「鼻・外套・査察官」 ゴーゴリ
相変わらず、目の離せないラインナップが続いている古典新訳文庫ですが、その中でもとりわけ注目度が高かった1冊をようやく読みました。
表題どおりロシアの文豪ゴーゴリの短編を2篇と戯曲を1篇収録。
「鼻」
ある日のこと、突如、鼻が街を歩き始める。自分の鼻がなくなったことに気づいた男は・・・。
「外套」
うだつの上がらない下級役人が外套のほころびをなおそうと仕立て屋を訪れると、しきりに新しい外套の購入を勧められて・・・。
「査察官」
舞台はとある田舎町。ぺテルブルグから役人が査察にやってくると聞いて、市長や判事、病院の院長など町のお偉いさんたちは大混乱。たまたま町にやってきた下級役人を勝手に査察官と勘違いしてしまった彼らは・・・。
この本、画期的なのは全編を落語調で翻訳したところ。江戸っ子言葉で読者に語りかけるようにして進む噺は本当に面白いんです!名訳だと思います。
実は収録されてる「鼻」と「外套」は以前にも読んだことがあるんですが、今回の「落語」によってとてもユーモアと人間の哀しさが感じられる物語になっていて、前に読んだときと大分印象が違いました。正直、とても面白かったです。こういう実験的な冒険をしている翻訳は時として大失敗になることもありますが、今回は大当たりだったのではないでしょうか。
そして「査察官」!従来「検察官」というのが定番になっていたタイトルですが、本来の意味に合わせて「査察官」と訳されています。この話はもともと好きだったんですけど、やっぱり面白い!文で読むだけでこんなに面白く笑わせてもらえる話なのだから、生の舞台はどれだけ面白いんだろ。なんて思ってしまいました。
暗くて思いというイメージの強いロシア文学ですが、今回も決して根っから明るいとはいえないまでも、重々しいイメージを払拭する1冊だったように思います。
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