映画「RENT」
「RENT」 2005年 アメリカ
結局映画館を逃してしまった作品がDVD化されたということで、早速見てみました。ミュージカル映画ファンとしては見逃せない1本ですからね。
舞台は1989年のNY。ダンサー、歌手、映像作家などを目指す若き芸術家たちが主人公。貧しい彼らが暮らす地区には家賃(RENT)も払えず(払わず?)夢を追う若者達が集まっていたが、スラム化しつつある地域を再開発する動きがあり、退去を求められていた。ギリギリのところ生活環境で暮らす8人の男女が、エイズ(登場人物の半分)、同性愛(登場人物の半分)、ドラッグなど様々な問題を抱えながらも、愛に溢れた日々を求めて生きていく姿を描くミュージカル。
舞台版はトニー賞に加えピュリッツァー賞も受賞してるだけあってなかなか硬派なテーマなんですけど、それを全編を通して力強いロックやR&B調の音楽で綴っていくというなかなか面白い作品。
ちなみにこの作品を作ったジョナサン・ラーソンは長い長い下積みを終えて自身初の大ヒットとなったこのミュージカルが初演される前日に亡くなっています。そう思って見てみると、このミュージカルの曲や詞が語りかけてくるメッセージがより一層心に響いてきます。
この映画、冒頭5分が本当に素晴らしいです。もう始まった瞬間、とんでもない傑作映画が誕生したのでは!?と本気で思ってしまえるくらいに良い。曲もいいけど、舞台調の演出も良い。このシーンだけ何度も繰り返して見たいくらいに良い。このSeasons of loveは間違いなくミュージカル映画史に残る傑作シーン。
なのに、その後が・・・。このミュージカルは、基本歌が中心になって展開していきます。しかも、オペラ座やエビータのように、台詞が歌になっているというよりも、もっとちゃんと1つの「歌」になっていて、1つ1つの曲はちゃんと歌いだしと歌い終わりもはっきりとしてることが多いんです。で、結果、映像化によって、ただひたすらミュージック・クリップをつなげて映画にしているような印象がどうしても拭えませんでした。とりわけテレビの画面だと特に・・・。一つ一つの曲は良いし、ストーリーも面白い、それでも、2時間ずーっとPVを見るってのはやっぱりちょっとお腹いっぱいになります。
もっと映像がスタイリッシュでひきつけるものだったら違ったのかもしれないんですけど、この映画、映像は割りと普通です。監督のクリス・コロンバスはファミリームービーを撮らせたら非常に上手いのは数々のヒット作からも分かることですが、この深いテーマに溢れた物語はちょっと彼のテイストとはあっていないようにも感じました。そういう点がちょっと残念。
しかし、音楽の良さ、舞台版オリジナルキャストによる圧倒的なまでの迫力、ストーリーの深さ、メッセージの強さなんかはとても素晴らしいので、「RENT」という作品そのものは本当に傑作なのだと思います。
ちなみにストーリーはかなりそのまま「ラ・ボエーム」でしたね。ベースになっているとは知っていたけれど、ここまでとは思ってなかったよ。そして、そうだとすると、あのラストは個人的には完全になしだよ・・・。
とりあえずしばらくの間、脳内musicはRENTの曲で決まり。Seasons of loveはもちろん、他ではモーリーンのタンゴ(こういう曲面白いよね)、Without you、教会で歌うI'll cover you (途中でsesons~がコーラスで入るのがたまらない)あたりが特にお気に入りです。
<追記>
舞台版のサントラCD(2枚組み)を行き帰りの電車で聞いたところ、無茶苦茶はまってしまいました。弱冠映画とストーリーの組み立てが違う部分もあるみたいですね。ちょうど往復の電車で聴ける長さなのも良い感じ。
ちなみにこのサントラにはスティーヴィー・ワンダーが参加するSeasons of loveが入ってますが、これはそんなに良くないですね。シンプルなオリジナルのほうが良い。
<さらに追記>
セルDVDの映像特典に未公開シーンとしてもう1つのエンディングが収録されていました。僕はてっきり、原作オペラ「ラ・ボエーム」と同じ展開になるラストがあるものなのかと思ってたんですけど、ストーリー上の変更はなくて、演出が違うだけでした。
そのラストというのが、一番最後にコーラスして盛り上がる部分を、オープニングと同じように舞台に8人が並んで歌うというバージョンで、これがまた、傑作のオープニングと同じ雰囲気になっていて個人的にはこちらのバージョンの方が気に入りました。てか、こっちのほうが完成度高くないかい?オープニングだけが浮いてしまうってこともなくなって、一貫性を持った映画として綺麗にまとまってる気がするんだけどな。このラストだったら自分は泣いたかもね。
ボツになった理由の解説も入ってるんだけど、だってこれはミュージカル映画だよ!ドキュメンタリーじゃないんだよ!と僕は思うので、その意見には賛成しかねます。監督自身も、こちらのラストを選べばよかったかもと今でも思うというようなことを言ってるから、このバージョンをばっさりと切るのはやっぱり抵抗あるんだろうね。だって、こっちのほうが良いもんね。
ちなみにこの特典に同時に収録されているドキュメンタリーを見ると、このミュージカルが若くして亡くなったラーソン氏の魂が全て詰め込まれた作品だということが分かり、作品の感動がより一層深まります。
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コメント
こんばんは
amazon ukで買ったDVD、今見ました。
イタリア語の吹き替えやブルガリア語字幕は付いてるのに
ドキュメンタリーついてなかった・・・。
舞台版にはまると映画の出来とは関係ない視点で見ちゃうよね、どうしても。
微妙に古いセッティングとか役者の年齢とか
いろんな”無理がある”感を超えた作品の可愛さに泣けてしまう。
もちろんseasons of loveでも泣くけど。
ニューヨークの人達がみんなこんなに歌うまかったらおもしろいなあ。
投稿: halcan | 2009年4月11日 (土) 01時05分
>halcan
お久しぶり。
コメントありがとう。
日本版DVDについてるドキュメンタリー、
海外版にはついてないのかぁ。
ジョナサンの最期があるだけに、
見るとどうしても涙が溢れる内容なんだけど、
とても良いので機会があれば是非!
そうそう映画だと年齢設定にかなり無理があるよね・・・。
でも映画も何度も見ると慣れちゃうね。
ただ、音楽はやっぱりブロードウェイ版サントラのほうが良いと思う。
で、で、で、
8月の来日公演チケット無事ゲットできました!!
2回観にいきます!
投稿: ANDRE | 2009年4月11日 (土) 11時45分