「川の名前」 川端裕人
「川の名前」 川端裕人 ハヤカワ文庫
少年達の夏休みを描いた作品。1,2ヶ月ほど時期を逃した感じですが・・・。
主人公は幼いときに両親が離婚し、社員課の父と一緒に世界中を飛び回って生活をしてきた少年、脩。久々に日本の小学校で過ごす小学5年の夏休み、友人たちと一緒に夏の自由研究の課題を探していた脩は、近所を流れる桜川に謎の生物がいるのではないかということで調査をはじめ、やがて、とある生き物を発見し、それを観察し始める。ところが、この観察はやがて、友人達や世間を巻き込んで大きな騒動へと発展して行く・・・。4人の少年たちを軸に彼らが成長したひと夏の冒険を描く物語。
子供達が主人公なんですけど、子供が読んでももちろん面白いだろうけれど、恐らく大人向けの作品なんだろうなと思います。ボリュームも結構あるし。少年達の世界が我々の現実社会の縮図のように様々な問題を持っていて、その中で少年達が少しずつ変化していく姿は読んでいてなかなか気持ちの良いものです。
少年たちの物語というと、「スタンド・バイ・ミー」や「4TEEN」のように、4人組というのが結構多いのはなんでなんでしょうか。この小説も、4人それぞれが違う性格だし、その他の人物も皆どこかにいそうなキャラクターばかりなので、読みながら、登場人物の誰かに共感しながら読み進むことができる思います。自分は手島君がやけに気になりましたね。別に共感とかそういうのではないんですけど。
この小説、読んでいてすぐに思い浮かぶとある誰でも知ってる極最近話題になったできごとがあるんですけど、その描写を読んで、読者である我々がその情景を手に取るように理解することができるのはやっぱり、その現実の事件とのオーバーラップのせいなんだと思います。確かに騒ぎすぎだよなぁとは常々思うんですけど、この小説はかなり否定的にそれを描いていたように思います。
そういうわけでなかなか楽しんで読みはしたんですけど、無茶苦茶面白かったというわけでもありませんでした。その理由は恐らく、ところどころがあまりに説明的&教訓じみていたところ。メッセージを前面に押し出している作品なので、それがちょっとうるさく感じられたのも事実。
「川の名前」という概念はなかなか面白いなぁと思いました。Google Earthとかで自分の住んでる地域をグググっと拡大していく感じですよね。確かにそうだと頷いてしまいました。
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