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2007年6月

2007年6月30日 (土)

「Travels in the Scriptorium」 Paul Auster

Travels in the Scriptorium

Travels in the Scriptorium

Paul Auster

Holtzbrinck Publishers (paperback) 2007.5.

ポール・オースターの最新作のペーパーバック版が先日発売になったので早速読んでみました。オースターは邦訳ペースがゆっくりしているので、新作が待ちきれずに基本原書で読んでいます。

ちなみに、今年は、近年のオースター作品の中では抜群に面白かった「Book of illusion」の邦訳も予定されているようだし、「Book of ~」の中の作中映画が実際に映画化されるみたいだし、ますます活気付いてる印象ですね。

では物語のあらすじを。

主人公はある年老いた男。彼は記憶がなく、気づいたら小さな部屋の中にいて、そこには、彼の様子を毎秒撮影する監視カメラがセットしてあり、部屋には「壁」やら「机」やらそこら中にそのモノの名前が書かれたテープが貼られていた。やがて、とりあえず、「Mr.Blank」と名づけられた彼のもとに、医者やら彼の世話をするという女性やらが出たり入ったり。そして、その間にBlank氏は部屋の机の上に置かれていた紙に書かれた物語を読み始めるのだが・・・。という物語。最初から最後まで小さな1室でのみ展開するという不思議な作品です。

最後まで読んだ感想は、「オースター・ファンブック」。これに尽きます。これでもかといわんばかりに過去の作品を連想させる人やら物やらが次々に登場する話なんです。そうなると、過去の作品を知らない人は読んでも面白くないのではないかという気もするんですが、そこは流石のオースター。こんな物語なのに、悔しいくらいに面白い。

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「ほげらばり」 小林聡美

ほげらばり メキシコ旅行記

小林聡美

幻冬舎文庫 1997.4

※書籍画像がありませんでした・・・。

なにか旅行記を読んでみたいなぁと思っていたところ、書店で目にした1冊。女優の小林聡美さんがメキシコに旅行した際に書いたエッセイです。

93年の11月~12月の16日間の間に、メキシコの中を6ヶ所ほど巡った様子が書かれているんですが、各所で、様々なハプニングに遭遇したり、全般的に「食」の運があまりよくなかったりする様子をテンポの良い文体で面白おかしく記した1冊。

「面白おかしく」というのがこの本の良いところであり、また、良くないところでもあるように思いました。とにかく全編を通してかなり笑える記述が多くて、絶妙な言葉や比喩の使いまわしが非常に面白いんですけど、では旅行記としてはどうなのかという疑問が残る1冊でもありました。16日間の旅行の間の、面白ハプニング集みたいになってしまってて、実際にメキシコの旅の様子があまり伝わってこない印象なんですね。確かに面白いんだけど、メキシコの空気をそこまで感じることはあまりできないのがちょっと残念でした。

でも、小林さんのほかのエッセイも読んでみたいなと思わせる1冊だったのは確か。女優としても結構好きなんですけど、その独特の視点がいいなぁと思える1冊でした。

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2007年6月25日 (月)

映画「ドット・ジ・アイ」

ドット・ジ・アイ

dot the i

2003年

英・西

公開時に見たいなぁと思いチェックしていたものの、すっかり忘れていた作品です。ミステリアスなラブストーリーでした。

主人公はスペインからロンドンにやってきた女性カルメン(ナタリア・ヴェルベケ)。暗い過去を背負う彼女であったが、ある日、ロンドンで出会った富豪の恋人バーナビー(ジェームズ・ダーシー)から、プロポーズを受ける。ある夜、フレンチレストランで友人と食事をしていたカルメンは、結婚式の前に花嫁が花婿以外の男と独身最後のキスを交わすというフランスの慣習にならい、レストランの客の1人とキスをすることになるが、思いがけず濃厚で情熱的なキスを受けたカルメンは、走ってその場を去ってしまう。しかし、その翌日、キスを交わした男キット(ガエル・ガルシア・ベルナル)が彼女の職場を訪ねてきて・・・。結婚を目前にした主人公が、三角関係の罠にはまった末にむかえる衝撃の結末とは。

「dot the i」は、アルファベットの「i」という文字を完成させる最後の点(ドット)のこと。その点が打たれるまで「t」と「i」が区別できないように、この映画も、最後の最後まで、いつどこで、どのように物語が終わりを迎えるのかが全く予想できない波乱の展開となっています。

物語の3分の2くらいまで、どのような結末を迎えるのか、そもそも、単なる三角関係映画なのかどうかでさえはっきりしなくて、どうなるのかなぁと思って見ていたところ、後半は怒涛の急展開の嵐で、なかなか楽しめる作品でした。

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2007年6月21日 (木)

CD 「The Boy With No Name」 Travis

ザ・ボーイ・ウィズ・ノー・ネーム

The Boy With No Name

Travis

最近、CDレビューは2ヶ月に1回まとめて書いてましたが、やはりこの作品だけは個別にレビューを書かなくてはいけません。僕の一番好きなバンド、Travisの最新アルバム。

発売日には買っていたものの、やはり、よく聞きこんでから感想を書きたいと思ったので、ちょいと時間が経過してしまいました。50分くらいの長さで、ちょうど通学電車の片道分ほどの長さなので、電車に乗るときには行きも帰りもじっくりと味わってました♪ていうか、この1ヶ月半くらい、毎日聞いてるけど、全く飽きません(=かなりの傑作)。

このアルバム、とにかくどの曲もついつい口ずさみたくなるんですよね。バンドではなく楽曲が残れば良いという言葉を語った彼らならではだと思います。そして、口ずさみたくなるようなポップさがあるのに、流行を追った音楽ではないというのも良い。きっとこのアルバム、10年後に聴いても、今と同じように「良い曲だなぁ~」と思って一緒に口ずさめると思いますよ。99年に発売の2ndアルバムが実際にそうだし。

あと、アルバムの帯のジャンルが書かれているとこに、普通なら「ロック」とか表記されてるんだけど、このアルバム、「英国音楽」って書いてあるんですよ!!こっそりと憎い演出してくれますねぇ。

というわけで、今回、かなり良い内容だと思いますよ!!傑作の2ndと並ぶくらいに良い。以下、1曲ずつコメントを。お気に入りは、3、4、11、15曲目かな。

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2007年6月20日 (水)

映画「時をかける少女」

時をかける少女 通常版

時をかける少女

2006年

日本

非常に良い評判を耳にするアニメ映画。原作はいわずと知れた筒井康隆の小説です。もっともっとみんなが見てもおかしくないと思うくらいに、素晴らしい作品でしたよ。

主人公の真琴は高校生の少女で同級生の少年、千昭と功介と3人でいつもつるんで遊んでいた。ある日のこと、真琴はなんだかついていないことばかり。抜き打ちテストがあったり、調理実習で大失敗したり、理科実験室で転んでしまったり。そして挙句の果てに、踏み切りにて電車と衝突事故に・・・。ところが、その瞬間、彼女は不思議な体験をする。事故が起こる数分前にタイムスリップしてしまったのだ。それを機に、時間を遡る能力を手に入れた真琴は、やりたい放題、自由に時間を遡りまくる。そんな折、いつまでも変わらないと思っていた千昭や功介との関係にも変化が訪れて・・・。淡く眩しい高校生たちの夏を見事なまでに切り取った傑作青春映画。

アニメ映画とあなどるなかれ、青春映画としては稀にみる傑作です。そして、実は原作「時をかける少女」の映画化ではなく、原作の世界の20年後が舞台となった続編的位置づけ。角川作品であることを考えると、大林監督の原田版トキカケの20年後という設定の割と正統な続編といったところでしょうか。どの辺が続編ってのは見れば分かります。原作からのサービスカットもありますし。

この映画、とにかく、爽やかな青春ものなんですが、恐らく、高校生が見るよりも、大人が見たほうが、「時をかける」という題材や、一瞬の高校2年生の夏という舞台がたまらない感動といとおしさをもたらしてくれること間違いなしだと思います。

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2007年6月18日 (月)

映画「記憶の棘」

記憶の棘 オリジナル・バージョン

birth

2004年

アメリカ

公開時から気になっていたものの、もしかしたらトンデモ映画かもしれないという不安もあり、見ようかどうか迷っていた作品ですが思い切って見てみました。

主人公アン(ニコール・キッドマン)は10年前に夫ショーンを心臓発作で亡くした未亡人。夫の死の悲しみからようやく立ち直った彼女は恋人ジョゼフの長年にわたるプロポーズを受け入れる決心をする。ところがそんなある日、アンのもとに1人の少年が現れ、「僕はショーン、君の夫だ」と告げる。2人の思い出を語る少年の姿に、次第に少年が夫の生まれ変わりなのではと思い、彼にひかれていくアン。果たして、少年は亡き夫の生まれ変わりなのか、それとも・・・。という物語。

ストーリー的な部分はネタバレなしで感想を書くのが非常に困難な作品なんですが、心配していたようなトンデモ映画というわけでもなくて、全体的に暗い雰囲気の作品ではあるものの、そこそこに面白い作品でした。

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映画「プラダを着た悪魔」

プラダを着た悪魔 (特別編)

the devil wears Prada

2006年

アメリカ

昨年の話題作。映画館で見たかったんですけど、タイミングを逃してしまい、今回ようやく見ることができました。話題作にはがっかりすることも多いんですけど、これはなかなか楽しめる1本です!

主人公のアンドレア(アン・ハサウェイ)は大学を卒業し、ジャーナリストを目指しNYで就職活動中。とにかく出版関係の仕事をしたかった彼女は、ファッション誌「RUNAWAY」の編集長のアシスタントの募集に応募し採用される。ところが、編集長のミランダ(メリル・ストリープ)はファッション業界の重鎮で社内の皆が恐れる鬼編集長。かくしてアンドレアは翌日からミランダから命令される大量の仕事に追われることに。最初はチャラチャラしたファッション業界を甘く見ていた硬派なアンドレアだったが、業界の厳しさを目の当たりにし、ミランダの要求に応えるべく、必死で働くのだが・・・。という物語。

最初は冴えない娘だった主人公が、ファッション業界でもまれるうちに、どんどんオシャレな女性に変貌をとげていくんですが、だからと言って彼女が本当に輝く美しい女性になっているとは限らない。キャリアを追う中でプレイベートが犠牲になり、いつしか、自分自身を見失いかけるという映画では何回も語られてきたテーマではあるものの、非常にうまくまとまっていて、とても面白い作品でした。

ちなみに個人的には変身前のアンドレアのほうが好きです。

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2007年6月10日 (日)

映画「奇人たちの晩餐会」

奇人たちの晩餐会

le diner de cons

1998年

フランス

先日から続いてるカトリーヌ・フロ出演作品を観よう!シリーズです。今回は主演じゃありませんが・・・。今までも存在は知ってたんですが、なんとなく、敬遠していた作品。しかし、観てみたら、思ってたのと内容が違った上に、この上なく面白い作品でした!

主人公のピエール(ティエリー・レルミット)は出版社の社長。彼の楽しみは毎週水曜に行われる晩餐会。そこでは毎回、参加者がそれぞれ、「これぞ!」と思ったバカな人物を1人招いて、そのバカッぷりを皆で観察し、影で批評しあっていた。そんなある日、ピエールは史上最強のバカ男ピニョン(ジャック・ヴィルレ)を発見する。しかし、その日の晩餐会を楽しみにしていたピエールだったが、不慮の事故でぎっくり腰になってしまい動けなくなってしまい、さらに妻は下らない晩餐会に興じる夫に愛想を尽かし出て行ってしまう始末。そんな窮地に陥るピエールのもとを、晩餐会に行くためにピニョンが訪れる。果てさて、2人はどんな夜を過ごすことになるのか・・・。という物語。

タイトルの感じだと、晩餐会にたくさんの変態がやってきて、みんなでバカ騒ぎする映画か、悪趣味な人々がブラックでシュールな笑いを楽しむホラーテイストの映画みたいな雰囲気ですが、全然違いましたねー。もともとが舞台作品だったっぽくて、全編を通してほぼアパートの1室のみで展開して、テンポの良い会話で笑わせてくれる作品です。

正直冒頭10分くらいはつまらないなぁと思ってたんだけど、電話のくだりで完全にノックアウト。あとは気づけばあっという間の80分でした。

驚くべきは、欧米の映画なのに、「ボケ」と「ツッコミ」の笑いだってこと!

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2007年6月 9日 (土)

「逃げてゆく愛」 ベルハルト・シュリンク

逃げてゆく愛

逃げてゆく愛
(Liebesfluchten)

ベルハルト・シュリンク Bernhard Schlink
松永美穂 訳

新潮文庫 2007.2.

傑作「朗読者」のベルハルト・シュリンクの第2作目です。今回は短編集ということで、表題作があるわけではなくて、全てが、「逃げてゆく愛」をテーマにした7作品を収録。

いつもはここで、ストーリー紹介するところだけど、短編集なので、内容紹介や詳しい感想は後回し。

「朗読者」と同様に、ドイツの「戦後」を描く作品が多くて、戦時中にあれだけのインパクトを全世界に与えた代償が未だドイツ社会に深く存在しているんだなぁというのを実感させられる作品集でした。まさにドイツだから生まれた作品だと思います。まぁ、そんなのとは関係ない、ライトなドロドロ恋愛の短編も含まれているので、全体に色々なタイプの作品が味わえてなかなか面白い1冊です。

あと、全体的に淡々としているというか、劇的な展開があるわけでもなくて、主人公の内面との対話、葛藤なんかが丁寧に描かれていて、静かながらも、力強い作品集だという印象です。

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2007年6月 5日 (火)

映画「女はみんな生きている」

女はみんな生きている

Chaos

2002年

フランス

先日見た「奥さまは名探偵」で、主演をしていたカトリーヌ・フロがとてもよかったので、過去の出演作を見てみようと思って借りてきました。

主人公エレーヌ(カトリーヌ・フロ)はある日、夫ポール(ヴァンサン・ランドン)と夜間のドライブ中に1人の娼婦ノエミ(ラシダ・ブラクニ)が暴行を受けている場面に遭遇する。彼女は2人が乗った車に助けを求めたが、ポールは係わり合いになりたくないからと車のドアをロックし、その場をやりすごしてしまう。翌日、ノエミのことが気になったエレーヌは彼女が運ばれたという病院を訪ね、彼女の世話を始めるのだが・・・。という物語。

夫ポールは母親が訪ねてやってきたら居留守をするし、エレーヌのことを家政婦扱い。大学生の息子は家を出て同棲中だが、夫と同様に訪ねていったエレーヌに居留守を使い、どうやら浮気問題が浮上中の様子。そんな中、エレーヌはノエミの身の上話を聞き、2人は男たちに反旗を翻すために立ち上がる。

監督・脚本は「赤ちゃんに乾杯」などの名作で知られるコリーヌ・セロー。ちょっと前まで公開されてて、見たいなぁと思っていた「サン・ジャックへの道」も同じ監督さんですね。

テンポの良いストーリーで、ユーモアもたっぷりつまった中に、男性はちょいと肩身が狭くなってしまうようなストーリーがサスペンス調にハラハラドキドキしながら展開して、非常に面白い作品でした。

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2007年6月 2日 (土)

「村田エフェンディ滞土録」 梨木香歩

村田エフェンディ滞土録

村田エフェンディ滞土録

梨木香歩

角川文庫 2007.5.

単行本が出たときから読んでみたいなぁと思っていた作品です。以前は梨木作品はどちらかというと苦手だったんですが、「家守綺譚」が面白かったので、最近は気になる作家の1人です。

舞台は1899年のトルコ、スタンブール。主人公の村田はトルコ政府からの招聘でトルコの文化を学ぶために留学してきた青年。下宿先のイギリス人ディクソン夫人の家には下宿仲間のドイツ人やギリシア人の青年たち、トルコ人の使用人、そして、いつも絶妙なタイミングで言葉を発する鸚鵡といった愉快な仲間たちが一緒に暮らしている。主人公村田の異文化交流と、トルコでの少し不思議な体験の日々をつづる物語。ちなみに、エフェンディはトルコ語で学問を修める人のことを指す言葉とのこと。

これまた非常に面白い1冊でした。

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