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2006年10月23日 (月)

映画「プロデューサーズ」(1968)

「プロデューサーズ」 1968年 アメリカ

そういえば、見てたのにレビューしてませんでした。ミュージカル版の舞台が大ヒットし、昨年映画化された作品のオリジナル版です。ちなみに、このオリジナルも、舞台も、リメイク版映画も全てメル・ブルックス自身が手がけています。

このレビューで「プロデューサーズ」を扱うのは、舞台版、昨年の映画に引き続き3回目なので、ストーリーに関してはそちらのレビューを参考にしてください。

舞台版レビュー

ミュージカル版映画レビュー

さて、このオリジナルの映画を見ると、昨年のミュージカル版映画が、舞台の映画化という側面を持ちつつも、かなり忠実にオリジナルの映画をリメイクしたのだということが分かります。とりわけ、舞台版では演出上不可能だったと思われる、事務所→タクシー→セントラルパーク→噴水のくだりなんかは2つの映画でほとんど同じアングル&演出ですね。そして、ミュージカル版の歌詞も割りとオリジナル映画の脚本をベースにしていることも発覚。ただし、これは当然といっては当然だけれど、オリジナル版はメル・ブルックスの監督デビュー作で、映画の作りとしてはまだまだ甘い部分が多いのも事実。B級っぽいんですよね。名実とともに力をつけて、自分自身で40年ぶりにリメイクした昨年のミュージカル版映画のほうが完成度としてはダントツに上だと思います。

奇人変人大集合みたいな部分は、ミュージカルでも面白かったですけど、これはミュージカル無しでも十分楽しめる内容なので、普通にコメディ映画として面白い作品だと思います。ただ、ミュージカル版のほうがキャラ個性がパワーアップしてるので、先にそっちに馴染んでしまってる身としては、ちょっと物足りないのも事実。あと、やっぱり期待してる場面で歌が入らないとちょっと肩透かしなんですよね・・・。まぁ、オリジナルはミュージカル映画じゃないから仕方ないんですけど。あと、オリジナルだとウーラはちょっと地味な扱いでしたね。

ちなみに、脚本家として登場するドイツ人さん、オリジナル版は当初ダスティン・ホフマンが予定されていたものの、「卒業」に出演するためにキャンセルになったそうですね。ホフマンバージョンもちょっと観てみたかったかも。

<ちょっとネタバレ感想(反転させてください)>

後半の展開がミュージカルとオリジナルとでは少し違うんですけど、そんな違いの中でもとりわけ印象的だったのが、劇中劇の部分。ミュージカルでは「ヒトラーの春」が大ブーイングを受けるものの、ヒトラーが登場するやいなや、観客が大爆笑となるわけですが、自分はこの部分にちょっとした疑問を感じてました。あれだけでそれほど笑えるのか!?

そんな疑問を解消しているのがこのオリジナル版。華々しいオープニングで観客がブーイングするのは同じなんですけど、その後、普通に劇が始まって、その劇の中でヒトラーがコントのように振舞って観客が大爆笑という流れなんですね。こっちのほうがずっと自然だなぁと思います。ミュージカル版だとやっぱり「ミュージカル」で笑いを取りたかったんだろうなぁということでしょうか。ちなみに、劇中劇オープニングの「ヒトラーの春」もこっちのオリジナル版のほうがコンパクトにまとまってて面白いと思いました。基本同じなんですけど、こっちのほうがチープ感が漂ってて良い感じ。曲もちょっと短いですね。

<ネタバレ終わり>

この作品、当時アカデミー賞の脚本賞を受賞していますが、今よりももっともっと2次大戦が近くて、さまざまな「差別」が今よりももっと深刻な問題だった68年の作品だということを考えると、この映画の風刺的な内容は当時もっともっと強烈なものだったはず。そう思うと、この作品に脚本賞を与えたアカデミーもなかなかの勇気だなぁと思ってしまいました。

ところで、ミュージカル版映画のDVDが出ましたね。そちらには特典映像として、未公開シーンが収録されていて、舞台版からカットされた冒頭のマックスの歌が見られます。このシーン、かなり舞台版に忠実で、バイオリンやらカートやらダンスやらの演出はまさに以前観た舞台の感動そのままという感じ。なので、逆に言えば、「映画」としてはどうなんだろうという感じもして、そう思うと、このシーンのカットは仕方なかったのかなぁと思います。この曲は前半の曲の中で唯一ちょっと暗い影がある曲だし、無い方が映画がすっきりと引き締まりますよね。

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