映画「アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵」
Mon petit doigt m'a dit... 2005年 フランス |
英国のミステリの女王アガサ・クリスティーの原作をフランスで映画化した作品。原作は、トミーとタペンスという夫婦が活躍する「おしどり探偵」シリーズの中の「親指のうずき」です。主なストーリーはかなり原作に忠実に展開しますが、フランスの作品なので、人名が全てフランス風に変更されていました。
舞台はフランスの田舎町。大きな屋敷で悠々自適な生活を送っている国防省勤務のベリゼールと好奇心旺盛なその妻プリュダンスは、ある日、ベルゼールの叔母を訪ねて、彼女の暮らす老人ホームへと向かう。そこでプリュダンスは、ホームに入居している不思議な老女ローズに「あれはあなたの子供だったの?」と不可解な質問をされる。
それから、数週間後、叔母が亡くなったとの知らせを受け、夫妻は再び老人ホームへ。叔母の遺品の整理をしているとき、プリュダンスは1枚の絵を発見する。森の中に佇む一軒の家を描いたその絵を見て、彼女は、その家をどこかで見たことがあるような気がして、叔母がどこでその絵を手に入れたのかを尋ねると、先日出会ったローズが叔母に贈ったものであることが発覚。しかし、そのローズは数日前に突如、老人ホームを去っていた。とりあえず、その絵を持ち帰ったプリュダンスは、不思議な老婦人ローズと絵に描かれた家のことがどうしても気になり、あきれる夫をよそに1人調査を始めるのだが・・・。という物語。
ミステリーなのですが、連続殺人を解決するとか、複数の容疑者から犯人を捜すとかいう類の作品ではなくて、1枚の絵と老婦人の失踪を調査して、やがて、とんでもない事実が発覚するという作品。中盤以降は、怪しげな村が舞台になって、ちょっと横溝チックな雰囲気も感じられる展開でしたが、全体にとても軽い作品なので、気軽に楽しめました。
クリスティの作品は高校くらいのときによく読んでいて、「おしどり」シリーズもいくつか読んでいました。で、その後、確認したところ、この作品の原作も本棚の奥にひっそりとあったので、読んだことあるっぽいのですが、何一つとして覚えていませんでした・・・。で、パラパラと本をめくってみたところ、この映画、細かい台詞を含めて、意外にもかなり原作に忠実な映画化であったことが発覚。
ただし、やはりフランス映画の雰囲気になっていて、ややシュールな笑いが散りばめられていたり、主人公達のブルジョワっぷりがやたらと目立ったりしていて、フランス版クリスティの世界を見事に確立していたように感じました。これは意外な収穫です。「おしどり探偵」自体がフランス映画との相性が良いのかもしれないですね。
しかしね、この映画、長編である原作の要素を、2時間にも満たない時間の中に全て詰め込むことができなかったようで(当たり前だけど)、ところどころ、ものすごい勢いで話が展開したり、飛んだりするので、映画を見ていて、最後のまとめに頭がついていけず、結局、何が何だかよく分からずじまいという印象もありました。そもそも、慣れないフランス式の人名が覚えにくくて・・・。
というわけで、ストーリーはイマイチ掴みづらい印象だったんですけど、美しいフランスの田園風景がとにかく堪能できるし、主人公達の優雅なブルジョワライフも見ていて羨ましくなるような田舎暮らしっぷりだし、全体にほんわかとした空気が流れていて、映画全体の印象はかなり良い作品でした。
あとは、中盤からは奥さまの好奇心旺盛っぷりにハラハラドキドキです。普通、そこに1人で行くか?と思うようなところにもどんどん入っていってしまうしね。「おしどり探偵シリーズ」の作品なのに、もはや「奥さまは名探偵」ですからね。
ちなみに、クリスティの作品の中では、僕は「パーカパイン」シリーズの短編が一番好きです。著しくマイナーですいません・・・。
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