「バルザックと小さな中国のお針子」 ダイ・シージェ
「バルザックと小さな中国のお針子」 ダイ・シージェ ハヤカワ文庫epi
映画監督でもある著者自らが映画化したことでも話題となったフランス在住の中国人作家による作品。映画版の感想はコチラ。
舞台は文化革命の時代の中国。毛沢東は、都市に住むブルジョワの若者達を、田舎の農村に送り込んで、「再教育」をさせるという下放政策が執り行われ、主人公の僕とその友人、羅(ルオ)もまた、山奥の村に送り込まれる。文明社会から隔離された山村で過ごす2人はやがて、近くの村の仕立て屋の娘と出会う。そんな中、同じように下放されてきた、通称「メガネ」が、禁書とされいている西洋の小説を隠し持ってきていることが発覚し、2人はその物語に夢中になり、娘に語ってきかせるようになるが・・・。という物語。
基本のストーリーは映画と同じなんですが、後から原作者自らが、映画化していることもあって、映画版のほうが洗練されていたように思います。
この物語、映画でもこの原作でも、やはりラストがとても衝撃的で印象深いですね~。後日談が描かれるということもあって、個人的には、映画版の描き方の方が余韻が強いなぁと思いました。どちらにせよ、パンドラの箱というかなんというか、女性のほうが上手だったというか、なんともいえないラスト。いやはや名作やね。
小説で読んだ方が、主人公たちの気持ちの変化がダイレクトに描かれるので、より、感情移入して物語を読むことができますね。
下放政策という恐らくかなり辛い体験だと思われる環境下で、2人がのびのびと生活できたのは、やはり「仲間」がいたからですよね。この物語の主旨とは弱冠外れてしまうけれど、仲間は大切だよなぁなんて思ってしまいました。
自分の好きな本を自由に読めるし、モーツァルトも自由に演奏できる今の自分が恵まれているのだということを改めて感じさせてくれました。
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