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2006年11月 6日 (月)

「本の読み方」 平野啓一郎

「本の読み方」 平野啓一郎 PHP新書

先日に引き続き平野啓一郎氏の著作ですね。普段、新書はほとんど読まないし、読んでもレビューは書かないんですけど、いつも取り上げている小説家の平野氏の文章ということで、レビューを。

著者が速読ならぬ、遅読「スローリーディング」を提唱するという1冊。小説はいたるところに作家の意図が埋もれていて、それを味わいながらじっくりと読み進めていくことで、より深い読書体験ができるし、やや内容が硬いテキストでも、じっくりと読むことで、内容理解が深まるというようなことを書いています。前半はスローリーディングの方法について語って、後半は実際に色々なテキストを実例にだしての実践編という構成です。

うーん、自分も速読とかで小説を読むってのは、なんとももったないことをしているとは常々思っているけれど、ここでの議論はちょっと極端かなとも感じました。とくに、速読を強く批判して、遅読を奨励するという話の運び方は読者に強くうったえかけるものがあるけれど、そもそも、「速読」って何らかの目的を持ってなされることが多いわけで、日常の読書と並列的に扱うのはどうかなとも思ったりします。まぁ世の中には日常の読書も速読で、一ヶ月に100冊読みます!みたいな人もいるんだろうけど・・・。でもそういう人は恐らく、そんなに深い文学作品は読んでないよね。あと、音読も否定していたけれど、最近流行の音読は、決して日常の小説を読むための手段として提唱されているわけじゃないんだから、それを一概に否定するのもなぁと思います。

あと、もう1つ、とても不満に思った点があります。文中に太字で書かれた部分がチョコチョコ登場して、ここはポイントだということをこれでもかというくらいに主張しているんですけど、そういう太字こそ、「速読」向けの演出なんじゃないかと思うわけです。せっかくスローリーディングを主張しているのだから、読者がちゃんと読んでくれることを期待して、太字とかあえて入れなくても良いのになぁと思いました。

こういう内容の本なだけあって、読者を納得させるような巧妙な議論の進めかたをしているなぁとも思うんですけど、部分部分では納得できるものの、言われたとおりにじっくり読んでみると、1冊の本の中で、実はつじつまの合わないことを言ってたりする部分もあって、そういう点もちょっと気にはなるんですけど、なかなか楽しんで読むことができました。つじつまが合わない部分は、恐らく、平野氏が読者の側に立って書いているときと、作者の側に立って書いているときがあるのが原因なんだと思います。

全般的に言ってることはよく分かるし、良いことも沢山言ってるとは思うのですが、こういう新書を購入するような人って既にここで書かれたことを実践しているような人ばかりなんじゃないかとも思うんですよね。平野氏が書いてるってことで、純文学ファンも多く読むだろうし。なので、普段読書をしないような人たちまで彼のメッセージを届かすってのは結構大変だと思うんだけれど、その割りに大したプロモーションもなされていない様子なので、ちょっともったいない気がします。

さて、これを読む限りでは、平野氏は作品執筆に際して、かなり考えて書いているようなので、先日、「必然が見えてこない」とまで書いてしまった「高瀬川」の官能描写も、単に自分の読みが浅いだけなのかもしれませんね。今後は気をつけてじっくりと作品を読むようにします。スイマセンでした・・・。なんか知らないけど、この新書読んだら、作者本人からクレームがきたような気分になってしまったよ・・・

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