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2007年1月29日 (月)

映画「プラハ!」

Rebe-love 2001年 チェコ

チェコ産のミュージカル映画です、ひっそりと公開され、ひっそりとレンタルされたものを借りてきました。忙しかったのですが、ようやく一息という感じなので、少しゆっくりと映画とかも楽しみたいですね。

物語舞台は、社会主義をとる政府が、改革を宣言し、民衆の間にも「自由」への憧れが一気に芽吹いたものの、ワルシャワ条約機構の軍隊が国に侵攻するに至った「プラハの春」と呼ばれる事件が起こった1968年のチェコ。高校卒業を間近に控えた主人公テレザは、クラスメートの男子に執拗に声をかけられるも、ださい彼らのことなぞ全く相手にはせず、友人たちと3人で甘い初体験を夢みていた。そんなとき、自由の国アメリカを夢みて脱走した3人の兵士たちが彼女の暮らす町にやってくる。駅で彼らに遭遇したテレザは、その中のシモンに一目ぼれして・・・という物語。全編にわたって、60年代のヒット曲の数々(多分)を用いたミュージカルシーンが挿入されるポップな映画でした。

60年代を舞台にした懐かしい感じのレトロ調演出の楽しいミュ-ジカルでした。

とりあえず、オープニング映像がいきなりぼくのツボをど真ん中ストライクで刺激してしまい、つかみはかなり良い映画でしたが、全体に単調な雰囲気は否めず、また、随所に挿入されるミュージカルシーンが最初は楽しかったものの、似たりよったりの演出が多かったり、微妙なギャグテイストが入ったりで、終盤はちょっと飽きてしまいました。でも、序盤のオープニングや授業が終わって街に繰り出す場面、雨の中で歌い踊る場面などはどれも印象的でとても良かったです。

チェコの作品といえば、人形アニメくらいしかしらないので、はたしてここでなされている演出が意図的にレトロ調なのか、はたまた、チェコという国の映画技術が結果的にレトロっぽさを生むに至っているのかは定かではないのですが、映像の撮りかたなんかも全体的に全てがレトロな作品でした。

主人公達の衣装も、60年代を舞台にしたポップな現代の作品ではすっかりおなじみの、カラフルでやたらと可愛い雰囲気。こういうポップさは、最近よく見かけるけど、実際に60年代の作品を観てみると、そこまでポップな印象はないので、後の時代からかなり誇張してるんだろうなぁといつも思います。

で、この映画、さらに、ミュージカルシーンになると、妄想の世界へとワープして、舞台チックなセットを組んだスタジオ撮影のダンス&歌のシーンが挿入されます。これは、全体的にぼくはなかなか好きな雰囲気で、かなり楽しませてもらいました。基本、セットはモノクロで、主人公達の原色の衣装が合わさるってのが良いですねー。

ぱっと見は、ポップなミュージカル映画なのですが、実は、なかなか骨太な作品でもありました。「プラハの春」という題材をとてもよく生かしていて、束の間の自由化に羽目を外し浮かれまわる若者達の姿が、「ミュージカル」というアメリカンな文化によく合っていて、さらには、歌われる曲が恐らくアメリカの60年代のヒット曲(元歌を知ってるものがいくつかあったので)ということとも併せて、これまで歴史の教科書などで見ただけで、どうも実感の沸かなかった「春」と呼ばれたその時代の雰囲気が、非常によく伝わってくる映画でした。

そして、ラストのほうでは、この束の間の春が終焉を迎える様子も描かれていて、それまでの明るい雰囲気の映画は一変、どんよりとした雰囲気になるんですが、この場面によって、実はこの映画が単なる若者のバカ騒ぎ映画ではなく、しっかりとした現代史をとらえた作品だったのだということを実感しました。

すごく面白いわけではないけれど、軽いようで実は深い作品ではないでしょうか。あと、主人公を演じる女優さんが正統派美女で、その美しさも2時間たっぷりと堪能できる作品です。

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