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2007年2月22日 (木)

映画「ドリームガールズ」

DREAMGIRLS 2006年 アメリカ

ミュージカル映画ファンとしては、やっぱり見逃せないブロードウェー作品の映画化。しかも今年度アカデミー賞最多ノミネートとあらば、映画館で見ない手はありません。

1960年代、歌手を夢見るエフィ、ディーナ、ローレルの3人は「ドリーメッツ」と名乗り、オーディションに参加。エフィの見事なリードボーカルに客席は大興奮し、彼女達は、カーディーラー兼新進レコード会社を立ち上げようとするカーティスに見出されて、歌手ジェームスのバックコーラスに採用される。やがて、彼女らは「ドリームス」としてデビュー。それにあたり、カーティスはリードボーカルを歌唱力のあるエフィーから、見栄えの良いディーナに変更するよう指示。彼の読みは見事に当たり、彼女らはエフィの兄C.Cが作曲する曲とともに数々の大ヒットを飛ばし、彼女らは一躍全米を虜にする大スターとなり、カーティスのレコード会社「レインボーレコード」も巨大企業へと変化を遂げていく。しかし、彼女達がスターとなり会社が大きくなるとともに、チームワークは乱れていって・・・。という物語。

ビヨンセ、エディー・マーフィー、ジェイミー・フォックスとそうそうたるメンバーが名を連ねる作品で、もっとビヨンセを前面に出した映画なのかと思っていたんですけど、衝撃の新人、ジェニファ・ハドソンこそ、この映画の真の主役ですね。舞台を観にいってたら拍手喝采スティング・オベーションは間違いなしです。

この映画、ここ10年ほど製作されたミュージカル映画の中では「シカゴ」と肩を並べるくらいの傑作ではないかと思ってしまったのですが、それはもうほとんどエフィを演じたジェニファ・ハドソンの素晴らしさのおかげといっても過言ではないです。

エフィは冒頭のオーディションの場面からすでにビヨンセ演じるディーナよりも印象に残る役だったのですが、中盤以降、リードボーカルを下ろされ、様々な苦しい思いを経験し、そして、新しい人生をつかむというストーリー上でも主役級の扱いで、それをまた、ジェニファ・ハドソンは本当に見事な歌唱力と確かな演技力で演じきっているんです。彼女の思いが画面から溢れんばかりに伝わってきて、それはそれは感動ですよ。特に中盤の長い長い彼女のソロがあるんですけど、そこは本当に圧巻で、ミュージカル映画史に残る名場面として今後長く語り継がれるのではないかと思ってしまうほど。このシーンの最後、心の中では拍手&スタンディング・オベーションです。ビヨンセは完全に主役を彼女に食われていましたね。

こんな女優さんを今までノーマークだったなんて・・・と思って観ていたら、エンドロール、出演者一人一人がカーテンコールのように紹介されていくなか、一番最後に、「introducing Jennifer Hudson」の文字が。なんとなんと、デビュー作品ですか。これからが楽しみです。

男性キャストも、評判の良いエディー・マーフィが歌うだけで「おぉ~、彼は歌えたのか」とその芸達者ぶりを堪能できるし、ジェイミー・フォックスも相変わらず良い感じなんですが、個人的にはC.C.を演じたキース・ロビンソンに注目でした。とても良い役だったと思います。

さて、この映画、公式にダイアナ・ロスを描いているわけではないとしっかりと発言されているようですが、やはりどう見ても、ダイアナ・ロスとモータウンの歴史を描いているとしか思えないですよね。しかもこの映画、ビヨンセ演じるディーナの髪型七変化が完全にダイアナ・ロスだし・・・。実は高校時代、一番良く聞いていたのがダイアナ・ロスとシュープリームスのCDなので、もう色々なところがツボでした。そうそう、途中で出てくるジャクソン・ファイブもどきに大爆笑。

映画、前半は彼女達がトップスターに上りつめていくストーリーと合わせて、ノリがよく明るい歌と画面が続いて、あっという間の1時間。逆に、後半は、シリアスな展開が続くので、歌も画面もやや暗い感じ。とても対照的でそれぞれに見ごたえはあるんですが、ややバランスが悪かったかなぁと。でも、最後(ところどころ?)は感動してちょっと涙腺ウルウルでした。

音楽映画としてはこれでもかというくらいによくできていて、オープニング始まった瞬間にDVD購入はすぐに決まってしまったんですが、「最多ノミネートにも関わらず作品賞にノミネートされなかった史上初の作品」というレッテルを貼られてしまった理由も分かります。ストーリーにおいて、主役ではないエフィーが強すぎるんです。あと、毒ッ気があまりに少ない。キング牧師やデトロイトの暴動などの歴史も織り込むものの、サラっと背景に流す程度で終わってしまっていたし。この辺り、説明も少なかったので、その辺の歴史を知らない人が見たらなんのことやら全く分からない場面だったんだろうね。

というわけで、非常に面白いし、音楽も最高なのに、その良い部分が全て裏目に出ているかのようなバランスの悪さがあったのも事実だと思います。

逆に言えば、ジェニファ・ハドソンの熱演がそれほどの威力を持っているともいえるのですけどね。日本人ノミネートで話題になってる助演女優賞ですが、ここはやっぱり彼女にオスカーを与えたいところです。そんなわけで、最初から最後までジェニファ絶賛のレビューでした。

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