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2007年2月12日 (月)

映画「サムサッカー」

Thumbsucker  2005年 アメリカ

ついこの間公開されてると思っていたら、もうレンタル開始。公開中から観たいなぁと思っていたので、早速見てみました。どうでもいいですけど、このカタカナタイトル、一瞬、「親指タイタニック」のサッカー版か?と思ってしまいますよね。

主人公はいつまでも親指しゃぶり(Thumb Suck)の癖が治らない17歳のジャスティン。どこにでもいる平凡な高校生の彼だが、親との関係、性への興味、自分に自信が持てずにいることなど様々な悩みを抱え、悩んで悩んで気がつくと指をしゃぶってしまう。いつも通っている歯医者で、そんな彼を心配するカウンセリングにはまっている歯科医がほどこした催眠療法をきっかけに小さな事件が起こり、ジャスティンは精神科で薬を処方される。やがて、薬のおかげで、精神が安定した彼は、その隠された才能を発揮し始めるのだが・・・。という物語。

大きな事件が起こるわけでもないし、ドラマチックに音楽が盛り上がるわけでもなく、淡々と静かに、しかしツボを押さえながらテンポよく展開する佳作でした。思春期大爆発!って感じの映画です。

監督さんがアート畑出身の人だということで、もっとPOPな映画なのかなぁとも思ったんですけど、意外にも凝った映像があったりするわけでもなく、メッセージ性勝負の映画でした。あと、音楽のセンスが好き。

悩んで悩んで追い詰められていた主人公が、自分の指しゃぶりが精神的な病気の一種なのだと診断され、「病気だったのか」と思うことで、薬を飲むことで、「強い自分」を手に入れるのだけれど、結局は指しゃぶりが薬になっただけで実際は何も解決していないし、その「強さ」も幻にすぎない。そして、今度は・・・と次々と何かに依存していく主人公なんだけど、何をしても、どこかが満たされないのは、その悩みが結局は「思春期」のモヤモヤだからですよね。主人公を演じる少年のその辺の表現力が本当に上手くて、観ていて「おぉ、青春だね~」なんて思ってしまいます。その割りに説教臭さが全くない映画なのも良かったです。

途中、薬で精神的に強くなった主人公がディベート大会で大活躍ってのが、「アルジャーノン」を髣髴とさせる展開で、強くなった主人公に周囲はついていけないし、妙な自信をつけた主人公の性格が悪くなっていくあたりの展開はちょっと切ない感じがします。

ラスト近く、主人公の心が明るくなっていくのが、自分自身で現実に向かいあって、「話をすること」がきっかけなのがとても良かったです。ラストの余韻もホットミルクを飲んだような暖かさが感じられて、ジワジワと感動する感じでした。自分でつかんだ自分の未来、彼の見る夢の映像もとても良かった。

登場人物の中では主人公の弟が一番好きです。それは多分自分が「弟」だったから。彼の台詞には「そう、そうなんだよ!」と思わず同意。あと、父親のウジウジした感じが、アメリカ映画の典型的なマイ・ホーム・パパとは全く違って、実際そんなもんだよなぁというリアルさが感じられましたね。

歯科医を演じたキアヌ・リーヴス。流石はキアヌといわんばかりに、ラストに、1人で美味しい台詞を全て持っていってましたね。ズルイね。

自分が17歳のときってのはほとんど10年前。僕は性格的に思い悩んだりしないタイプなので、毎日のほほんと暮らしてたんですけど(今もそうだけど・・・)、こういう青春も「若者」っぽくて良いですね。どっちかというと「討論部」とかに入るタイプの高校生だった気がするけど、僕はあそこでバカ騒ぎする外野の部員たちの方だなぁなんて思って見てました。

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