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2006年12月 2日 (土)

「プラネタリウムのふたご」 いしいしんじ

「プラネタリウムのふたご」 いしいしんじ 講談社文庫

いしいしんじの長編作品が先月文庫化したものを早速読んで見ました。なんだかんでいしい作品は文庫化するたびに追いかけていますね。先月は月末に新潮文庫でも初期いしい作品が発売になったので、そちらも折をみて読んでみようと思います。

舞台は大きな工場がある町。この町では工場の煙が常に空を覆っていて、夜空を見ることができず、他に娯楽もないので、町にあるプラネタリウムはいつもにぎわっていた。ある日、プラネタリウムに、双子の赤ん坊が置き去りにされ、施設がいっぱいだったこともあり、引き取り手の無い双子をプラネタリウムの館長が引き取って育てることになる。やがて2人は成長し、1人はひょうんなことから手品師になり世界を巡り、もう1人は郵便局で働きながらプラネタリウムを手伝うようになるが・・・。双子の兄弟の数奇な運命を描く作品。

テンペルとタットルという双子の名前、プラネタリウムという舞台設定などからしてなんとも素晴らしい作品で、いつものいしい作品と同様に全編暖かさに包まれた作品でした。長編の「麦ふみクーツェ」はどちらかというと苦手な作品でしたが、今回はとても楽しんで読むことができました。

自分はどちらかというと手品の部分よりもプラネタリウムの部分のほうが話が面白かったんですけど、どちらにもなんとも素晴らしいキャラクタが存在していて、彼らの語る言葉の一つ一つがとても胸に染み入るものでした。とりわけ、マジックの団長が「世界一の舞台」ということについて語る言葉が、自分がかつて舞台上で歌ったりしたときに思っていたことと共通する部分があって、とても印象的でした。

最後に、大きな事件があり、双子がとある行動を起こすのですが、自分は、この作品で描かれた解決策はちょっと不満だったりします。世の中、優しいだけではなくて、厳しい現実と向き合うことも時には必要ではないでしょうか。

なんて思ったりもしましたが、長い作品ながらも、最後までしっかりと楽しむことができたので、オススメの1冊です。

いしいしんじってちょっと宮沢賢治と傾向が似てますよねー。マイベストいしい作品「トリツカレ男」を越える名作に出会えることを期待して今後も読もうと思います。

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