映画「ローズ・イン・タイドランド」
Tideland 2005年 イギリス・カナダ
テリー・ギリアムは好きな監督で、宣伝の際に「不思議の国のアリス」が引き合いに出されていたので、これはもう見なくては!!と思っていた作品です。ギリアム好きと言いつつ、「ブラザーズ・グリム」は2度もレンタルしてきたのに、どちらも見る暇がなくて返してしまったため、そちらは未だ見ていないのですが・・・。
主人公は10歳の少女、ジェライザ=ローズ。チョコレートと靴をこよなく愛する母と、ロッカーの父という、ドラッグ漬けの両親のもとで、父のためにドラッグを準備し、母のマッサージをしたりと親孝行に暮らしていたが、ある日、母がトリップ中にショック死し、ローズは父と2人で、亡き祖母が住んでいた父の実家へと帰ることになった。そこは果てなく広がる乾いた黄色い草原の中に建つボロボロの一軒家。近くにあるものといえば、線路と大きな枯れ木と、風変わりな女性と知的障害を持つその弟が暮らす家があるだけ。しかし、この家にやってくるやいなや、ドラッグを摂取した父親がそのまま目覚めなくなってしまう。1人淋しいローズは、4体ソフビ人形の頭部だけを外して、それを自分の指にはめながら、想像の世界で遊び始めるのだが・・・。孤独な少女の悪夢のような現実と妄想の世界を描く作品。
ギリアムさん、ポピュラーな作品を制作する一方で、しっかりと本当に作りたいものも惜しみなく作ってるんですね。なんか、とにかく、わけの分からない作品。しかし、主人公の少女の恐ろしいほどの熱演で最後まで釘付けでした。
少女の妄想の世界を描くということで、もっと「乙女の祈り」(ケイト・ウィンスレット主演、ピーター・ジャクソン監督)みたいなのを想像していたんだけど、もっともっと過酷な現実が過酷過ぎてファンタジーになっちゃったような作品でした。だって、一番ブラックな場面は少女の妄想の世界じゃなくて、現実に彼女の前で起きるできごとなんだもん。あまりにグロいですよ・・・。
そんなわけで、ギリアムさんの悪夢的なブラックな世界観が炸裂していて、極めて敷居が高い映画なのは間違いなくて、自分も、好きかどうかと聞かれたら、正直、苦手なタイプの作品。決して難解ではないし、映像もきれいなんだけど、全編を包む悪意というか絶望というか、そういう暗い空気がやっぱり苦手です。
主人公のローズがあまりにも何事にも動じないというか、とにかく、自分の置かれている環境のことなどまるでお構いなしに、人形達との会話を楽しみ、怪しい隣人と遊び、ラストには恐ろしい事件まで起こしてしまうという内容で、映画の半分以上がこのローズの「1人遊び」の世界を描いているんですけど、もうね、とにかく熱演なんですよ。4体いる人形の声も全部1人で声色を替えて演じてるし。さらには、ラストのカットの彼女の顔!普通に怖いですから!彼女、このまんま、この手の映画には欠かせない女優になっていくんじゃないのかと思ってしまうくらいに、この映画でのこの少女の存在感は大きかったです。
子供の純粋な悪意というかなんというか、そういう危うい部分を上手く映像にした感じですね。ちなみに、僕も子供の頃、よく1人で色んな物語を作って遊んでましたよ~。そんなことをふと思い出す映画でした。自分のはもっと明るかったけど・・・。
この映画、僕が借りた某レンタルチェーンは「SF」の棚に置いていたんですが、それはちょっとどうなのかなぁと・・・。せめて「ファンタジー」でしょ。
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