« 「ショートカット」柴崎友香 | トップページ | 映画「カサノバ」 »

2007年3月30日 (金)

映画「トゥモロー・ワールド」

Children of Men  2006年 英・米

ハリポタのアズカバンを監督したアルフォンソ・キュアロン監督の最新作。同じ監督の作品が見てみたい!と思わせたアズカバンの映像美&イギリス的空気の描き方、「雰囲気」の素晴らしさを期待して早速レンタル。

舞台は、何故かははっきりしないが、人類に子供が生まれなくなってしまった近未来の地球。2027年、もっとも若い人類として知られた18歳の少年が暴動にあって殺されてしまうところから物語は始まる。子供が生まれないために世界各地で情勢が不安となり、もはや世界で安全とされているのは、鎖国政策をとったイギリスのみ。そんなイギリスにも、不法移民が押し寄せ、厳戒態勢が続いていた。そんな中、主人公セオは、かつての恋人ジュリアンが活動する地下組織に声をかけられ、そこで、衝撃の事実を目の当たりにする。という物語。

上記の期待していた部分は全て大満足な上に、話題の長回しなどで、期待以上に見所が多い映画でした。一部ストーリーのしっくりこなさをのぞいては。

この映画、基本的に多くを語りません。人類に子供が生まれない原因も、地下組織のこともなんとなくそういうのがあるんだという程度にしか描かれず、あとはひたすら、主人公が事件に巻き込まれていく様子を追っているような感じ。この映画では、そういう背景的な部分よりももっと描きたかったものがあるんだというのは、これでもかというくらいに伝わってくるので、その点は良いのですが、肝心のストーリー的な部分で、なぜ隠さなきゃいけないのかとか、「敵」と「味方」がなんだか曖昧だったりとか言う点が個人的にはなんだか納得いかない感じ。

その一方で、やはりこの監督の「雰囲気」の演出は本当に素晴らしいものでした。この映画、SFっぽい内容ですが、まるでドキュメンタリーのような感じで撮影されていて、とても現実味あふれる映像なので、緊張感が本当に素晴らしいんです。終末感がよく出ています。さらに、話題の長回しシーンも、カメラの汚れもそのままにずっと主人公を追いかけていくその緊張感や迫力は本当にお見事。

この映画の良かった点は、こういう感じで、ひたすら、絶望的な様子や、緊張感溢れる様子を映していって、クライマックスにガーンと頭を打たれるかのような場面を持ってくるところ。そこに至るまでの持っていき方が本当に上手いので、このクライマックスが素晴らしく生きるし、不覚にも感動してしまったわけです。ラストの余韻も良かった。

近未来SF=CGを駆使した映像大作というイメージが強いけれど、そんな映画とは一線を画す作品だったと思います。

この監督、「アズカバン」も好きだったけれど、過去の作品を調べてみると、「リトルプリンス」も「大いなる遺産」も何年も前に見たのに、心の中に鮮明に残っている映像がある映画ばかりです。前から気になってたけど未見の「天国の口~」も見なきゃ!!!

|

« 「ショートカット」柴崎友香 | トップページ | 映画「カサノバ」 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

こちらにもお邪魔します。
キャストだけで観たいと思い、予告で「思ってたのと違うのか?」と迷い、
でもやっぱり観に行ったのですけど、最初の印象どおりの作品で、
確かに小さな不満はあるにせよ、全体としては思っていた以上に好きな作品でした。
長廻しの緊張感と迫力は凄かったですねぇ。
アカデミー賞の撮影賞、これが受賞だと思ってたんですけど…残念でした。

投稿: 悠雅 | 2007年4月 6日 (金) 22時30分

>悠雅さん

こちらにもTB&コメントどうもありがとうございます!!

この映画、
自分も予告の作り方があまり良くなかったような気がします。
自分も個人的にジュリアン・ムーアの出る作品は
好きなものが多いので(「フォーガットン」は別の意味で好きですが・・・)
この監督と彼女という組み合わせを信じて見てみて良かったです。

撮影賞、残念だなぁとも思いますが、
今年のアカデミー賞の中でも群を抜いて見たい!!と思っている
「パンズ・ラビリンス」が受賞しているので個人的には
そちらへの期待がますます高まる結果となりました。
秋の公開が待ち遠しい!!!

投稿: ANDRE | 2007年4月 7日 (土) 00時09分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 映画「トゥモロー・ワールド」:

» トゥモロー・ワールド [悠雅的生活]
子どもが生れない未来に希望の火を灯すのは・・・ [続きを読む]

受信: 2007年4月 6日 (金) 22時24分

« 「ショートカット」柴崎友香 | トップページ | 映画「カサノバ」 »