「風の影」 サフォン
「風の影」 上下 カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫
本国スペインでは空前の大ベストセラーになり、その後、世界各地で翻訳され、数々の受賞記録を持ち、日本語に翻訳されるや、各書評で大絶賛という作品。新聞で池澤夏樹氏が書評を書いているのを読んで、面白そうだなと思い、読んでみました。書評読んだのは、かなり前ですが・・・。
ダニエル少年は、ある日、書店を営む父に連れられて「忘れられた本の墓場」という、大量の本が眠っている場所に連れて行かれる。そこで手にした「風の影」という本に魅せられた少年は、その作者であるフリアン・カラックスという作家に興味を持ち、彼について調べはじめる。出版された本はなぜかどれも入手不可能な状態、そして、作家本人の経歴も謎だらけ。そんな謎を追ううちにダニエル少年の身の回りでも事件が起こる。バルセロナを舞台に1冊の本とその作者をめぐる少年の冒険を描く。
えっと、これだけのベストセラーで、ブログなんかを回っても絶賛の嵐の中、こういうことを書くのは気がひけるんですけど、自分にとって、この本、面白いか、つまらないかで言えば、「つまらない」のカテゴリーに入ります。下巻を同時に買ってしまったので、がんばって最後まで読みましたが、結構苦痛でした。
下巻は物語がかなり動くので、まだ楽しめましたが、上巻は、テンポが遅いのと、あと、作家の謎を追う主人公が、ゆかりの人を訪ねては、チラリと輪郭が出てくるの繰り返しで、そして、その謎自体があまり魅力的なものではなくて、なんだか、じれったさを感じてしまったんですよね。しかも、その謎がさ、結局、主人公が自分で解き明かすってわけじゃないのが、なんとも微妙でした。あと、脇をとりまく人々はかなり丁寧に描かれていて、魅力的な人物もいるのに、一方で、肝心の主人公がなんだかつかみ所の無いキャラで、感情移入できなかったというのもあります。でも多分、ストーリーっていうか、「謎」そのものに全く面白さを感じなかったってのが大きいに違いないです。
あと気になったのが翻訳。新聞のタイトルは「スポーツの世界」とか、なんだか不自然な訳を与えていたりする一方で、ピソとかカフェ・コン・レチェとか明らかにカタカナ語としてなじみのない言葉を原語のままカタカタ表記ってのはちょっと不親切な気がしました。せめてカフェ・オレとかにすればいいのになぁとか思ってみたり。
それでも、バルセロナという街を魅力的に伝えてたり、「本の墓場」というなんとも粋な設定があったりと、部分部分は「おっ」と思うところもポツポツとありましたね。世間では極めて評判が高いようなので、単に僕が作品を理解して読んでなかっただけなのかもしれませんし。きっと、良い本なのでしょう。
ところで、これって「ミステリー」っていうんですか??
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