、よくできた作品だとは思います。でも僕はやっぱり「楽しいムーミン一家」とか「パパの思い出」とか「彗星」のほうが好きですけどね。子供時代の愛読書です。

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