映画「舞台よりすてきな生活」
How To Kill Your Neighbor's Dog 2000年 アメリカ・ドイツ |
劇場公開されてるときから見たいなぁと思ってた作品(毎回同じ前置きな気がしてきた)。シェイクスピア映画でおなじみのイギリスの巨匠ケネス・ブラナーが主演ということで、結構楽しみにしてました。
主人公はLAで活躍する英国人劇作家ピーター。怒れる若者として80年代に演劇界の寵児として名を馳せたピーターは大の子供嫌い。最近の悩みは子供を欲しがる妻と毎晩鳴き声がうるさい裏の家の犬のこと。ある日、隣に脚に障害を持つ少女エイミーが引っ越してくる。子供が欲しい妻は、エイミーの母が働きに出てる間の子守を買って出るのだが、自宅に子供がやってくるやピーターは離れの書斎に閉じこもる始末。そんな折、舞台用に書いている新作に登場する子供にリアリティがないと非難されたピーターはエイミーの言動を観察し始めるのだが・・・。という物語。
邦題を見ると、ハートウォームな物語かと思うんですが、原題「隣の犬を殺す方法」を見て分かるように、この映画、心温まるヒューマンドラマからは程遠い、ブラックジョークのきいた大人向けのコメディでした。とにかくケネス・ブラナーが偏屈オヤジを熱演。
この映画、基本的に、
・ピーターとエイミーの交流
・ピーターと妻の会話
・TVのトークショーに招かれるピーター
・夜、犬の声がうるさくて眠れず近所を散歩するピーター
→近所に現れた自分ドッペルゲンガーとの交流
・新作の舞台の練習風景
の大体5つくらいの場面が延々と繰り返されるだけの映画で、どこに行っても頑固で偏屈なピーターがブツブツとぼやきながら文句を言っているだけの映画です。しかし、その中で、確実にピーターの中に小さな変化が起こっているのがチラリと顔を見せるのが面白い。これが、あからさまにピーターが子供大好きで温和な人に変わっていっちゃったら、陳腐な映画になってしまうんだけど、この映画ではそんなに大胆に人が変わるわけではないのが良い。いつまで立ってもピーターは嫌なやつなんだけど、そのちょっとした変化が微笑ましかったです。
子供とおままごとをする場面があるんですが、そこのぎこちない感じとかつまらない大人の常識を持ったピーターとちょっと大人びた対応をしながら、しっかりとおままごとをするエイミーの関係が本当に微笑ましくて、とてもよい場面でした。
主人公の家に同居する軽い認知症の義母が、いつも主人公を誰だか認識できないんですけど、それが、80年代に怒れる若者として颯爽と活躍した主人公が中年になり、単なる頑固オヤジになってしまった悲哀がそこに上手く表現されてていいなぁと思いました。怒れる若者もいつまでも世の中の色々なことに怒り続けたら単なる偏屈オヤジといったところでしょうか。そんなところに、若い頃の自分の勢いを持ち続けるドッペルゲンガーと出会って会話を続けていく展開はとても面白かったんですけど、ドッペルゲンガーが上手く生かしきれてないような印象があったのも確かかなぁ。
他にも、脚に障害を持つエイミーとその母親のこと(この辺は劇中劇ともなる舞台の製作過程でも触れられてた)など割といろいろな要素がつめこまれていて、ちょっと詰め込みすぎ感も感じられる作品ではあったけれど、ピリリとスパイスの効いた大人のコメディとしてはなかなか良くできてるのではないかと思いました。
この映画、主人公の奥様が本当に素敵なキャラクターで、とても癒されました。こんなにできた大人って実在するのかいな・・・。と思ってしまうくらいに良いキャラです。
ワンちゃん、頑張ったね。動物愛護の時代だなぁと実感。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画「天使の分け前」(2013.06.13)
- 映画「屋根裏部屋のマリアたち」(2013.05.29)
- 映画「ハッシュパピー バスタブ島の少女」(2013.05.27)
- 映画「リンカーン弁護士」(2013.05.06)
- 映画「偽りなき者」(2013.05.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント