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2006年12月 1日 (金)

「紅い花」 ガルシン

「紅い花他四編」 ガルシン 岩波文庫

19世紀のロシアの作家の短編を5作収録した短編集。どの作品もロシアらしいというかなんといういか、重々しさがありました。

特徴としては、最後のオチが切ないものが多い印象でした。収録されている作品を1作読んでは、はぁっとため息をつくような感じです。では、収録作品についてサラサラっとコメント。

表題作「紅い花」は、精神を病んだ青年が療養中に紅いケシの花こそが悪の象徴なのだと思い、身を滅ぼしていく様子を描いた作品で、表題作にもなっているとおりに、かなり読ませる作品でした。作者が自身の精神病院での入院経験をもとに書いているそうで、妙なリアルさが。精神を病んでいる主人公が必死に守ろうとしたものが「正義」であったというのがなんとも考えさせます。

「四日間」。こちらもかなりのインパクトのある作品でした。戦場で、足を負傷し倒れて、身動きが取れないまま過ごした4日間を描いた作品。こちらも作者自身の戦争体験がもとになっているそうで、主人公の目に映る、戦場の悲惨な情景がありありと伝わってくるのがとても重く、そしてまた、体験者が語る説得力のある作品でした。

「信号」。鉄道会社の職員が自らの危険をかえりみずに列車を助けようとする話。ちょっと質は違うけれど「紅い花」と同様に「正義」がテーマですかね。個人的には一番地味な印象でした。

「夢がたり」。虫やら動物やらがそれぞれの身の上やら思いやらを話していると・・・。という話。ラストのオチがあまりに酷い。変に民話タッチだから余計にブラック。

「アッタレーア・プリンケプス」。上の「夢~」と傾向は似ていて、コチラは植物園を舞台に、温室の中で育つブラジルからやってきた棕櫚の木の物語。植物同士の会話があったりして、ちょっとファンジックな民話タッチだけれど、これもまた最後のオチが・・・。個人的にはこれが一番好き。でもちょっと道徳の教科書とかに載ってそうな話でしたが・・・。

全般的に読み終わって、すがすがしい気分になれる作品が1つもないので、落ち込み目のときには読まないほうがよいかもしれませんが、作品の質としてはかなり高くて、面白かったと思います。ロシアものってなんだかんで面白いんだよね。

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