映画「ぼくを葬る」
「ぼくを葬(おく)る」 2005年 フランス
オゾン監督の映画は「8人の女たち」や「スイミング・プール」など強く印象に残る作品が多いのですが、そんな彼の新作は「死」を題材にした作品。
主人公の写真家ロマンはある日、仕事中に体調を崩し病院で検査を受けたところ、癌であることが分かり余命3ヶ月と宣告される。残された日々を、家族や恋人(ゲイという設定)とどのように過ごしていくのか、そして、彼に訪れる最期とは。という物語。
3ヶ月の命と宣告された主人公の最期の日々を描くというと、「死ぬまでにしたい10のこと」や「生きる」といった映画や、ドラマ「僕の生きる道」など名作が多いジャンルですが、この作品もはじめこそは過去の作品と変わり映えの無い印象ではあったものの、しっかりと個性を持った作品でした。
死を宣告され、悲しみにくれる主人公がはじめてそれを打ち明ける相手が、自分と同様に死が近く、孤独に過ごす祖母だというのがなんとも上手い。そして、子供のエピソード、姉との確執のエピソードなど静かながらもとても丁寧に、繊細に描かれていました。主人公のロマンを演じるメルヴィル・プボーの2枚目っぷりと演技の上手さも必見ですね。あと、祖母を演じるジャンヌ・モローの短い出演時間ながら確かに心に残る名演も必見!
こういうストーリーだと主人公が周囲の人のあたたかさに包まれていくというような展開になるものが多い中、この作品では邦題にあるとおり、主人公は周囲に打ち明けることができず、独りで自らの死に向き合い、最期の日々を過ごしていくことを選ぶのがなんとも切ない。見方によっては死期を悟った猫のようでもありますが・・・。最後のほうは映像も音楽も美しくて、静かに、本当に静かに幕を閉じるのがとても印象的でした。
そしてエンドクレジットのBGMが(注ネタバレ:反転)波の音オンリー!!!全編を通してここに一番ノックアウトされたかもしれません。映画館でこれやられたらヤバイね。ちなみにDVDではそのままメニュー画面につながるという演出が!
そうそう、2度ほどある性描写がどちらもなかなかインパクト大で、見ながら「おぉ、さすがフランス」などと思ってしまったり。
全般的に良い雰囲気の映画で、さらに81分というみじかさが、淡々としたペースでも飽きが来ないベストの長さだったのも良かったのではないでしょうか。
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